週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
◆ドル円、日銀のマイナス金利解除への思惑が一段と後退
◆ドル円、米政府の予算期限に対する影響は限定的
◆ユーロドル、米金利次第だが欧州景気減速懸念は根強い
ドル円 143.50-148.50 円
ユーロドル 1.0700-1.1150 ドル
ドル円は、日銀による早期政策修正への思惑が一段と後退しているうえ、日経平均株価がバブル後の高値を更新し続けるなど株高を支えに底堅く推移しそうだ。
10 日に厚生労働省が発表した11 月の毎月勤労統計調査で、物価変動の影響を除いた実質賃金が20 カ月連続で減少したことで、早期マイナス金利解除への思惑が一段と後退している。1 日に発生した能登半島地震により、「経済に影響を与える金融政策の修正を遅らせるべき」との声が広がるなかで、緩和政策継続への期待感が高まっており、来週も円先安観からドル円の押し目買い意欲は維持されそうだ。
なお、11 日発表の12 月米消費者物価指数(CPI)は概ね市場予想を上回る結果となったが、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF 金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、3 月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ確率が7 割程度まで上昇している。結果的にCPI の結果が米利下げ観測を一層高めることになっており、市場と米当局者の金利先行きに対する見通しのかい離は依然として広がったままだ。
来週は15 日に1 月NY 連銀製造業景気指数、16 日に12 月小売売上高や12 月鉱工業生産、18 日に前週分の米新規失業保険申請件数、1 月ミシガン大学消費者態度指数・速報値など、米経済状況を見極めるうえで重要な指標が数多く発表される。
また、来週末には米連邦政府の予算期限を迎える。法案が成立しなければ一部政府機関が閉鎖となるが、現時点ではつなぎ予算の成立に向けて議論が続いている。昨年11 月の時も最終的に期限ぎりぎりに合意に至ったことを考慮すると、為替相場への影響は限定的だろう。
ユーロドルは、引き続き米金利動向に左右されることになりそうだ。ただ、11 月独鉱工業生産が上昇予想に反して6 カ月連続で低下するなど、欧州の景気先行きに対する不透明感は高まっている。来週はダボスで世界経済フォーラムの年次総会が開催され、17 日と18 日にラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁による講演やパネルディスカッションが予定されている。
ドル円は、週前半は上値が重く一時143.42 円まで下落したが、その後は徐々に下値を切り上げる展開に。本邦の実質賃金の伸び鈍化が示されたことで円が全面安の展開となったうえ、日経平均株価が堅調に推移すると買いが加速。12 月米CPI の発表後には一時146.41 円まで買い上げられた。一方、米金利が一転低下したため一巡後は144 円台後半まで失速している。
また、ユーロドルは1.09 ドル台で方向感がなかった。ロンドンフィキシングにかけたフローや米長期金利に振らされながらも狭いレンジ内で推移した。(了)
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
◆豪ドル、対円では買いが入りやすいが対ドルでは伸び悩む可能性も
◆豪ドル、11 月CPI は予想を下回る結果に
◆ZAR、SARB 会合を翌週に控えて動きづらい展開
豪ドル円 95.00-100.00 円
南ア・ランド円 7.50-8.00 円
豪ドルは対円で底堅く推移しそうだ。米連邦準備理事会(FRB)当局者から市場の早期利下げ観測をけん制する発言が相次ぐなか、日銀の金融政策正常化の時期が後ずれするとの思惑もあり、年始からのドル円は総じて堅調に推移。ドル円の上昇にくわえ、足もとで進む株高の影響もあり、リスクに敏感な豪ドル円にも買いが入りやすい状態が続いている。ドル円や株価動向など外部要因次第という点には注意が必要だが、今後も下値の堅い動きが続くことになりそうだ。
一方、対ドルでは伸び悩む展開が予想される。今週発表された11 月消費者物価指数(CPI)は前年比4.3%となり、前月の4.9%から伸びが鈍化。市場予想の4.4%を下回った。豪金利の先安観を高める内容となり、今後対ドルで豪ドルの上値を重くする材料となるだろう。もっとも、CPIの内訳を見ると豪準備銀行(RBA)が注視している国内価格は依然として高止まり傾向にある。次回のRBA 理事会(2 月5-6 日)までに、再び物価指標の発表(12 月CPI と10-12 月四半期CPI、いずれも31 日)が予定されているため、その際にも改めて物価動向を確認しておきたい。
