米ドル/円は強気トレンドが続き、高値を押し上げていることから、多くの為替トレーダーの注目の的となっている。最終的に150円水準にまで至った去年からの大規模な強気トレンドを思い起こさせる展開だ。
しかし前回とは異なり、為替介入によってトレンドが反転してしまった前例から、昨年すべての火付け役となった150レベルに近づきつつも、強気筋はいまだに躊躇している。そして先週末の時点で、日本の政策決定者が反応する兆し見えも始めている。まず先週はオブラートに包んだで介入の警告があり、今週初めには利上げの可能性も予告された。
全体としては強気筋の動きにそれほどブレーキがかかっているわけではない。先週為替介入が示唆さ
れた際にはプルバックが見られたものの、146.65円のフィボナッチレベルでサポートが形成された。その後強気筋は先週の取引終了前に147.69のレジスタンスまで簡単に価格を押し戻した。
今週の取引開始前後にも再度プルバックが生じたが、これは日銀の植田和男総裁が利上げの可能性に言及したことがきっかけだった。ここからさらにプルバックが起こり、この時は弱気筋が146ドルを割り込むことに成功したものの、勢いを維持することはできず、強気筋が買いを入れたために147.69まで値が戻った。
今朝この価格で最新のレジスタンスラインが形成されたものの、強気筋は再び様子見に入っている
米ドル/円日足チャート
チャート作成: James Stanley、 Tradingviewの米ドル/円
昨年、日銀が最終的に為替介入を実施した時は、米ドル/円の強気トレンドは21カ月も続いていた。DXYが30年ぶりの高値をつけてプルバックを始めた直後であったため、これは実のところ最良のタイミングとなった。
介入発表は当初、米ドル/円ペアの単なるプルバックを引き起こすにとどまった。しかし安値がじりじりと下がったことで、サポートラインでの強気筋のフォロースルーの反応が高値の下落につながり、次に価格が押し戻されてサポートを試したたときに底が抜け、このペアは年末まで下降トレンドを続けた。21か月分の上昇をわずか3か月で帳消しにし、今年1月、この大きな動きの50%リトレースメントでようやくサポートが現れた。
それ以降はどうだろう?買い手が再度200ピップスの上昇を実現したことで全体としては強気相場の構図が続いている。しかし、昨年日銀の介入があった価格の近辺に戻ってきたところで、当然ながら再度介入があるかどうかが
先週、神田眞人財務官から、日本の政策当局が外為市場の動きを注視しているという投機筋への警告があったことで、介入が少し現実味を帯びてきた。これをきっかけにして147.69円のレジスタンスから最初のプルバックが起きたものの、その後ほどなくしてサポートが見つかり、すぐにレジスタンスまで押し戻された。
今週の初めには植田和男氏日銀総裁が利上げの可能性について語ったが、日銀の政策転換は米ドル/円のテーマでは状況を大きく変える要因になりうる。特に黒田東彦総裁が最後の数ヶ月を迎えようとしていたこともあり、日本の金融政策が変わる見込みが低かった去年と比べ、この点が異なる可能性はある。利上げの公算が高まれば、非常に重要な転換点になるかもしれない。昨年の介入は、本質的には日銀が自らの金融政策に反する取引を支援するために限りある資本準備を燃やすという状況だった。しかしその動きは必ずしも結果を伴わないわけではない。日銀はいわゆる「アベノミクス」導入後10年近く景気刺激策を続けてきたため、山のような日本国債に頼っており、利上げのサイクルが始まればこの先かなりの波乱を引き起こす可能性がある。
現時点では、日銀の低金利政策が円安を促し続けており、米ドル/円を含む多くの円建てペアでキャリートレードが依然として活発に行われている。これで米ドル/円のロングサイドと強気筋のモチベーションに説明がつく。しかし為替介入の発表であれ、金利上昇の可能性であれ、元本割れの見込みが出るようであれば、米ドル/円が反転を始めた昨年10月~11月とほぼまったく同様に、トレーダーがキャリートレードから離脱する可能性がある。
そして短期買いに細かい上下を続けている今の取引が巻き戻ることがあれば、昨年第4四半期の米ドル/円ペアで見られた状況と同様、その速度はかなりのものになると思われる。問題は日銀がトレンドの上昇をいつまで許容するかで、見ての通りその節目のひとつが147.69円となっている。
米ドル/円週足チャート
チャート作成:James Stanley、Tradingviewの米ドル/円
— 文責:シニアストラテジスト、James Stanley
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