19日のニューヨーク外国為替市場でドル円は3日続伸。終値は143.84円と前営業日NY終値(142.78円)と比べて1円06銭程度のドル高水準だった。日銀の大規模金融緩和策の維持や、会合後の植田和男日銀総裁による会見を受けて市場で先行していた早期の政策修正観測が後退すると円売り・ドル買いが進行。20時前には一時144.96円まで値を上げた。
ただ、NY市場に限れば上値の重さが目立った。米金融政策が2024年の早いうちに利下げに転じるとの観測が根強い中、米金利の低下に伴う円買い・ドル売りが入ると一時143.53円付近まで下押しした。
なお、バーキン米リッチモンド連銀総裁は利下げの可能性について、「予想通りインフレ率が低下すれば米連邦準備理事会(FRB)は適切に対応する」との見解を示した。半面、ボスティック米アトランタ連銀総裁は「インフレを巡っては驚異的な進展が見られたものの、まだ道半ば」「FRBの利下げ実施に緊急性はない」と話した。
ユーロドルは続伸。終値は1.0981ドルと前営業日NY終値(1.0924ドル)と比べて0.0057ドル程度のユーロ高水準だった。FRBが24年の早期に利下げに転じるとの観測が根強い中、米金利低下に伴うユーロ買い・ドル売りが入ると、一時1.0987ドルと日通し高値を付けた。
ユーロ円も続伸。終値は157.95円と前営業日NY終値(155.97円)と比べて1円98銭程度のユーロ高水準。日銀のマイナス金利政策解除への警戒感が後退する中、20時前に一時158.57円と本日高値を付けたものの、1時30分過ぎには157.60円付近まで上げ幅を縮めた。ドル円につれた動きとなった。
米ドルカナダドルは軟調だった。11月カナダ消費者物価指数(CPI)が前月比0.1%/前年同月比3.1%と予想の前月比▲0.1%/前年同月比2.9%を上回ったことが伝わると、米ドル売り・カナダドル買いが進行。取引終了間際に一時1.3332カナダドルと日通し安値を付けた。
本日の東京外国為替市場のドル円は、植田日銀総裁が来年1月のマイナス金利政策解除を示唆しなかったことから底堅い展開が予想される。ただ上値についても、米10年債利回りの伸び悩みで限定的となりそうだ。
植田日銀総裁は、昨日の会見で、大規模金融緩和政策の継続を決定した理由として、先行きの経済情勢の不確実性が高いことを挙げていたが、政治情勢の不確実性もあるのかもしれない。
岸田首相は、先日「日銀と政府はアコード(共同声明)を通じて緊密に連携することを確認している。政府はデフレ脱却に向けて取り組んでおり、しっかりと念頭に置いて政府と連携をしていただきたい」と述べていた。昨日の日銀会合には、新藤経済財政担当相が出席しており、岸田首相の意向、すなわち、現時点では金融引き締めへの転換は受け入れられないことを伝えたのかもしれない。
また、自民党派閥の政治資金パーティーを巡る問題で政局混迷への警戒感が高まりつつあることで、景気回復への悪影響を避ける観点から、日銀は現状の金融政策の維持となったのかもしれない。
ドル円は、12月7日の植田日銀総裁の参院財政金融委員会での答弁で、「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」との発言を受けて、7日の高値147.32円から14日の安値140.97円まで下落。そして、昨日の植田日銀総裁の発言「国会で仕事への取り組み姿勢を問われ、一段と気を引き締めてというつもりだった」を受けて、144.96円まで戻している。
ドル円が147円台までの全値戻しとなる往って来いとはならなかったのは、13日のパウエルFRB議長の発言「利下げは視野に入り始めており、今回のFOMC会合でも議論した」を受けて、来年3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ観測が高まっているからかもしれない。
昨日までの日銀金融政策決定会合では、短期政策金利をマイナス0.1%に据え置くとともに、長期金利の誘導水準を「ゼロ%程度」として上限は1%を「めど」とするイールドカーブコントロール(YCC)の運用も維持した。先行きの政策指針であるフォワードガイダンス「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」にも変更はなかった。
植田日銀総裁は、2%目標実現の鍵を握る基調的物価が2025年度にかけて目標に向け徐々に高まるとの見通し実現の「確度は引き続き少しずつ高まっている」とした上で、「もう少しデータやさまざまな情報を見たい」との考えを示した。そして、来年1月会合の政策決定はそれまでに入手される情報次第だとしながらも、新しいデータはそんなに多くない、と述べており、1月会合での金融政策正常化の可能性は低下している。
8時50分に発表される11月貿易統計(通関ベース)は、季節調整前で9624億円の赤字、季節調整済で7689億円の赤字と予想されている。ドル円を下支えする本邦実需筋の円売り圧力を確認することになる。
※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◎ 11月貿易統計(通関ベース、予想:季節調整前9624億円の赤字、季節調整済7689億円の赤字)
<海外>
○08:00 ◎ グールズビー米シカゴ連銀総裁、インタビュー
○16:00 ◇ 11月独生産者物価指数(PPI、予想:前月比▲0.3%)
○16:00 ◇ 1月独消費者信頼感指数(Gfk調査、予想:▲27.0)
○16:00 ◎ 11月英消費者物価指数(CPI、予想:前月比0.1%/前年比4.4%)
○16:00 ◎ 11月英CPIコア指数(予想:前年比5.6%)
○16:00 ◇ 11月英小売物価指数(RPI、予想:前月比0.2%/前年比5.7%)
○18:00 ◇ 10月ユーロ圏経常収支(季節調整済)
○19:00 ◇ 10月ユーロ圏建設支出
○21:00 ◇ MBA住宅ローン申請指数
○22:30 ◎ 7-9月期米経常収支(予想:1960億ドルの赤字)
○23:00 ◎ レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演
○24:00 ◎ 12月ユーロ圏消費者信頼感指数(速報値、予想:▲16.4)
○24:00 ◎ 11月米中古住宅販売件数(予想:前月比▲0.4%/年率換算378万件)
○24:00 ◎ 12月米消費者信頼感指数(予想:104.0)
