連邦準備制度理事会の公開市場委員会(FOMC)は25bp(0.25%)の利上げを実施し、政策金利を4.75%~5.00%のレンジ内とした。FOMC会合の概要を伝えるレポートで伝えた通り、市場ではこの結果がほぼ確信されていたことから、予想通りの政策決定それ自体はさほど市場を動かすものにはならなかった。
金利引き上げに加え、FOMCの金融政策声明にはいくつか注目すべき変更が加えられた。
出典:連邦準備制度理事会
FRBは最近の銀行セクターでのストレスが「成長を圧迫する」可能性があるとたしかに言及はしたものの、地方銀行を支援するためにバランスシート縮小(QT)プログラムのペースを下げることはしなかった。
しかし、ジェローム・パウエル議長とその仲間たちは、フェデラル・ファンド金利の「継続的な上昇」(複数形)への言及を削除して「ある程度の追加の政策引き締めが妥当と思われる」という曖昧なコメントに置き換えた。つまりFRBは声明をトーンダウンさせて、今後の経済データによっては5月に利上げサイクルを一時停止させる含みを持たせた。
FRBの経済予測は大きな変更はなかったものの細かな変更が加えられ、特に2024年にはインフレ率が徐々に上昇したまま下がりにくくなり、経済成長が鈍化する見通しが指摘された。
重要なのは、FOMC委員が2023年末での金利予想の中央値を5.1%から変更せず、おおかた今後9ヶ月で1回の利上げ実施を示唆した点だ。FRBは市場ほど悲観的になっているわけではないが、政策担当者は依然として、中央値としては来年は25bpsの利上げを3回実施すると見込んでおり、利上げサイクルは(まだ終わったわけではないが)終わりに近づいていることを示している。
本稿執筆時点でパウエル議長はまだ記者会見を終えていないが、これまでの勿体ぶった話を踏まえると、銀行システムへのストレスの影響が融資を引き締めることで、経済への影響という点では疑似的な「利上げ」として作用する可能性を繰り返し強調した。
記者会見の注目点は以下の通り(強調は筆者による)。
FRBの声明と経済予測に対する最初の反応はいわゆる「ハト派的な引き上げ」を反映するもので、ドルが主な相手通貨のほとんどに対して下落を見せ、短期国債利回りが下がり、金価格が上昇し、主要株価指数が上昇した。これらの反応はパウエル議長の記者会見の序盤のみで広がり、米ドルはここ7週間での安値まで下落、ナスダック100はここ7ヶ月での高値となる13,000ドル付近まで上昇し、金は昨日の損失をすべて帳消しにして1,980ドル付近で取引された。
本稿執筆時点で株価指数と金価格は下落に転じており、おそらくこれはイエレン財務長官が銀行預金保険の拡大を検討していないとコメントしたことによるものだが、ドルの安値は依然として続いている。経済指標に焦点を戻す前に、今後数日でFRBの当局者から誤解を修正するような発言が出るか注目しよう。
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