キャリートレードの活発化で米ドル/円が再び2023年の最高値を目指して上昇しており、昨年の値動きで大きな役割を果たしたチャート上の重要な地点まであと一歩まで迫りつつある。
昨年は米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを急ぐ一方、日銀は消極的かつハト派的姿勢を続けたことから、キャリートレードが花ざかりとなった。これにより積極的な上昇トレンドが生まれ、米ドル/円は3月の115円割れから9月には145円まで上昇した。主要通貨ペアでの3,000ピップスという値動きは基盤経済に影響を及ぼしかねないかなりの変動で、価格が145円に向けて上昇するにつれ、財務省がこの問題に踏み込むかもしれないという観測が出始めた。
去年は財務省の為替介入は145円ではなく、そのすぐ後に行われた。ただし値上がりは約1ヶ月間にわたって145円で停滞し、昨年の9月7日から10月6日までここがレジスタンスラインであり続け、最後には日足でのブレイクアウトを果たした。短期間で米ドル/円は次の主要な心理的レベルである150まで上昇し、最終的にはこれがきっかけとなって為替介入が行われた。10月に150円水準まで急騰した後、財務省は日銀に対し円買いにによる介入を命じた。
さて、現在、価格は145円の水準まで(ほぼ)戻ってきている。今日の高値は今のところ144.90円だ。
米ドル/円日足チャート
チャート作成:James Stanley、Tradingviewの米ドル/円
さて、昨年は為替介入への憶測あるいは恐れから強気筋が1か月様子見に入り、145円台で値上がりは停滞したが、最終的には財務省が介入を指示し、150ドル台で為替介入の鉄槌が下された。
今回も同じシナリオが同じ水準で展開されるだろうか。今の時点では知るすべはないが、すでに財務省から発言が出始めている。つい2、3日前に鈴木俊一が最近の米ドル/円の動きについて「一方的で急激なもの」だと述べたが、これは普通は問題が当局の関心を惹いていることを示唆するコメントだ。このトレンドが行き過ぎだと判断されれば政府は「適切な対応をとる」と鈴木は述べていた。
これは必ずしも強気筋に破滅が迫っていることを示すものではないが、日本政府から介入措置がとられるまでのトレンドの理論上の限界を強調するものではある。論理的には、その見通しをどこでつけ始めるかを判断するために、トレーダーはおそらく過去の設計図に目を向けるだろう。
強気筋にとってのリスクは、今週初めのような介入の見通しに関するコメントがさらに出てくることかもしれない。最近はほとんどプルバックがないまま強気筋が価格を押し上げ続けていることから、米ドル/円のトレンドは強く、たしかにかなり一方的である。介入に関する言及は、今のところ短期的なプルバックを引き起こしているだけだが、昨年のように財務省が介入を命じた場合は大規模な反応があるかもしれない。
米ドル/円の強気トレンドは、昨年は10月の高値にいたるまで21ヶ月を要したが、その後わずか3か月で50%値を戻し、サポートラインは2021年~2022年の主要な値動きの50%のポイントで落ち着いた。
米ドル/円週足チャート
チャート作成:James Stanley、Tradingviewの米ドル/円
現在の米ドル/円の課題は、ここまでほとんどプルバックがなく、このトレンドがまさに一方的なものであるということだ。現在は過去にレジスタンスラインだった地点を再度試していることから、特に財務大臣の発言が売り展開を引き起こす可能性を考慮すると、上昇トレンド継続の可能性には疑問が残る。
そして逆説的に、財務大臣のコメントがこの通貨ペアのプルバックにつながれば、それは今の強気筋にとってはもっとも魅力的なチャンスであるように見える。実際の介入の明確な兆候がないまま、プルバック後もサポートラインが維持されれば、値上がりの可能性は依然として残る。しかし為替介入実施、あるいは介入の脅威は、市場参加者にとっても、政府や中央銀行にとっても未知の変数となりうるため、注意が必要だ。
下の4時間足チャートでは最近の強気相場の構造と、サポートとなりうる注意すべき価格水準を示した。
米ドル/円4時間足チャート
チャート作成: James Stanley、Tradingviewの米ドル/円
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