米ドル/円の強気トレンドは曲がり角に来ている。しかしこれが(昨年の最初の9か月のように)大局的には強気な動きが続く中での揺り戻しに過ぎないのか、それとも(昨年10月に見られたような)反転の始まりなのか、いまだ疑問が残るところだ。
この通貨ペアは先週、力強い上昇トレンドに乗って2023年の高値を更新し、その過程で速いペースで140.00円の心理的レベルを超えた。この勢いは週明けの取引でも、少なくとも初めのうちは持続し、140.92円の新たな高値まで上昇した後で反転し始めた。月曜日は米国の祝日で、米ドル/円はスピニングトップフォーメーションを形成した。これは同事線と同様にトレンドの優柔不断さを示すものだが、同事線よりはやや幅が広い。昨日は売り手が140.00円を割り込むまで価格を押し戻したことからフォロースルーが発生し、今日も139.59円のフィボナッチレベルの下を試すなど、価格の揺り戻しが継続している。
現時点で米ドル/円価格は過去のレジスタンスラインより上を維持しており、この観点からいくつか特筆すべき価格水準がある。138.75円は先週140.00円を突破する前のレジスタンスラインだった。その50ピップス下の138.25円はブレイクアウト前のスイングローで、ここも注目すべき価格となる。さらにその下の137.68円は過去にサポートラインからレジスタンスラインに変わったことがあるスポットで、最近のブレイクアウト以降はまだそれほどサポートにはなっていない。
米ドル/円日足価格チャート
チャート作成:James Stanley、Tradingviewでの米ドル/円チャート
いくつか考慮すべき関連事項がある。まず何よりも今週に入って米国債の利回りが低下していることで、日米間の金利乖離が続いていることを踏まえると、これがこの通貨ペアの値下がり要因になることは理にかなっている。日銀が異次元の金融緩和政策から抜け出すことはあまり期待されていないため、米国債の利回りが上昇して米ドルが強さを見せれば、その状況は米ドル/円の強気筋に有利に働く。そのため米ドルの強さは、弱く抑えられる理由のある円の動きとかみ合い、先週のような強気のトレンドが生まれる可能性がある。
米国債10年物利回り(参照のみ:FOREX.comプラットフォームではご利用いただけません)
チャート作成:James Stanley。データ提供:Tradingview
しかしここで問題になる、あるいは懸念すべきとさえ言えるのは日本の政策変更の見通しで、最近日銀総裁に就任したばかりの植田和男氏の発言から、今週はその可能性に注目が集まり始めている。日銀が主催する年1回の国際コンファランスでの講演で、植田氏は「既に『low for long』とは異なる新しい常態(New Normal)に移行しているという可能性も一概に否定することは難しいように思います。」と述べていた。
4月下旬に日銀のトップとして初めて行った金利決定で、植田総裁は何らかの変化の要素を求めていた市場参加者の神経を落ち着かせることもできたが、結局黒田前総裁と同様の路線を歩んだ。しかしこの金利決定をきっかけに、両者が同じやり方で経済のかじ取りをするとは限らないという兆候も見え始めている。
というわけで現時点では、米ドル/円の下落の背後には米国債利回りの低下と日銀の姿勢の変化の可能性という2つの要因がみられる。どちらの方がより大きな影響を及ぼすかは、チャートが手掛かりになるだろう。下の4時間足チャートでは、価格が139.59円~140.30円の長期的なサポートゾーンを下回っているのがわかる。しかしより注目すべきなのは、おそらく、138.75円付近にあたる過去のレジスタンスラインを再び試す値動きに強気派がどう反応するかだ。このレジスタンスラインは先週のブレイクアウト前のもので、まだサポートとして試されていない。ここから50ピップス下の138.25ドルは、ブレイクアウト前の高値圏での安値にあたり、これも同様にサポートラインになりうる価格として注目に値する。そしてここを割り込んだ場合にもうひとつサポートラインになる可能性があるのは、137.68円付近にあたる長期的な注目エリアだ。
米ドル/円8時間足価格チャート
チャート作成:James Stanley、Tradingviewの米ドル/円チャート
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