米ドル相場は上昇を続け、2023年の最高値を更新した。月曜日には105.88を突破し、このブレイクアウトの後強気トレンドはさらに加速している。
この動きの原動力になっているのは米国の金利で、10年物利回りは16年ぶりの高水準まで上昇している。その背景にあるのが先週のFOMCの金利決定で、この時来年の利下げ予想が修正され、従来の4回から2回に減らされた。金利決定から1週間、昨日のWebセミナーで述べた通り、市場では大きな動きが見られている。
金利面では、国債利回りがパラボリックに近い動きを見せている。10年物は4月に3.25%でサポートされていたが、現在は4.5%を大きく上回っている。今日の高値は4.63%(本稿執筆時点)、先週水曜日の安値は4.32%。1週間で30bp以上の上昇と、重要な資産クラスでかなりの値上がりが見られたことになる。
金利の見込みに関しては、市場は依然として来年の利下げを強く期待しており、利下げ回数に関する確率は先週からわずかに変化しただけである。この状況から、利回りの上昇と米ドル高というテーマがまだ続く可能性が高いことが際立つ。明日は米国の第2四半期GDPの確報値が発表され、2.1%と予想されているが、さらに金曜日にはPCE(FRBが好んで使用するインフレ指標)とミシガン大学消費者景況感という2つの重要なデータが発表される。
利上げサイクルのただなかであることを踏まえると、景況感データは重要な意味を持つ。過去2年間の利上げが経済システムに浸透するにつれて、市場はストレスの先行指標を探しているからだ。しかしインフレ率も依然として非常に重要であることから、いずれのデータにも市場参加者からかなりの注目が集まるだろう。
価格面では、米ドルのブレイクアウトがかなりの強さを見せている。この通貨はいくつかの視点から見て買われすぎとなっており、この値上がりを追いかけるのは難しいかもしれないが、過去1か月にわたってDXYにも同様の状況が見られ、理論的に市場ではさらに買われすぎの状況が進む可能性がある。
先週は過去のレジスタンスラインである104.70付近がサポートになった。過去の高値である105.88は3月につけたもので、昨日は短期的なサポートとなったが、プルバックへの対応を考えるトレーダーにとっては考慮すべきポイントになりうる。
米ドル – DXY 日足チャート(参照用。FOREX.comプラットフォームでは利用できません)
チャート作成:James Stanley、データ提供:Tradingview
ユーロ/米ドルの動きはDXYの値動きの大きな原動力となっている。FOMCの前週にECBが利上げに踏み切ったが、これがこのサイクル最後の利上げになるかもしれないとの見方が出て、金利決定後の余波でこのペアをはじめとするユーロは売り展開となった。
以来このペアは下落を続けており、今日も下げ相場継続を示す重要な要素として、今年の初週以来の心理的レベルにあたる1.0500ドルを再び試す動きが見られた。これは1月6日、金曜日の朝に起こった重要な動きだった。当時はFRBが利上げの終了に近づいているかどうかが懸念されており、同日午前に発表されたサービス業PMIの結果が米ドルを押し下げ、ユーロ/米ドルを上昇させる要因となった。結局1月6日のこの動きは、今年に入ってからユーロ/米ドルで1.0500ドルを下回る唯一のテストとなった。
この水準は日中に割り込んだものの、強気筋が再び押し戻していることから、プルバックの可能性が残っている。もし売り手が積極的な動きを続ければ、3月のスイングローにあたる1.0536ドル付近が短期的なレジスタンスとなる可能性がある。トレンドの継続にあたってこの水準に十分な魅力がない場合には、その次のレジスタンスは1.0611ドル付近。ここは1.1275ドル(2023年の高値)および1.0943ドル(現在の月足の高値)に関係するフィボナッチレベルだ。
注目すべきことに、1.0611では単に売りが一服しただけだった。売り手の動きの力強さがうかがえる。
ユーロ/米ドル 日足チャート
チャート作成:ジェームズ・スタンレー、Tradingviewのユーロ/米ドル
