ユーロ/米ドルはFOMC議事録の公表を前に米国のトレーダーが参入したことで、先の安値からかろうじて反発し値上がりに転じた。当初ユーロは欧州株やコモディティドルと合わせて売り展開となっていたが、ECBがタカ派的なレトリックを続けているおかげで、トレーダーは今回の下落を好機として買いに入った。終値が1.0850ドルを超えれば、テクニカル面ではユーロ/米ドルの強気相場の見通しが強まるだろう。ただしマクロ的な観点では、米国の債務上限をめぐる状況とリスク選好の低下が注目される。
水曜セッションの前半ではリスク選好がさらに悪化した。欧州の株式市場は急激な売り展開となり、米国の先物も下落を見せた。センチメントが悪化した理由は様々だが、その筆頭は中国と欧州経済の健全性に対する懸念、そして米国の債務上限に対する懸念である。また、FRBがさらなる金融引き締めの意思を固めている一方で、世界の一部の地域ではインフレ率が非常に高い状態が続いており、あらゆる問題を引き起こして消費者の懐に打撃を与えている。たとえば英国の4月の消費者物価指数(CPI)は予想ほどには改善しておらず、依然として8.7%と非常に高い水準にある。企業の業績も、特に製造業ではあまり芳しくなく、火曜日に発表されたPMIの数値は弱いものだった。
Source: TradingView.com
当然のことながら、水曜日の朝はエルメス、LVMH、ケリングなどの欧州トップクラスの高級ブランドの株価が急落した。中国株が年初来安値を更新したことを受けての値動きだ。この売りに押され、ドイツのDAX指数はわずか3日間で先週の急騰分をすべて帳消しにした。銅も金属材料(および他の多くのコモディティ)の世界最大の輸入国である中国の需要に対する懸念から、今年の安値を更新した。
リスクオフの心理は為替市場にも伝わり、コモディティドルが下落している。夜間にニュージーランド準備銀行は25bpの利上げを実施したが、併せて利上げの終了も示唆したため、トレーダーが利上げの観測を手放したことでNZDは急落。また、リスクオフ・トレードがどのコモディティドルにも重しとなっており、ニュージーランドドルも打撃を受けている。
しかし米ドルに対して苦戦したのはコモディティドルだけではない。ポンドとユーロも下落したものの、その損失は最小限にとどまった。今朝発表された英国のインフレデータは強いものだったが、これはポンド/米ドルにとって意味のあるサポートにはならず、この「ケーブル」通貨ペアは直後に下落に転じ、今週の最安値を更新している。
ECBが引き続きタカ派的なコメントを出しているにもかかわらず、ユーロ/米ドルもはっきりとした買い展開には至っていない。ラガルド総裁は今週初め、ECBはインフレ抑制に向けた道程の大部分を終えたものの政策引き締めは「まだ終わっていない」と重ねて述べた。インフレの見通しが「高すぎ、また長すぎる」ためだ。しかし米ドルの値上がりとユーロ圏のデータの弱さを受け、ユーロ/米ドルはいずれにしても売られた。製造業PMIはかなり弱く、最近発表された一連のデータが軒並み予想を下回っている上、すべての面で成長の勢いを失っていることを示唆している。ユーロ圏で今朝発表された重要な経済データは、ドイツのIFO景況感指数で、93.4から9.17へと予想以上に低下した。
このため米ドルが為替市場を席巻しており、今日中に予定されているFOMC議事録の公開を前に「リスクオフ」センチメントとタカ派的なFRBの姿勢で価格が支えられている。今日中にこの状況が変わるかどうかは不明だが、本稿執筆時点でユーロ/米ドルには多少の買いが入り、1.0750ドル台のサポートレベルから50ピップスほど反発している。安値の形成を見極めるには依然として1.0850ドルを上回る値上がりが必要だ。この値上がりが見られない場合、ユーロ/米ドルの見通しは短時間足では弱気のままとなるだろう。
出典: TradingView.com
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