なお、市場では現在、次回のRBA 理事会で金利が据え置かれるとの見方が大勢を占めているようだ。そのほか、来週は16 日に1 月ウエストパック消費者信頼感指数、18 日に12 月雇用統計が公表予定であり、雇用統計の結果次第では相場が反応する可能性もあるだろう。
隣国のニュージーランド(NZ)では来週に経済指標の発表などは予定されておらず、NZ ドル円は今週と同様にドル円など外部要因に振らされることになりそうだ。また、足もとのNZ ドルは対ドルでやや方向感を欠いた動きとなっているが、昨年末まで続いたNZ ドル買い・ドル売りの流れが一巡、もしくは反転したか慎重に確認しておきたい。
南アフリカ・ランド(ZAR)は神経質な展開となりそうだ。今週は南アフリカから特段のイベント・経済指標の発表などはなく、ドル相場などにつれた動きとなった。来週も17 日に11 月小売売上高の発表がある程度で相場への影響も限られるだろう。ただ、翌週には12 月CPI などの物価統計にくわえ、南アフリカ準備銀行(SARB)の金融政策決定会合などが控えている。重要なイベントを前に週後半にかけては徐々に持ち高を傾けにくくなりそうだ。
豪ドルは対円などで下値の堅い動きとなった。週半ば以降は日経平均株価が連日でバブル後の最高値を更新する展開となったことを受け、クロス円には投資家のリスク志向改善を意識した買いが入った。リスクに敏感なオセアニア通貨もしっかりとなり、豪ドル円は昨年12 月上旬以来の高値を更新した。
ZAR も対円では底堅く推移。全般に円売りが進んだ流れに沿って次第に下値を切り上げる展開となり、昨年12 月下旬以来の水準まで買い戻しが入った。(了)
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
◆ポンド、英国の12 月インフレ指標に注目
◆ポンド、賃金データも英金融政策を見通すうえで重要
◆加ドル、12 月CPI を注視 4 月会合への影響度を探る
ポンド円 182.50-189.50 円
加ドル円 107.50-111.50 円
ポンドは17 日発表の12 月英インフレ指標が注目材料となる。結果を受けて英中銀金融政策委員会(MPC)に対する市場の思惑に変化があれば、ポンド相場の動意にも繋がるだろう。
前回の11 月消費者物価指数(CPI)は前年比3.9%と市場予想を0.5%も下回り、2021 年9 月以来の低い伸び率を記録した。英中銀が注視するコアCPI も前年比5.1%と、こちらは22 年1 月以来の水準まで減速。インフレが想定以上に鈍化していたことを受け、昨年末にかけて市場では今年の利下げを意識する動きが強まった。ただ、年明けからは米国で金利低下への過度な期待が後退したことにも影響され、英中銀の利下げ幅に対する織り込み度は縮小している。昨年末は優勢だった「遅くとも5 月MPC(今年3 回目の会合)で0.25%引き下げ開始」という見方は、足もとでは「据え置き」とほぼ半々の可能性となってきている。今回のCPI が5 月会合にどのような影響を与えるか、注意深く見る必要があるだろう。
英インフレ指標の前日16 日には雇用関連の指標が発表予定。こちらも、英金融政策を見通すうえで重要視される賃金データに市場の関心が集まるだろう。前回8-10 月期の「ボーナスを除く平均賃金」は前年比7.3%と、上昇率は一部市場が見込んでいた水準よりも鈍化した。それでも高水準ということに変わりがないなかで、今回9-11 月期で減速が進むかがポイントとなるだろう。
金融当局者は賃金データの高止まりを警戒しており、結果次第では翌日の英CPI 発表の前にもポンドは値幅を伴った動きを見せるかもしれない。
加ドルは16 日発表の12 月CPI の結果を注視。11 月分は前年比3.1%と前回から横ばいだったが、市場は6 月以来の3%割れを予想していた。カナダと経済的な結び付きが強い米国も足もとでインフレ減速が一服しており、カナダCPI も上振れを見込む向きが増えつつあるようだ。今年最初となるカナダ中銀の金融政策決定会合は24 日だが、政策金利は5.00%で据え置きがほぼ確実視されている。市場の関心事は、利下げ織り込み度が若干低下しつつある4 月会合に対する12月CPI の影響度だろう。
また、株式相場を受けたリスクセンチメントや、能登半島地震で日銀の政策修正が後ずれするとの見方が今後も強まるかなども対円の動向を左右することになりそうだ。
ポンド円は週前半、前週末に上昇した反動から182 円後半まで売り戻されたが、売り一巡後は切り返しの動きに。5 日の高値水準184 円前半を超えると上げ足を速め、一時186 円台乗せとなった。日経平均の大幅上昇や日銀による金融正常化が遅れるとの観測で円売りが強まっている。
また、ポンドドルは1.26 ドル後半で下げ渋り、1.27 ドル台を中心に取引きされた。
加ドルは対円では107 円前半まで売り先行も、株高や原油先物の反発を支えに109 円前半まで上昇した。対ドルでは米CPI 上振れをきっかけに一時1.34 加ドル前半まで加ドル安に傾いた。(了)
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