市場は日銀の金融引き締めを2024年まで待つ必要はないかもしれない。週末、植田和生日銀総裁は年末までに利上げの可否を決定する上で十分なデータを得られるかもしれないと発言し、月曜早朝の取引では米ドル/円が急落している。
「日本が賃金上昇を伴う安定的なインフレになると確信できれば、様々な選択肢がある」と植田氏は先週の読売新聞のインタビューで語った。「マイナス金利を終了しても日本がインフレ目標を達成できると判断すれば、そうするだろう」という。
比較的タカ派的な語調ではあるが、植田総裁のこの発言は短期間での政策転換を望む向きに水を差すものであり、日銀はインフレ率が公式目標である2%前後で推移すると確信できるまで異次元の金融緩和政策を続けることを再度明言した形だ。
植田総裁は「日本は明るい兆しを見せているが、目標達成の見通しはまだない」と述べ、さらにサービス部門の物価上昇と連動して日本の賃金が来年も上がり続けるかどうかが重要な要素のひとつであると述べた。
額面通りに受け取れば、日銀の次の政策は、基準10年物国債利回りを0%前後に抑制するために日銀が日本国債を大量に購入する慣行であるイールドカーブ・コントロール(YCC)の終了ではないかもしれない。その代わり、グローバル金融危機(GFC)以前から実施されている-0.1%というオーバーナイト政策金利の設定を放棄するかもしれない。
これは金利カーブの極端なフロントエンドにおいて、米国など他の先進国に対する日本国債の利回り不足を緩和するのに役立つ可能性があるものの、米ドル/円の持続的な下落トレンドにつながるには、おそらくマイナスの利回りの差が10年などの長い期間にわたって縮小する必要がある。
マイナス金利の終了に関する植田総裁の発言は、予想される米国の金利政策路線の再調整がない限り、その実行を示唆するものではない。とはいえ最近、日銀は10年物利回りの変動幅をより柔軟にするためにYCCを微調整したことから、利回りが現在より30ベーシスポイント以上高い100ベーシスポイントまで上昇することを容認する可能性がある。
そのため、日本のインフレ圧力が持続可能なものになりつつあることを示唆するデータがあれば、日本の長期金利が上昇に転じる可能性があり、この場合は米国側で利回りの大幅な引き下げが無くても、日米の利回りの格差縮小につながる可能性がある。
植田総裁の発言は公になるやいなや市場に影響を与え、米ドル/円一気に146.64円までと、金曜日の終値から大きく値を下げた。その後わずかに反発しているものの引き続き上値は重い。さらにここ最近は下落傾向が強く、先週は何度か148円の上抜けを試みて失敗している。米ドル指数の上昇も8週連続の上昇の後勢いが衰えているようで、重要な市場イベントを控えて利確に向かう動きがある。
下値としては、7月下旬に始まった上昇トレンドの次の注目水準が146.50円付近となっており、ここを割り込めば145.00円からのサポートゾーンに向けて再び値下がりする可能性が出てくる。上値では、147.70円を超えようとする動きがあれば売り手が参入してくる可能性が高い。
この売り展開を反転させる可能性のあるマクロイベントとしては、ECBが(今週の後半に利上げを行うかどうかにかかわらず)タカ派的な姿勢を後退させ、合わせて米国の8月消費者物価指数(CPI)が予想を上回れば、米ドル高が再燃すると考えられる。来週は米連邦準備制度理事会(FRB)で連邦公開市場委員会(FOMC)の会合が行われることから、FRB当局者がメディアへの発言を控えるブラックアウト期間にはいっており、政策決定までは新しい情報は出ない。
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