ECBが利上げを実施して、今回が最後かもしれないと市場が考えているのに対し、イングランド銀行は先週の金利決定前日にインフレ率が6%を超えたにもかかわらず、利上げを完全に回避した。これは下落を続ける英ポンドを支えることはなく、これまでのところサポートへの対する反応もごくわずかだ。
レジスタンスとしては、2021年~2022年の売り越しの50%マークと重なる1.2300ドル付近が注目される。1.2300ドルはFRB金利決定の翌日、BOEの金利決定当日にあたる先週木曜日に視野に入り始め、強気筋がサポート反応を示そうとしたものの横ばいに終わった。次のサポートとしては、特に勢いのある下落が続く場合には、引き続き1.2000ドルが注目される。このシナリオでは、いくつかの異なる視点からこのペアは売られ過ぎとなる可能性が高い。
ポンド/米ドル 日足チャート
チャート作成:James Stanley 、Tradingviewのポンド/米ドル
米ドル/カナダドルは、現在それほど目立った高騰や下落を示していない数少ない主要通貨ペアの一つである。同ペアは先週のFOMC会合前には弱気トレンドにあり、過去にレジスタンスだった1.3387ドルのサポートで反発した。そこから先週木曜日にはさらに1.3500ドルの上値を試す展開となったが、この大台で強気筋は行く手を阻まれた。
昨日、筆者は短期的な強気の三角持ち合いを強調するためにこの話題を取り上げた。その後価格は強気なブレイクアウトを見せたものの、同様に強気筋の勢いは長くは続かず、1.3500ドルのサポートまで引き戻している。
ここから値上がりに向かうシナリオも考えられるかもしれないが、豪ドル/米ドルやユーロ/米ドルのような他の多くのペアが大きな高騰や下降を見せている中、米ドル/カナダドルはそうなっていないことから、この通貨ペアが外れ値に見えることも考慮すべきだろう。そのため演繹的に、米ドル安の状況では米ドル/カナダドルのショート方向がより魅力的なシナリオの一つであることが際立つ。
しかし現時点では、以下の4時間足チャートは強気の色合いを保っている。強気の三角持ち合いからのブレイクアウトを試みた後、1.3500ドルで安値を引き上げてサポートを維持しているからだ。
米ドル/カナダドル 4時間足チャート
チャート作成:ジェームズ・スタンレー、Tradingviewの米ドル/カナダドル
難しいところである。
昨年市場介入が起きたのと同じ150円に近づいている。振り返ってみると、この介入は結果的に2500ピップスの値動きにつながったので、介入は成功したと言えそうだ。この水準は日銀、あるいは少なくとも財務省が守りたい水準なのかもしれない。
数週間前、このペアが147円台で動いていたときには当局から介入の警告も出された。そして今、米ドル/円は数百ピプス以上上昇している。
Webセミナーでも述べた通り、どうもいたちごっこのように思われる。過去の事例を見ると引き続き150円が一線となりそうだが。しかし今のところ介入は見られないので、引き続きどこで介入があるか、あるいは実際に介入があるのかどうかが問題になっている。
考慮すべき要因のひとつは、昨年第4四半期に見られた幅広いトレンドだ。米ドルは9月に、米ドル/円は10月に頂点をつけている。しかし米ドル/円の急落を招いたのは11月にサポートが破られたからで、これはインフレ率の軟化を背景にしたものであった。
日銀と財務省は昨年、非の打ちどころのないタイミングで介入を行った。国債金利が上昇し、米ドルが積極的に強気な動きを見せている現在、昨年と状況が同じとは言えないかもしれない。もし日銀が財務省の要求に応じて介入したとしても、現在のような逆風が吹いている状況では、昨年ほどの成功は望めないかもしれない。
ここで少し気を付けておきたいのがプルバックだ。また、金曜日に発表のPCEが予想を下回る結果となれば、多少の助けはあるかもしれない。その場合、同ペアのキャリーは依然としてロングサイドに決定的に傾いていることから、トレンドトレーダーにとっては安値を引き上げるのチャンスとなる可能性がある。
米ドル/円 日足チャート
チャート作成:James Stanley、Tradingviewの米ドル/円
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