米国の債務上限引き上げの交渉に引き続き注目が集まる中、英米双方から重要なインフレデータが発表されることから、英ポンド/米ドルは明らかに今週最も注目すべき通貨ペアの1つとなる。米ドルが今後上昇する可能性は限定的であることから、英ポンド/米ドルは長期的には強気相場が続くと見られる。
先週、米ドル指数は終値で2週連続の上昇を見せたものの、金曜日にはタカ派的姿を弱めたFRB議長のコメントを受けてやや勢いを失った。しかし好調な労働市場や、米国政府のデフォルトを回避するための債務上限に関する合意が成立するという見通しが高まったことで、ドルはこの2週間値上がりし続けている。
今週末は合意は成立しなかったものの、ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁による月曜日の最新のコメントは、CPIの一貫した低下や銀行セクターのストレスにもかかわらず、FRBは次回の会合で金利をさらに引き上げる可能性があると投資家たちに思い出させるものだった。FOMCのジェームズ・ブラード氏は、「私は今年あと2回の利上げがあると考えている」とも付け加えている。
しかし、ブラード氏はFOMCの当局者ではあるが投票権はないので、彼の意見はそこまで重要ではない。重要なのはFRB議長本人の見解だ。「金融安定化のためのツールは銀行セクターの状況を落ち着かせるのに役立つとはいえ、他方で銀行セクターの動向は信用状況の逼迫に寄与するものであり、経済成長、雇用、インフレの重石になる可能性が高い」ジェローム・パウエル議長は、金曜日にワシントンで開かれた会議の席上でそう述べた。「結果として、目標を達成するために我々の政策金利をそれほど上げる必要はないと言えるかもしれない」。
2週間の値上がりの後、私はドルが再び徐々に弱まっていくことを見込んでいる。
米国ではインフレがピークアウトしているものの、政策決定者は引き続き慎重な姿勢を貫いている。FRBの目から見ると、米国経済はまだ政策転換が必要なほど十分に落ち着いているわけではない。それでも、市場は依然として2023年末までに数回の利下げが行われると考えている。こうした観測は、FRBのローガン委員のタカ派的な発言や、先週発表された失業保険申請件数が予想を下回ったことを受けてやや後退している。金曜日には、FRBが重視するインフレ指標であるコアPCE価格指数に注目が集まるだろう。
ドル安が再び進むと予想される理由のひとつは、米国の債務処理をめぐる楽観論は、よりリスクに敏感な外国通貨にまだ影響を与えていないためだ。値上がりを続けるグローバル株式市場に目を向ければ、投資家たちが米国の債務上限交渉について楽観視しており、中国の景気減速もそこまで心配していないことは明らかだ。しかし、コモディティドルや新興国通貨には、同じような楽観的な見方は表れていない。一方で米国の金利はすでにピークかそれに近い水準にあり、インフレ率は低下傾向にある。今後数ヶ月の間に経済が予想以上に急激に弱まる可能性はあり、そうなればFRBは9月ごろには政策を転換するだろう。
水曜日に発表される英国CPIは、間違いなくポンドにとって最も重要なデータである。インフレ率は数ヶ月にわたり10%を超えて高止まりを続けていたが、ここからは比較的急速に低下すると見られている。過去に急上昇したCPIが前年比で低下し始めるからだ。3月には、CPIの低下はほんのわずかしか見られず、予想を裏切り7か月連続で10%を超えた。
今回、年間CPIはどうにか8.2%まで低下すると見られており、8ヶ月ぶりに10%を割り込むことになる。
この数字にポンドがどう反応するかは議論の余地がある。予想を下回るサプライズは逆説的にポンドにとって良いニュースになるかもしれないが、発表直後の反応はストレートなものになるだろう。通常は、インフレデータが予想を上回れば利上げが続く可能性があり、通貨値上がりの理由になる。しかしインフレ率が高すぎる場合、利上げが経済に与える悪影響が、利回り上昇による通貨の利益を上回る傾向が強い。高インフレ・高金利の環境下では、利上げを重ねるごとに景気が後退していくリスクが高くなる。そのため低いCPIが発表されれば、こうした懸念が抑えられるはずだ。
市場では6月のBOEの利上げを20bp程度と見ている。CPIが予想通りか、あるいは予想を下回った場合、BOEは6月の利上げを一時停止するかもしれない。しかしCPIがさらに上昇した場合には、最後に25bpの利上げが実施される可能性が高まり、この場合英ポンド/米ドルは短期間で乱高下する可能性がある。
BOEが6月にさらなる金融引き締めを行うかどうかだけではなく、緩和を始めるまでにどれほどかかるかも重要だ。CPIが英中銀の目標である2%を大きく上回っており、米国のインフレ率と比較するとMPCの緩和には高すぎる。そのため、1.25ドルを超える動きはまだ好ましいものと思われる。
今週の英ポンド/米ドルの予想に影響を与える可能性があるのは、英国CPIだけではない。「ケーブル」通貨ペアに関連する経済カレンダーの全体は以下の通り。
英国のCPIに加え、製造業とサービス業の活動に関する最新情報を提供するPMIに注目。今週のもう一つのハイライトとして、英国の小売売上高と、FRBが重視するインフレ指標も金曜に発表される。
英ポンド/米ドルは金曜には強気のローソクを形成したものの、それも重要な1.2450レベルのすぐ下で終わり、テクニカルの状況は依然として不透明だ。長期的なトレンド(強気相場)に疑問の余地はないものの、短期的な見通しはまだはっきりしない。
強気筋は1.25ドルより上まで価格が戻ることを狙っており、もしこれが実現すれあb、最近の取引で優勢となっている短期的な弱気相場のバイアスが無効化され始めるだろう。この条件が満たされれば、今月初めの高値にあたる1.2680ドルのすぐ上、売り手の大きなストップがかかっている1.27ドルに向けて、テクニカルな買いが続くと思われる。
弱気筋は、先週の安値にあたる1.2390ドルを割り込む動きを狙っており、再び1.20ドル台前半まで価格が落ち込む可能性がある。
今週は主要なマクロイベントが控えていることから、月曜の朝としてはテクニカル面での短期的な見通しはどちらにも転びうる。
Source: TradingView.com
— 文責:マーケットアナリスト、Fawad Razaqzada
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