14日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは4日続伸。終値は1.0993ドルと前営業日NY終値(1.0874ドル)と比べて0.0119ドル程度のユーロ高水準だった。欧州中央銀行(ECB)はこの日の定例理事会で、市場予想通り政策金利を4.50%で据え置くことを決めたと発表。声明では「金利水準は十分に長い期間維持される必要がある」「インフレは短期的には一時上昇する可能性がある」と指摘した。
また、ラガルドECB総裁は理事会後の会見で「経済成長へのリスクは依然下方向に傾いている」としながらも、「絶対に警戒を引き下げるべきではない」「利下げについては全く議論しなかった」などと発言した。
ECBが利下げの可能性を示唆せず、逆に物価上昇圧力は依然として強いと主張したことで全般ユーロ買いが広がると、3時前に一時1.1009ドルと11月29日以来の高値を付けた。なお、前日にはパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「12-13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げについて議論をした」と認めていた。
ドル円は3日続落。終値は141.89円と前営業日NY終値(142.89円)と比べて1円程度のドル安水準だった。アジア時間に一時140.97円と7月31日以来の安値を付けたものの、NY市場では下げ渋る展開に。11月米小売売上高や前週分の米新規失業保険申請件数が予想より強い内容だったことが分かると一時142.28円付近まで持ち直した。
ただ、米利下げ観測が高まる中、米10年債利回りが一時3.8835%前後と7月27日以来の低水準を付けると、141.40円付近まで押し戻される場面があった。
ユーロ円は3営業日ぶりに反発。終値は156.00円と前営業日NY終値(155.38円)と比べて62銭程度のユーロ高水準。ECBが早期に利下げに動くとの期待が後退すると全般ユーロ買いが優勢となり一時156.06円と本日高値を付けた。
なお、事情に詳しい関係者の話として「ECB当局者は利下げは市場の見込みよりも遅くなるとの見解でほぼ一致した」と伝わった。
本日のドル円相場は、上値が重い展開を予想する。13日にパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「利下げについて議論した」と述べたのに対し、昨日にはラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は「利下げについては全く議論しなかった」、英中銀(BOE)金融政策委員会(MPC)議事要旨では「インフレ率を持続的に2%の目標に戻すために、十分な期間にわたって十分に制限的である必要」、7日に植田日銀総裁は「年末から来年にかけて、一段とチャレンジングになると思っている」と、米国以外は利上げもしくは高金利維持を示唆したことが、ドルの上値を圧迫するだろう。
円高が一辺倒に進んだ感があるが、1日を通しクロス円を見ると、オセアニア通貨・対円はほぼ横ばい、欧州通貨・対円は円安の動きになっている。ドル円だけが過度に円高に動いていないこともあり、ドル高の巻き戻しが対円でも入りやすい。また、米長期債利回りが7月27日以来の水準まで低下したが、同日のドル円は141円前半を頭に138.77円まで弱含んでいることを考えると、まだドル円は下値を探る余地がありそうだ。
ドル安だけでなく、週末リスクが円買いを促す可能性もある。特にリスク要因となるのが、週末の報道リスク。昨年も週末土曜日の12月17日に、日経新聞朝刊が「政府、日銀との共同声明見直し論」と報道し、2%の物価上昇目標の達成時期や範囲をより柔軟にし、表現の一部を修正との内容を報じた。18-19日に行われる日銀政策決定会合を前にし、今週末も同様にマイナス金利政策解除に向けたことを報じる可能性もあるのが円高要因になる。仮にそのような報道がない場合でも、円が売られる要素にはならないことで、週末を前にリスクヘッジとしてはドル売り・円買いの方が強くなりそうだ。
なお、本日のアジア時間では本邦から10月第三次産業活動指数、中国から11月鉱工業生産、同月小売売上高が発表される。中国の景気停滞が懸念されていることで、中国の経済指標はネガティブサプライズには要警戒となりそうだ。
※時刻表示は日本時間
