先週のWebセミナーでは、筆者はジョン・テンプルトンの言葉をテーマとして使った: 「悲観論が最高潮の時は最高の買い時であり、楽観論が最高潮の時は最高の売り時である」。当時も断りを入れたとおり、これは別に何らの推奨事項というわけでもない。ただし、特にトレンドを見極めようとする場合には、時には逆張りも有効になりうるという可能性を強調する発言だ。
強気トレンドが後退するとき、特にそのトレンドがしばらく続いていた場合には、悲観論が忍び寄ることがある。これは先週火曜日に米ドル相場に見られた状況とよく似ており、当時は104.31のレジスタンスを維持した後でプルバックが起きた。このプルバックはその後も続いたが、先週も述べた通り、強気筋が価格のサポートのためにどこで参入してくるかが大きな試金石となった。
その答えは24時間も経たないうちに明らかになった。先週水曜の朝には米ドル指数の102.85~103.00ゾーンがサポートとなり、そこから木曜日のPCEデータ発表までは強気な動きが続いた。ただし現在の動きに関係しているのは金曜の出来事だ。
米東部時間で午前8時30分に発表された非農業部門雇用者数は速報値をわずかに上回ったが、同時に失業者数も予想を上回った。これは全体としてはネガティブに捉えられるもので、失業率の予想に反する上昇は景気低迷を示すことから、多くの場合、FRBによる追加利上げの可能性を下げる要因になる。
当初はドル安の反応が見られたが、8月の消費者物価指数(CPI)発表後の状況に近く、この反応は単に相場をサポートラインまで押し下げただけで、その後は強気筋が参入してきた。
米ドル – 米ドル指数(DXY)4時間足チャート(参照用、FOREX.comプラットフォームではご利用いただけません)
チャート作成:James Stanley、Tradingviewのデータによる
市場が悪いニュースを受け流し、良いニュースに飛びつくということは、買い手がネガティブなニュースに動じることなく、代わりに安値の上昇を狙う機会として利用するという強気相場の心理を明確に示すものだ。これは8月に発表された消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったにもかかわらず、ドル相場が強気な反応を示した時に近い。
そしてこの時点では、先週金曜の朝にサポートされた反動から、強気筋が守るべきサポート構造がかなりある。5ヵ月前の高値は104.70で、日中にもこの水準が試されている。その少し下には、先週私がレジスタンスとして見ていた104.31水準がある。その下には103.98、そして103.72がある。その下には103.98があり、さらに103.72が続く。しかし、強気筋が守るべき大きなエリアは、水曜日に登場した102.85-103.00ゾーンのようだ。
レジスタンスとしては、頭上に控えている105.00の水準が節目になりうる。ここは2021~2022年の大きな動きの38.2%のフィボナッチリトレースメントであり、5月の高値を捉えたエリアでもある。その後には、現在のところ2023年の高値となっている105.88がある。
もっと大きな視点では、先週取り上げたテーマにもつながるが、米ドルは週足チャートで7週連続の上昇をつけている。これはめったにないことで、過去10年間で週足が6週連続で上昇したのは(直近の例を含めても)わずか6回しかない。そして先週見られた米ドルのサポートへのゆっくりとした反応から、週足は2014年以来初めて7週連続で上昇をつけた。この時米ドルの強気トレンドは初期段階にあった。当時の原動力は?欧州の弱さである。そして現在の原動力は?依然として欧州の弱さのようだ。
米ドル – 米ドル指数(DXY)週足チャート(参照用、FOREX.comプラットフォームではご利用いただけません)
チャート作成:James Stanley、Tradingviewのデータによる
ここ最近述べてきたように、米ドルの強気な動きの大部分は、ユーロと欧州経済の弱さによってもたらされていると筆者は考えている。株も金も(今日まで)よく持ちこたえていることが、その事実を物語っている。そして、米ドルは基軸通貨の一要素に過ぎないことを考えると、金と米ドルの両方が同時に上昇しない理由はない。特に(米ドル指数の57.6%を占める)ユーロの弱さが織り込まれている場合はなおさらだ。