○21日00:30 ◇ EIA週間在庫統計
○21日03:00 ◎ 米財務省、20年債入札
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
19日05:57 デイリー米サンフランシスコ連銀総裁
「24年に利下げが適切になる可能性がある」
「24年に3回の利下げが必要になる可能性」
19日11:54 日本銀行声明
「粘り強く金融緩和を継続」
「賃金上昇に伴う形で2%物価目標を持続的・安定的に実現することを目指していく」
「必要なら躊躇なく追加的な緩和措置を講じる」
「物価目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続
「企業等の資金繰りと市場の安定維持に努める」
「内外経済や金融市場巡る不確実性きわめて高い、経済・物価・金融情勢に応じ機動的に対応」
19日15:35 植田日銀総裁
「我が国の景気は緩やかに回復している」
「経済・物価を巡る不確実性は極めて高い」
「粘り強く金融緩和を継続していく」
「基調的な物価上昇率、2%に向け上昇する確度高まっている」
「賃金から物価への波及、サービス価格への動向を見たい」
「チャレンジング発言、仕事の取組み姿勢一般に対するもの」
「物価安定目標を十分な確度をもって見通せる段階にはない」
「確度は上がっているが閾値に達するにはもう少し情報見たい」
「政策修正、毎回の決定会合で議論して決まるもの」
「政策修正、一般論としてサプライズは避けられない」
「出口の対応、確度の高い姿を示すことは困難」
「マイナス金利、金融機関収益や金融仲介にマイナスの影響も」
「実質賃金マイナス、先行き好転見通しなら障害にならない」
「政策変更、3月決算避ける必要との議論は今のところ出ていない」
「1月会合での政策修正の可能性、そこまでに入ってくる情報次第だが、そんなに多くはない」
「マイナス金利解除後の政策金利、現時点で決め打ちできない」
「政策修正について、来月上げますということになる可能性はあまりない」
19日16:22 ビルロワドガロー仏中銀総裁
「早すぎる利下げは、インフレが再発する危険性がある」
「政策金利はしばらく高止まりした後、24年のある時点で引き下げられる」
「利上げ局面は終わった」
「遅くとも25年までにインフレ率を2%に戻す。これは予想ではなく約束」
「インフレは仏国民にとって最大の関心事であり、低下し始めている」
19日17:48 シムカス・リトアニア中銀総裁
「市場の利下げ見通しは過度に楽観的」
19日18:59 新藤経済再生担当相
「日銀決定会合出席、日程の都合がついたため」
「日銀会合、日程に余裕があれば参加する」
19日22:01 カザークス・ラトビア中銀総裁
「ユーロ圏のコアインフレ率は11月も高水準」
「金利はしばらくの間、現在の水準にとどまる必要がある」
「インフレに対する勝利を宣言するのは時期尚早」
20日00:26 バーキン米リッチモンド連銀総裁
「(利下げの可能性について)予想通りインフレ率が低下すればFRBは適切に対応する」
20日03:24 ボスティック米アトランタ連銀総裁
「FRBは驚異的な前進を遂げたものの、インフレはまだ続くだろう」
「労働市場の逼迫は今後も続くと予想」
「政策には毅然とした態度が必要」
※時間は日本時間
<ドル円=12/18高値を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売りシグナルが点灯中。しかし3手連続で陽線を形成し、転換線を上回って推移しており、続伸の可能性が示唆されている。
本日は143.78円まで低下してきた転換線を念頭に置き、18日高値を支持に押し目買いスタンスで臨みたい。
レジスタンス2 145.99(12/13高値)
レジスタンス1 144.96(12/19高値)
前日終値 143.84
サポート1 143.16(12/18高値)
サポート2 142.25(12/19安値)
<ユーロドル=横ばいの転換線を支持に押し目買い>
陽線引け。転換線は基準線を下回ったが、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで買いシグナルが優勢な展開。2手連続陽線で転換線を上回って引けており、続伸の可能性が示唆されている。ただし、ダブル・トップ(1.1017ドル・1.1009ドル)の可能性には留意しておきたい。
本日は1.0860ドル台で横ばいの転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 1.1047(7/28高値)
前日終値 1.0981
サポート1 1.0867(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロ円=上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、雲の下で引けているため三役逆転の強い売りシグナルが点灯している。しかし、2手連続陰線で転換線を上回って引けており、続伸の可能性が示唆されている。
本日は156円前半まで上昇してきた転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 158.77(日足一目均衡表・基準線)
前日終値 157.95
サポート1 156.22(日足一目均衡表・転換線)
<豪ドル円=96円後半まで上げてきた雲の上限を意識>
大陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、雲を上回って引けているものの売りシグナルが優勢な展開となっている。しかし、3手連続陽線で雲を上抜けし、転換線も上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。
本日は96.80円台まで水準を上げてきた雲の上限を意識し、押し目買いスタンスで臨みたい。支持水準としては96.17円の基準線を想定し、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 98.54(11/24高値)
前日終値 97.27
サポート1 96.17(日足一目均衡表・基準線)
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