<国内>
○13:30 ◇ 10月第三次産業活動指数(予想:前月比0.1%)
<海外>
○09:01 ◇ 12月英消費者信頼感指数(Gfk調査、予想:▲22)
○11:00 ◎ 11月中国鉱工業生産(予想:前年比5.6%)
○11:00 ◎ 11月中国小売売上高(予想:前年比12.5%)
○16:45 ◇ 11月仏消費者物価指数(CPI)改定値(予想:前月比▲0.2%/前年比3.4%)
○17:15 ◎ 12月仏製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値(予想:43.3)
○17:15 ◎ 12月仏サービス部門PMI速報値(予想:46.0)
○17:30 ◎ 12月独製造業PMI速報値(予想:43.2)
○17:30 ◎ 12月独サービス部門PMI速報値(予想:49.8)
○18:00 ◎ 12月ユーロ圏製造業PMI速報値(予想:44.6)
○18:00 ◎ 12月ユーロ圏サービス部門PMI速報値(予想:49.0)
○18:00 ◎ ホルツマン・オーストリア中銀総裁、講演
○18:30 ◎ 12月英製造業PMI速報値(予想:47.5)
○18:30 ◎ 12月英サービス部門PMI速報値(予想:51.0)
○19:00 ◇ 10月ユーロ圏貿易収支(予想:季節調整前なし/季節調整済100億ユーロの黒字)
○19:00 ◎ ラムスデン英中銀(BOE)副総裁、講演
○19:30 ◎ ロシア中銀、政策金利発表(予想:16.00%に引き上げ)
○20:00 ◎ センテノ・ポルトガル中銀総裁、記者会見
○20:20 ◎ バスレ・スロベニア中銀総裁、カジミール・スロバキア中銀総裁、ミュラー・エストニア中銀総裁、シクルーナ・マルタ中銀総裁、シムカス・リトアニア中銀総裁、ブイチッチ・クロアチア中銀総裁、講演
○22:15 ◇ 11月カナダ住宅着工件数(予想:25.71万件)
○22:30 ◇ 10月カナダ卸売売上高(予想:前月比▲1.1%)
○22:30 ◇ 10月対カナダ証券投資
○22:30 ◎ 12月米ニューヨーク連銀製造業景気指数(予想:2.0)
○23:15 ◎ 11月米鉱工業生産(予想:前月比0.3%)
◇ 設備稼働率(予想:79.1%)
○23:45 ◎ 12月米製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値(予想:49.3)
○23:45 ◎ 12月米サービス部門PMI速報値(予想:50.6)
○23:45 ◎ 12月米総合PMI速報値(予想:50.5)
○16日02:25 ◎ マックレム・カナダ銀行(中央銀行、BOC)総裁、講演
○16日06:00 ◎ 10月対米証券投資動向
○南アフリカ(希望の日、祝賀・団結の日)、休場
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
14日17:37 スイス国立銀行(中央銀行、SNB)声明
「インフレ圧力はわずかに低下したが、不確実性は依然として高い」
「SNBはインフレの推移を引き続き注意深く監視していく」
「インフレが中期的に物価安定と一致する範囲内にとどまるように、必要に応じて金融政策を調整する」
14日18:17 ジョーダン・スイス国立銀行(スイス中銀、SNB)総裁
「SNBはもはや通貨売りに注力していない」
「インフレは今後数カ月で上昇する可能性がある」
「インフレの上振れと下振れリスクの評価はバランスがとれている」
14日21:06 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
「MPCは6対3で5.25%の据え置きを決定」
「最新の予測ではCPIインフレ率は2025年末までに2%の目標に戻り、その後は目標を下回る」
「現在の金融政策スタンスは制限的」
「持続的なインフレ圧力と経済全体の回復力の兆候を引き続き注意深く監視していく」
「中期的にインフレ率を持続的に2%の目標に戻すために、十分な期間にわたって十分に制限的である必要がある」
「委員会は金融政策を長期間にわたって制限的にする必要がある可能性が高いと引き続き判断している」
「より持続的なインフレ圧力の証拠があれば、金融政策のさらなる引き締めが必要となるだろう」
14日21:54 ベイリーBOE総裁
「金利がピークアウトしたとは言えない」
「近く利下げがあるか憶測するのは時期尚早」
