10%を超えるCPIによって日英の国債利回りの差がますます開いていることから、英ポンド/円は今日、もっとも高いパフォーマンスを見せている通貨の一つとなっている。イングランド銀行がさらなる値上げに踏み切り、また予想よりも長期にわたって高金利を維持するだろうという期待が復活したことから利回りが上昇し、ひるがえってポンドの勢いを支えている。日英の国債利回りの差が開けば、英ポンド/ドルは高騰すると見込まれる。
今週発表された賃金データは予想よりも高く、さらに引き続き2桁水準のインフレ率が発表されたことから、英国ではさらに金融引き締めが進むという味方かが固まっている。市場では現在、英国の政策金利は現在の4.25%から上昇し、9月に5パーセントでピークに達すると見込んでいる。つまり25bpの利上げが今後2回行われるということで、そのうち1回目の利上げは今では5月に実施される公算が高い。
物価の圧力がかなり弱まっている世界のほかの地域と比べて、英国の悪夢的なインフレはまだ続いている。物価高の定着と賃金上昇から、物価と賃金が長期にわたって互いを食い合っているのではないかという深刻な懸念が生じている。この物価と賃金の上昇スパイラルから、インフレがひと段落す見通しが立たない恐れが出ている。
イングランド銀行の金融政策決定委員委員会(MPC)にとってこれは苦い薬だ。とくに非難を受けているのはアンドリュー・ベイリー総裁である。批判者たちは昨年から兆候が出ていたインフレへの対応が遅すぎたと述べ、ミスの連続からベイリー総裁とBoEの信頼性が揺らいでいると指摘する。利上げに時間をかけすぎたことで、MPCは今後過去に計画していた以上の利上げで過剰な引き締めを続けなければならなくっている。もちろんこれは、生活費の上昇で家計が締め上げられている今の経済にとっては一番望ましくないことだ。ストライキが連発するのも不思議ではない。
インフレがしつこく続くということは、労働者たちが賃上げを要求し続け、政府の財政やサービスと同様に企業にもプレッシャーがかかるということだ。既に火曜の雇用レポートでは、英国の標準的な賃金が予想以上に上がっていることが示唆されている。
手短に言えば非常に深刻だ。総合CPIは7か月連続で2ケタ台を記録している。3月の10.1%という値は、その前の月の10.4%に比べれば下がっているものの、依然として予想を上回っている。コアCPIのインフレも予測より強力で6.2%から変わらず、6%に下がるという予想を裏切っていた。
日本銀行の植田和男新総裁はすでに現在の日銀の政策スタンスを続けると述べている。ほかの主要国の中央銀行はいずれも各国の金融政策のスタンスを積極的に引き締めることで大幅なインフレに対応しており、中にはまだ引き締めを続けているケースもある(BoEもその一つだ)。しかし日銀は異例の緩和政策を続けることで円安の進行を許している。現在、世界的なインフレは(もちろん英国を除いて)下降傾向にあり、昨年よりははるかに円高であることから、日銀はイールドカーブコントロール(YCC)の設定を変える気がますます薄れているようだ。
これは英国と日本の国債利回りの上昇圧力になっており、英ポンド/円高騰の見込みが高まっている。
出典: TradingView.com
いろいろとある。日銀がイールドカーブコントロール政策を中止するなどの予想外の行動に出る可能性もあるが、これは短期的には可能性が低いだろう。株式市場の暴落というリスクも常にある。株価が下がれば円に資金を避難させる動きが広がるからだ。あともう1つ残るのは、現在筆者が考える英ポンド/円の強気相場の見込みでは、もしインフレが手が付けられないほど加熱して深刻な不景気に入れば、BoEが予想よりも早く利下げを始める可能性があるということだ。これは現在の市場では大きな懸念ではないが、どこかの時点で英ポンドの強気筋に影響を与える可能性がある。
ゆっくりと安定した値上がりは、テクニカルトレーダーにとってもまさに英ポンド/円の強気な見込みを裏付けるものだ。価格は最近166.00円付近の主要レジスタンスラインを超えたが、この水準は現在は何度か日足の終値を力強く支えている。今日の英国でのインフレデータをきっかけに、次のレジスタンスエリアである166.85円~167.00円への根がアリが始まっている。この水準が強気筋の第一のディフェンスラインになるだろう。その後は短期的な下落があってもこのエリアを維持すれば、最終的には170円を超える可能性もある。
出典: TradingView.com
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