今週後半から始まる大きなマクロイベントを前にして、米ドル/円はやや下降トレンドに入っており、週足ではマイナスに転じている。まず今日は米国のGDPデータが発表され、金曜には新総裁のリーダーシップの下で日銀の最初の政策決定会合が行われる。今週後半から来週にかけて米国では他にも多くの重要な経済データの発表があり、水曜日にはFOMCも予定されている。このため米ドル/円の見通しは、今後数日間で劇的に、おそらくは複数回変化する可能性がある。
今週と来週の米ドル/円の見通しに影響を与える可能性のあるイベントのトップ5は次のとおり。
4月27日(木曜日)
13:30 (英国夏時間)
非農業部門雇用者数はまだ予想外の高水準だったものの、ここ最近の経済指標はある程度の弱さを見せている。しかしGDPはどうだろうか。もし経済に弱さが見られれば、投資家はFRBが5月以降に利上げを中止するだけでなく、ほどなく金融緩和を再開する可能性に賭け始めるかもしれない。アナリストは、米国の昨年第4四半期のGDPが年率+2.6%だったのに対して、第1四半期のGDPは年率+2.0%になると見込んでいる。
GDPの他にも、今週から来週にかけて、米国では多くの重要なデータが発表される予定だ。
米国の経済活動が予想以上に急激に落ち込む可能性があるということは、つまりFRBがインフレの急速な進行に対して政策を引き締めたときのように、(非常に遅いタイミングで)今年の後半にはより積極的な利上げで対応するかもしれないということだ。もし、今週のマクロイベントに対してこの見通しを市場が織り込み始めたなら、ドルインデックスは年初来の安値を更新し、100ドルを目指し始める可能性がある。
4月28日(金曜日)
04:00 (英国夏時間)
今回は日銀の植田和男新総裁のもとでの最初の政策決定会合となる。植田総裁はすでに日銀の現在の政策スタンスを継続すると述べていることから、最近は円は全面的に弱くなっていたが、その後今週に入ってから特に基軸通貨(豪ドル、ニュージーランドドル、カナダドル)に対して新たに強さを見せ始めている。日銀のイールドカーブコントロール(YCC)設定に関するサプライズの可能性には注意が必要だ。政策に変更があれば、円の急騰と米ドル/円や豪ドル/円など円クロスの売りを引き起こす可能性が高い。
日銀が政策の変更を避ける理由の一つは、日本がデフレに戻ることに対する懸念である。つまり日銀はYCC政策を変更する計画を来年まで延期する可能性があるということだ。
4月28日(金)
13:30 BST
先週明らかになった通り、米国のCPIは前年比5%までクールダウンし、予想以上の結果となった。インフレが下降に向かう兆候はさらに増えている。しかしFOMC陣営のタカ派は、利上げの一旦停止にはさらに証拠が必要だと考えている。コアPCE価格指数はFRBが最も重視するインフレ指標で、来週のFRB会合前に発表される最後のインフレ指標でもある。そのため予想と大きく乖離した場合には政策決定に影響を及ぼす可能性がある。弱い数字が出た場合にはドルが急落するかもしれない。
5月3日(木曜日)
19:00 (英国夏時間)
筆者の同僚であるMatt Simpsonは次のように述べている。「米国の経済データの低下や中堅銀行からの預金流出が懸念される中で、水曜日にもFRBが25bpの利上を実施する公算が高くなっている。利上げされれば金利は5.25%まで上昇するが、これはフェデラル・ファンド金利先物がターミナル・レートとして見込んでいる数値だ。しかし、FRBメンバーのコメントは主にタカ派的なままでブラックアウト期間に入っており、トレーダーはタカ派的な利上げ(+25bpでさらに続く)か、ハト派的な利上げ(+25bpで一時停止の可能性)かを判断する手がかりを探すことになるだろう。失業率が急上昇し、雇用が伸び悩むのを見るまで、または実際に金融のメルトダウンが起こるまでは、方向転換は一切起きないかもしれない。」
5月5日(金曜日)
13:30 (英国夏時間)
筆者の同僚であるMatt Simpsonは次のように述べている。「JOTS求人件数、ADP雇用者数、失業保険初回申請件数、ISM製造業およびサービス業PMIの雇用指数が、すべて金曜日の非農業部門雇用者数報告(NFP)よりも先に発表される。このためNFP発表前にトレーダーがマジックナンバーを推測するために動くチャンスはふんだんにある。市場は弱い米国経済データに敏感に反応するので、雇用統計低下の兆候があれば(特にそれがトレンドであるとみられる場合には)、米ドルの弱気筋がそこに飛びつくかもしれない。本稿執筆時点で、NFPはパンデミック後の最低値である18万1000人まで減少する一方、失業率は3.6%に上昇すると予想されている。これは雇用情勢のわずかな悪化を反映しているが、水曜日にFRBが25bpの利上げを行うと予想される状況で、ハト派的な基調に確実につながるというほどではないかもしれない。」
