先週は米ドル安の週となったが、米ドルは現在も5週間連続の下落に向かいつつある。水曜のCPIは、総合インフレ率が穏当な一方でコアインフレ率が上昇するというまちまちの結果になった。しかし市場の反応ははっきりとしたもので、水曜からDXYは弱気相場となり、木曜もPPIが引き続き生産者側のインフレ率の下落を示したことで値下がりが続いた。PPIは消費者側のインフレ率を決める主要な変数と見なされることから、前日の総合CPIが軟調だったこともあり、米ドルの弱気筋は2023年の安値更新に向けて積極的に価格を押し下げていった。
しかし下げ相場はその後長くは続かず、金曜には反発して週足の安値は穏当なものになった。
現時点では、もしDXYの100.97付近でのサポートラインが維持されれば二重底が形成される可能性がある。二重底はしばしば強気な反転を目的としたアプローチを受けるパターンだが、このフォーメーションが成立するには、2つの安値の間の高値にあたるネックラインでの強気な突破が必要だ。安値を割り込む前にネックラインの突破がなければ二重底にはならないので、このフォーメーションを実現するにはドルの強気筋の仕事が必要だ。ここにはユーロ/米ドルの背景が絡んでくると思われるので、これから見ていこう。
米ドル – DXY週足価格チャート(参照用、Forex.comプラットフォームでは利用できません)。
チャート作成:James Stanley。Tradingviewのデータに基づく。
この話題については、レジスタンスラインに向けてユーロ/米ドルが上昇しつつあった月曜にすでに書いた。このレジスタンスゾーンは比較的大きく、ここ2か月の値動きに対してある程度影響を及ぼす要素をはらんでいる。
ここで(複数の)価格変動要因が重要になる。今週、特に水曜日の消費者物価指数(CPI)発表後には、ECBの委員からタカ派的なトーンの言い回しが聞かれた。このため、ECBがFRBに比べてよりタカ派的な姿勢を示すというテーマが続いており、ユーロ圏の金利が上がって米国の金利が下がるという思惑から、ユーロ/米ドルの価格の回復を後押しする形になっている。もちろんこれが続くかは大きな問題で、金利の先行きはこの通貨ペアの先行きと同じくらいに不透明だ。
ユーロ/米ドルのトレンドに関しては、強気筋は今のところ1.1000ドルの心理的水準を超える値動きを維持できていない。これは2月に起きた状況と似ている。
本稿執筆時点ではこの通貨ペアでの反転は起きておらず、朝の揺り戻しからおなじみの1.0973ドル近辺でサポートラインが現れている。ここは先週のスイングハイにあたり、また上向きのチャネルの中央のラインも合流している。
チャート作成: James Stanley
英ポンド/米ドルも今週初めにブレイクアウトに向かったが、結局揺り戻して金曜の節目の価格を割り込む結果に終わった。英ポンド/米ドルで注目されるのは1.2500ドル近辺で、ここが試されるのは昨年6月以来初めてとなる。今週形成され始めた強気なフラッグフォーメーションの延長線上に当たる価格だ。
先週、この通貨ペアは1.2500ドルの水準を突破できず、大きな揺り戻しが起きたが、月曜にはようやくサポートラインが形成された。このサポートラインを試した後は強気筋が素早い動きを見せ、木曜の朝に見られた新たな高値が視野に入りつつある。
この件については木曜に取り上げ、「より短期のチャートでは1.2500ドルがサポートラインとなっており、本記事の執筆時点ではここが価格を下支えしている。しかし、今週は非常に強い動きがすでに展開されたことから、この価格水準が続くかどうかは疑問だ。その下では価格は1.2398ドルまで下がる可能性があり、そこを割り込めば強気相場継続のシナリオには疑問符が付くかもしれない。」と書いた。
金曜には価格の揺り戻しが起きたが、完全に下げ相場に入ったわけではなく、今週は強気相場となる可能性も十分に残されている。火曜日に発表される英国の雇用統計、および水曜に発表される英国のCPIなど、検討すべき要因がいくつかある。先月の総合CPIが10.4%となって以降、英国でのインフレの問題は依然として続いており、水曜の予想値は9.8%となっている。
チャート作成:James Stanley。TradingViewでのユーロ/米ドルチャート
米ドル/カナダドルは先週は弱気相場が続き、レンジ内のサポートラインまで価格が押し下げられている。この通貨ペアの価格は去年9月から平均回帰に入っており、すでに一度1.3338ドル付近のフィボナッチレベルにサポートラインが現れていたが、これが今週になって再び視野に入ってきている。その下はここ7か月の安値にあたる1.3224ドルになる。
この通貨ペアでは過去半年にわたってレンジ相場の傾向が見られたことから、米ドル/カナダドルは急速な下落を見せており、4月のここまでの取引で形成された下降ウェッジからもわかるとおり、短期的な反転の可能性は五分五分となっている。
チャート作成: James Stanley
米ドル/円は今週は値上がりし133.76円の水準を再度試す場面が何度かあった。最初のブレイクアウトは失敗し、揺り戻しでおなじみの132.21円の水準まで下落したものの、サポートラインはこの水準で維持され、金曜には再度133.76円を試す展開となった。
このため、強気のブレイクアウトの可能性はまだ十分にある。水平レジスタンスラインの133.76円に向けて安値が徐々に上昇し、上向きの三角持ち合いが形成されている。この先に待ち構えるレジスタンスラインは、これもおなじみの心理的水準にあたる135.00円。3月中旬には、当時の新たな安値だった130.00円にまで売り手が価格を押し下げる直前に見られたレジスタンスラインだ。
チャート作成: James Stanley
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