ユーロ/米ドルの短期的な見通しは、数日のうちに行われる2つの主要中央銀行の決定にかかっている。まず、FRBは水曜日に25bpの利上げを実施する見込みだが、その後9月に利上げを一時停止するシグナルを出すかどうか決めるはずだ。こうしたシグナルは、ドル価格の方向性に大きな影響を与えうる。FRBの動向が明らかになった後は、木曜日のECB会合が注目される。ECBはデータに基づく政策決定へと路線を戻す可能性があるが、これは過去1週間半のユーロ/米ドルの下落で市場が織り込んでいた。もしECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁が、9月に向けてタカ派的な強いシグナルを出すことを拒否すれば、先行きはややハト派的とみなされ、ユーロには引き続きプレッシャーがかかり、株式市場は下支えされるかもしれない。しかし、水曜日先にFRBがハト派的なサプライズを発表すれば、ユーロ/米ドルはいずれにせよ上昇する可能性がある。一方、ECBもFRBも近く利上げを一時停止する可能性が高いこと、さらに中国が自国経済の支援を進める準備を整えていることから、ドイツ株式市場(DAX)の見通しは今のところは引き続き明るい。
欧州中央銀行が利上げサイクルを開始してからおよそ1年が経過したが、今では引き締めサイクルの終わりが近い。投資家たちは先週まで、ECBが今年中に少なくともあと2回の利上げを実施すると確信していた。しかしここ最近発表されたマクロデータ、特に(ユーロ圏の経済大国と呼ばれる)ドイツの製造業セクターのデータのほとんどが弱いものであったことと、さらに木曜の会合以降の金融引き締めは既定路線ではないと発言したクラース・ノット氏を含め、ECB当局者数人のハト派的なコメントを受けて、投資家は9月の利上げの観測を弱めている。
というわけで7月以降の情勢については不透明感が増しているものの、木曜日になればある程度明確になるだろう。ECBが9月の会合についてのガイダンスを出す可能性は低いかもしれないが、多くのアナリストはECB金利のピークを4%と見ており、木曜の会合以降の利上げは依然として広く見込まれている。
前回は非常にタカ派的だったECBのラガルド総裁の今回の発言には耳を傾ける価値がある。ラガルド総裁の発言のトーンが前回とさほど変わらなければ、ユーロ/米ドルは上昇に向かう可能性がある。しかしもちろん、この値動きは前日の水曜日のFRBのメッセージにも大きく左右されるだろう。いずれにせよ、ECBはインフレにつながる対応は絶対に避けるはずで、現在のタカ派的なスタンスからの転換を示唆する際は非常に慎重になるだろう。
基本シナリオ:最も可能性の高いシナリオは、ECBが木曜日の政策決定でバランスを取ることで、これはユーロ/米ドルの見通しを比較的明るいままに保つ可能性がある。ラガルド総裁は「より長く、より高く」というシナリオに焦点を当て、来年にはECBが金利を下げ始め、合計で75bpの利下げを行うという観測に対抗するかもしれない。「より長く、より高く」というのは、さらなる利上げではなく単に長い据え置きを意味するのかもしれないが、おそらく9月の利上げの余地を維持しつつ、ユーロ圏の経済、特に製造業が再び低迷していることを考慮してあらかじめ明言はしないということになるだろう。このシナリオでは、ユーロ/米ドルは初動で大きく下落することはないと考えられる。いったん落ち着けば1.10ドル付近で推移し、その後上昇を再開する可能性がある。
ハト派の場合:ECBが、ユーロ圏経済の大幅な後退により、インフレ率が予想より早く目標値に戻る可能性があると示唆した場合、ユーロは1.10ドルを大きく割り込む可能性がある。ラガルド総裁が約1か月前の前回会合でいかにタカ派的だったかを踏まえると、このシナリオが実現する可能性は低いと見られる。
タカ派の場合:ECBがコア・インフレ率の高止まりを指摘し、ユーロ圏の最近の景気後退の兆候には目を向けないという可能性もある。この場合は6月のように、ECBは来月の追加利上げをあらかじめ約束する。このシナリオでは、ユーロ/米ドルは1.1300ドルに向かって上昇し、先週更新された2023年の高値を上回る可能性がある。
最近のプルバックにもかかわらず、ユーロ/米ドルの見通しはテクニカルの視点では強気を維持している。長期的な強気トレンドの終焉を示唆するような、大きな頂点パターンや安値の下落がまだ見られないからだ。
言えることがあるとすれば、ユーロ/米ドルは現在1.100ドル~1.1095ドル付近に位置しており、ここが重要なサポートゾーンになる可能性がある。今年に入ってから何度か天井となったこのエリアからユーロ/米ドルは反発し、再び上昇に転じる可能性がある。このエリアを割り込むと、過去の値上がりの基点となった1.0900ドルが次の大きな節目だ。
筆者にとって重要な一線は1.0833にある。これは先週初めに2023年の新たな高値まで上昇する前、7月上旬につけた最後の安値だ。この水準を割り込むと、安値が初めて下がることになる。筆者としては、この時点でユーロ/米ドルの強気の見通しを取り下げるだろう。
ちなみに先週の高値は、2021年1月に始まった大規模な値下がりからの61.8%のフィボナッチリトレースメント(1.1275ドル)付近に位置している。この水準は現在、強気筋が奪取を目指す重要なターゲットとなっている。奪取が成功すれば、1.1500ドルまでのレジスタンスはそう多くはないだろう。
生活コストの危機的上昇や経済活動の低迷など、さまざまな問題があるにもかかわらず、株式市場の投資家は中央銀行による金融引き締めの終了と中国の景気刺激策の強化に期待している。そのためDAXの見通しは強気で、他の欧州株価指数とともに高値と安値が上がり続けている。6月に史上最高値を更新した後、そこからのプルバックはそれほど大きくなかった。ドイツ株価指数が21日間の指数移動平均線を上回り、16,000でのサポートが堅持される限り、強気筋は満足だろう。まだチャート上に表れていない新しい高値を目指すなら、16,200~16,300の間にある主なレジスタンスラインを上抜けする必要がある。
本記事で使用した全チャートの出典:TradingView.com
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