ここでは、今週の米ドル/円に影響を与える可能性のあるすべての重要なデータリリースを示す経済カレンダーを紹介する。
日付 |
時間(BST) |
通貨 |
データ |
予想 |
前回 |
|
|
|
|
|
|
4月27日(木 |
午後1時30分 |
米ドル |
GDP前四半期比 |
2.0% |
2.6% |
|
|
米ドル |
失業保険申請件数 |
249K |
245K |
|
|
米ドル |
GDP物価指数速報値s 前四半期比 |
3.7% |
3.9% |
|
午後3時00分 |
米ドル |
住宅販売保留件数 前月比 |
1.0% |
0.8% |
|
|
|
|
|
|
4月28日(金 |
午前12時30分 |
円 |
東京コアCPI前年比 |
3.2% |
3.2% |
|
|
円 |
失業率 |
2.5% |
2.6% |
|
午前12時50分 |
円 |
速報値鉱工業生産前月比 |
0.4% |
4.6% |
|
|
円 |
小売売上高前年同月比 |
6.5% |
7.3% |
|
午前4時00分 |
円 |
金融政策宣言 |
|
|
|
未定 |
円 |
日銀政策金利 |
-0.10% |
-0.10% |
|
13時30分 |
米ドル |
コアPCE価格指数 m/m |
0.3% |
0.3% |
|
|
米ドル |
雇用コスト指数 q/q |
1.1% |
1.0% |
|
|
米ドル |
個人所得 m/m |
0.2% |
0.3% |
|
|
米ドル |
個人消費支出 m/m |
-0.1% |
0.2% |
先述のマクロイベントを前に、米ドル/円価格は直近のレンジの真ん中あたりでこう着している。これは驚くにはあたらない。今後1~2週間に控えている大きなリスクイベント(詳細は上記を参照)を踏まえれば、多くのトレーダーはどちらの方向へのコミットも控えるだろう。
1月の底値から安値が上昇しているのは、たしかに弱気相場を示す動きではない。しかし米ドル/円が200日間移動平均を試すことができずにいるということは、長期的な見通しは弱気相場のままであることを意味している。実際に日足チャートでは現在下降フラッグパターンが形成され始めている。
出典: TradingView.com
現在、日足終値ベースで133.40円付近のサポートが破られれば、この通貨ペアはさらに弱気相場に向かい始めると考えられる。132.00円を下回れば中期的により安値圏での安値が現れ、これは弱気シグナルになる。
しかし、日足終値ベースで133.40円のサポートレベルを上回っている間は、強気筋は回復への希望を持ち続けるだろう。
米ドル/円がサポートラインを見つけ出し、135.00円のレジスタンスラインを上抜けした場合には、フォローアップで136.00円に向けたテクニカルな買い展開につながる可能性がある。この場合には137.00円付近にあたる200日間移動平均を再び試す可能性も否定できない。
以上を踏まえたうえで、現状の米ドル/円はそれほど強気な流れとは思えない。
本レポートに記載されている情報や見解は、一般的な情報としての使用のみを目的としたものであり、FX、CFD、その他あらゆる金融商品の購入や売却に関する勧誘や依頼の意図は全くありません。本文書に記載されている見解や情報は、予告や通知なく変更されることがあります。本文書は、特定の投資目的や背景、特定の受領者の意思などに沿って書かれ配布されたものではありません。本文書内で引用・言及されている過去の価格データは、当社独自の調査や分析に基づいており、当社はそのデータの提供元やそのデータそのものの信頼性につき、いかなる保証もせず、また筆者や訳者、各国の支社・ 支店も、本文書の内容の正確性や完全性についても一切保証しません。本文書については英語版を原本とし、翻訳版と原本に相違がある場合には、原本の内容が優先するものとします。本文書の内容に基づく直接または間接の損失、そして本文書を信頼したことにより生じた損失についても、当社は一切その責を負いません。
本レポートに記載されている情報や見解は、一般的な情報としての使用のみを目的としたものであり、FX、CFD、その他あらゆる金融商品の購入や売却に関する勧誘や依頼の意図は全くありません。本文書に記載されている見解や情報は、予告や通知なく変更されることがあります。本文書は、特定の投資目的や背景、特定の受領者の意思などに沿って書かれ配布されたものではありません。本文書内で引用・言及されている過去の価格データは、当社独自の調査や分析に基づいており、当社はそのデータの提供元やそのデータそのものの信頼性につき、いかなる保証もせず、また筆者や訳者、各国の支社・ 支店も、本文書の内容の正確性や完全性についても一切保証しません。本文書の内容に基づく直接または間接の損失、そして本文書を信頼したことにより生じた損失についても、当社は一切その責を負いません。