今朝の経済カレンダーから、イタリア、スペイン、ドイツのPMIとユーロ圏のPMIの数字が発表され、これは欧州からのさらにネガティブなデータとなった。また生産者物価指数(PPI)の発表もあった。PPIは消費者インフレの前兆を示すものと考えられているが、年率換算で7.6%の縮小を示し、これがユーロのさらなる値下がりにつながった。ユーロは現在では2カ月ぶりの低水準にとどまっており、米ドル指数のさらなる上昇に一役買っている。
ユーロ/米ドルでの大きな問題は、昨年のような弱気トレンドが引き継がれるかどうかだ。1.0611ドル~1.0638ドルに大きなサポートゾーンが控えているが、1.0611ドルの水準が特に興味深い。ここは61.8%のマーカーが7月の高値をほぼ完璧に捉えたのと同じ大きな動きからの、38.2%のフィボナッチリトレースメントにあたる。
同じ動きの50%のマーカーが過去数週間にわたって機能しており、これは米ドルのサポートラインでの反応が起きる直前、先週の高値をマークするのに役立った。この動きの38.2%が試されたのは3月以来だが、当時は米国の銀行危機が発生し、株高と金高とともに米ドル安を促進した時期だった。
売り手がここを押し切ることができれば、次の主なハードルは、今年に入ったときに機能していた1.0500ドルの心理的レベルとなる。
ユーロ/米ドル週足チャート
チャート作成:James Stanley、Tradingviewのユーロ/米ドル
私は、ドル円はネコとネズミが遊んでいるのようだ、とオンラインセミナーで述べたが、トレーダーである私から見て、動きの分析はネズミだろう。そして日銀がネコである。
このペアのキャリーはまだ上昇バイアスがあり、強気を維持したい思いが残っている。また日銀が変更を行うことはないという考えがあれば、そのロールオーバーも魅力的だ。しかし、元の価格を割れば、ロールオーバーはそれほど魅力的ではなくなるだろう。そうした理由から、過去数年間にわたってドル円の弱気の動きが驚くほど激しかったことが説明できる。ドル円が反転すれば、キャリーの魅力は失せ、サポートを抜ければ、砂漠のフェスティバルから逃げ出す群衆のように、すぐにロングを手放さなざるを得なくなるからだ。
これが意味するところは、このような性質のトレンドを追うことは特に問題となるということだ。むしろ、強気トレンドを調べる魅力的なタイミングは、悲観的な見方が最大となるポイントに近づいた時ではないだろうか?私は145レベルがサポートになると話したが、金曜日(9/1)に安値付近で下げ止まり、そこから10か月ぶりの高値を付けると共に、強気の動きがさらに拡大するつながりとなった。
現時点で、147.69のレジスタンスを維持しているが、これは昨年からのもので、サポートは前回レジスタンであった146.64付近だ。ここを維持できないと、145が次のサポートとなる。その次は143.89、さらにその次が142.50だ。
少し高い場所にあるチャートの「チーズ」を食べる傍ら、恐ろしいのは、ネコが出てきて、チーズを追いかけているネズミを追いかけることだ。ドル円が高値を更新し、昨年に介入があった150レベルに近づくにつれ、日銀が反応するかもしれないのだ。
米ドル/円日足
Chart prepared by James Stanley, USD/JPY on Tradingview
先週は、週の後半に米ドルの強さが回復してきたが、金はよく持ちこたえた。金相場は、8月前半の取引で、下落ウェッジのタイトなチャネルを形成していた。チャート下のオレンジ色の線がそれだ。私は数週間前のオンラインセミナーでこの動きを追ったが、その際、価格はチャネルから大胆に抜け始めていた。
その結果、強気が継続することになり、これが先週前半まで維持され、チャートでは、最終的に1947レベル付近の集合スポットにレジスタンスが見つかった。このレジスタンスで8月終盤に高値が保たれたが、これは、その時の米ドルの動きを考えると非常に印象深い。
しかし、今朝、金(ゴールド)は引き戻された、強気はついにそのリングにタオルを投入し始めた。価格は現在、私が先週論じた旧レジスタンスである1925~1932ゾーンのサポートを試している。
強気にドアは開かれたままだが、長期下落ウェッジがこの辺りで戯れているようだ。強気が上昇を保ってここを解決できれば、その後もかなりの可能性はあるが、それを実現するには、利回りを下げるか、それに似た何かが必要だろう。今のとことは、サポートが試されており、さらに進むと、1910付近に別のサポートがある。
ゴールド (XAU/USD) 日足
Chart prepared by James Stanley, Gold on Tradingview
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