14日22:20 欧州中央銀行(ECB)声明
「金利水準は十分に長い期間維持される必要がある」
「インフレは短期的には一時的に上昇する可能性」
「2024年のインフレ予想を+3.2%から+2.7%に下方修正」
「2024年上半期もPEPP再投資を継続」
「PEPP再投資のペースは来年下期に減少、年末には停止」
「2024年のGDP見通しを+1.0%から+0.8%へ下方修正」
14日22:56 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁
「労働市場は引き続き経済を支えている」
「サービス活動は今後数カ月で緩和する見通し」
「外需の抑制が経済の重しに」
「景気低迷が労働者の需要を減退させている」
「12月のインフレはベース効果で加速する可能性が高い」
「EUの財政枠組み改革に速やかに同意しなければならない」
「インフレは2024年にさらに緩やかに鈍化する見通し」
「経済成長へのリスクは依然下方向に傾いている」
「インフレの下振れリスクには経済の減衰も含まれる」
「リスクには地政学、世界経済の脆弱性が含まれる」
「ECBは時間に依存せず、データに依存する」
「インフレ目標への道筋は以前より平坦」
「絶対に警戒を引き下げるべきではない」
「現在得られている賃金データは低下していない」
「タイムリーな賃金データも必要」
「より明確な把握には賃金データが必要」
「利下げについては全く議論しなかった」
「PEPPのスケジュールは金利とは無関係」
「PEPP再投資の停止は全員が了承した」
15日04:02 メキシコ中銀声明
「金利はしばらくの間現在の水準に維持する必要がある」
「今回の決定は全会一致」
「2023年第4四半期のインフレ率は4.4%になると予想」
「2024年第4四半期のインフレ率は3.5%になると予想」
「2025年第4四半期のインフレ率は3.1%になると予想」
※時間は日本時間
<ドル円=強弱の分かれめ200日線回復したい>
下影陰線引け。142円半ばで推移する200日移動平均線を下抜けた。一時140.97円と7月31日以来、4カ月半ぶりの安値をつけている。
相場の強弱を判断する際の分かれめ200日線142.52円を割り込んで推移するネガティブな状況。まずは同線を回復したい。ただ、さらに戻すことができても低下が見込まれる一目均衡表・転換線144.24円が上伸を阻むとみる。
レジスタンス1 142.65(12/13安値)
前日終値 141.89
サポート1 140.97(12/14安値)
サポート2 139.99(ピボット・サポート2)
<ユーロドル=堅調だが調整が荒めになるリスクに注意>
大陽線引け。目先の抵抗になると考えられた21日移動平均線をこなして上伸した。一時1.1009ドルと、直近の上値の節目となる11月29日高値1.1017ドルの上値抜けをうかがう状況となった。気をつけなければならないのは急上昇したため現水準付近に支えとなりそうが主だった日足テクニカル指標が乏しい点。調整がやや荒めになるリスクには注意したい。
レジスタンス1 1.1065(8/10高値)
前日終値 1.0993
サポート1 1.0926(12/14レンジ38.2%水準)
<ポンド円=200日線を割り込まず大きく反発>
下影陽線引け。7日に大きく下振れた際の安値178.67円を下抜けた。10月3日以来の安値178.36円をつけている。ただ、178円前半で上昇中の200日移動平均線手前となる同水準で下げ渋り、181円まで大きく反発。陽線となっており目先の下値をいったん確認した格好となる。181.76円前後で推移する5日線や一目均衡表・転換線182.27円を試す展開も期待できよう。
レジスタンス1 181.76(5日移動平均線)
前日終値 181.13
サポート1 180.13(12/14レンジ61.8%水準)
<NZドル円=雲や90日線を一時上回るも失速>
上影小陰線引け。一目均衡表・雲や90日移動平均線の上抜けを試し、88.79円まで戻す場面もあった。しかし結局は雲を下回る水準へ押し返されてNYを引けている。戻すにしても88.38円前後で上昇する90日線前後の緩やかなペースにとどまるか。
レジスタンス1 88.79(12/14高値)
前日終値 88.06
サポート1 87.56(11/1安値)
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