なじみのない読者のために説明しておくと、外為市場介入とは一般に中央銀行が通貨を直接売買することである。中央銀行は自国通貨を売っって通貨供給量を増やし、他の通貨に対する相対的な価値を下げることもあれば、自国通貨を買って供給量を減らし、その価値を強化することもある。
日銀は長年にわたり外国為替市場に介入してきた歴史があるが、主な介入のほとんどは、輸出主導の日本経済の競争力を維持するための円高の抑制を目的とするものだった。こうした介入は通常、円を売って外貨、主に米ドルを買うものだった。
この為替介入キャンペーンのピークは2004年第1四半期で、日銀はこの期間だけで1500億ドル近い円を売った。この時期の介入は円安を維持し、いわゆる「失われた10年」からの日本経済の回復を支える重要な役割を果たした。
しかし日銀は円安促進のために為替介入を行う可能性もあり、実際に過去にもこうした介入は行われている。とはいえこちらはあまり一般的な行動ではなく、通常、円高を食い止めることを意図した介入ほど劇的ではない。
例えば1990年代後半のアジア金融危機の際、日本はアジア地域の金融不安のために円安に対処しなければならなかった。この時期、日本銀行は他の中央銀行と協力して為替介入を行い、為替市場を安定させたが、これは円安を促進するためのものだった。
もう一つの例は2008年の世界金融危機の時で、外貨を売って円を買うという直接的な外国為替市場への介入はなかったが、日銀は金利の引き下げや銀行システムへの追加流動性の提供など、さまざまな金融政策の手段を用いて経済全体を押し上げ、間接的に円を支えた。
最近では、通貨価値を下げるために何兆円もの円が売られたが、これは2022年9月と10月に米ドル/円が145円を超え、その後150円をつけたためだった。この価格は1990年以来最高水準(つまり円の最安値水準)だった。
出典: TradingView, StoneX
現在のチャートに目を向けると、米ドル/円は金曜日に145.00レベルを試している。これは昨年9月に日銀が最初に介入したのと同じ水準だが、当局が介入を決める際には、レベルではなく円安のスピードを見ていると述べていることは注目すべきだ。この観点では、円安のスピードは昨年ほど速くはない。
下のチャートが示すように、米ドル/円は50日間移動平均を約600ピップス上回っており、この乖離率は昨年と同程度だ。しかし100日間移動平均との乖離は約700ピップスに過ぎず、昨年の介入につながった長期トレンドの指標である1,000ピップスは下回っている。
多くの米国人トレーダーが独立記念日の連休で外出する来週初めのサプライズはないと仮定すると、日銀は介入の前に146.00円または147.00円までの動きは容認するかもしれない。
今後の動きに関わらず、トレーダーにとっては、中央銀行のように資金の豊富なプレーヤーであっても外国為替市場での1日あたり500億ドル程度の流れを押しとどめることしかできない、ということを認識しておくことが重要だ。持続的な円安を止めるには、日銀がイールドカーブコントロール(YCC)の緩和を手始めに、世界の金融引き締めに加わる兆しを見せなければならないが、これは早くても7月28日の次回の日銀会合までは起こらないと思われる。
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