週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
◆ドル円、市場の流動性低く上下に振れやすい
◆米雇用統計をはじめ、米重要指標が目白押し
◆ユーロドル、インフレ鈍化が意識されて上値は限定的
ドル円 146.00-150.00 円
ユーロドル 1.0650-1.1050 ドル
ドル円は米感謝祭休暇後も市場の流動性が戻らないなか、引き続き荒い相場展開が想定される。今週は米感謝祭が明けても、クリスマスや年末を控えて市場参加者は依然として少なく、短期勢を中心とした動きとなった。11 月28 日にはタカ派とされるウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事が「数カ月先に政策金利を引き下げる可能性を示唆した」ことが米金利低下・ドル安につながったが、ウォラー氏は利下げの時期について明確にしたわけではなく、講演での質疑応答で利下げの条件を問われた際に、あくまでも「インフレが低下し続ければ」という条件付きで発言したわけであり、市場が来年初旬での利下げを急速に織込んでしまったことは明らかに過剰な期待によるものだろう。その後には、バーキン米リッチモンド連銀総裁やデイリー米サンフランシスコ連銀総裁などが、利下げの議論すら否定しているあたり、市場と当局との金利見通しに対するかい離は広がるばかりだ。来週も、米国の早期利下げ観測を掲げて短期勢が売り仕掛ける場面はありそうだが、日米金融政策の根本的な違いは何ら変わってはおらず、なおかつドル円の買いポジションがここ最近の下落により解消されていることもあり、過剰な動きの後は上方向に再度向かう可能性もあるだろう。
なお、来週は5 日に10 月JOLTS 求人件数や11 月ISM 非製造業景況指数、6 日に11 月ADP 雇用統計、8 日に11 月雇用統計が発表されるなど、重要指標が目白押し。年末相場で市場の流動性が低下しているなかで、特に週末の11 月雇用統計の結果次第では想定以上に相場が動く可能性もあるため、十分警戒する必要があるだろう。
ユーロドルは頭の重い展開が想定される。11 月29 日に発表された11 月独消費者物価指数(CPI)が前年比で2021 年6 月以来の低水準を付けるなど各国のインフレ鈍化が改めて確認された。欧州中央銀行(ECB)がインフレ指標の結果を待ちながら利上げに対して様子見姿勢を示すなかで、一段と利上げ終了の観測が高まっている。ユーロドルは米長期金利が足もとで数カ月ぶりの低水準を付けていることは下支え要因だが、上値も限定的となりそうだ。
ドル円は、週明けから米長期金利の低下を背景に売りが先行。ウォラーFRB 理事のハト派的な発言で下落が加速すると一時146.67 円と9 月12 日以来の安値を付けた。もっともその後、米長期金利が上昇すると一転してショートカバーが進み148.51 円まで切り返すなど荒い値動きとなった。ユーロドルは上値が重かった。週前半は1.09 ドル台半ばで推移していたが、米金利低下を受けて買いが強まり、1.1017 ドルと8 月10 日以来の高値を更新。ただその後は独インフレ指標が予想を下回るなど欧州のインフレ鈍化が意識され、1.0879 ドルまで押し戻されている。(了)
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
◆豪ドル、RBA の金融政策に注目
◆NZ ドル、RBNZ は追加利上げの可能性に言及
◆ZAR、対円では下値リスク拡大の可能性に注意
豪ドル円 96.00-100.00 円
南ア・ランド円 7.50-8.00 円
豪ドルは神経質な展開が予想される。来週の注目は5 日に開催される豪準備銀行(RBA)理事会。市場予想は4.35%での金利据え置きが大勢となっており、同時に公表される声明文の内容がポイントになるだろう。前月分の議事要旨では「インフレを巡るスタッフ予想からみると利上げはあと1-2 回となる見通し」との言及があったほか、その後の講演でブロックRBA 総裁が広範に渡るインフレについて言及するなど、RBA のインフレ警戒姿勢は高まったままとなっている。11 月29日に公表された10 月消費者物価指数(CPI)は市場予想を下回る結果となったが、単月のデータでRBA の姿勢が大きく変化する可能性は低く、声明文から来年以降の追加利上げを含めた金融政策方針のヒントを探りたい。
その他では5 日に7-9 月期経常収支、6 日に7-9 月期国内総生産(GDP)、7 日に10 月貿易収支などが発表予定。7-9 月期GDP などの結果を受けて豪ドル相場が動意づく可能性もあり、注意しておきたい。
隣国のニュージーランドでは11 月29 日に開催された年内最後のNZ 準備銀行(RBNZ)金融政策決定会合で、政策金利の据え置きが決定された。ただ、声明文では「インフレ率は引き続き高過ぎる」「金融政策委員会は持続するインフレ圧力をなお警戒している」などと強いインフレ警戒姿勢が示され、来年に追加利上げを行う可能性についても言及された。市場では来年前半にも利下げに転じるとの見方が広がっていただけに大きく方針転換を余儀なくされた格好。当面はNZ ドル相場の下支え要因として意識されるだろう。なお、来週は8 日に7-9 月期製造業売上高が発表される予定となっているが、相場への影響は限られそうだ。
南アフリカ・ランド(ZAR)はさえない動きが続きそうだ。来週は5 日に7-9 月期GDP、7 日に10-12 月期南ア経済研究所(BER)消費者信頼感指数や7-9 月期経常収支などが公表予定。GDP などの結果に対して相場が反応する可能性はあるものの、基本的には今週と同様にドル相場など外
部要因に振らされることになるだろう。特に対円では、ドル円の下落につれて、年初来高値をつけた11 月16 日から調整色が強まっており、一段の下値リスクについても懸念するべき局面にある。7 月から何度か下値を支えてきた7 円台半ばの水準をしっかりと下抜けると、さらに下値余地が拡大することになるため注意しておきたい。
豪ドルは全般にドル売りが進んだ流れに沿って対ドルでは買い先行となったものの、11 月29日に公表された10 月CPI が予想を下回った影響もあり、その後は伸び悩んだ。また、対円でもドル円の下落につれて上値の重い動きが続いた。
ZAR は弱含んだ。対ドル・対円でともに頭の重い動きとなり、対円では週央以降に下げ幅を拡大。先月後半からの上昇分をほぼ吐き出す格好となった。(了)__
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
◆ポンド、市場と当局との認識の狭間で右往左往
◆加ドル、週初までは雇用統計を受けた値動き
◆加ドル、政策金利決定後のBOC 声明に注目
ポンド円 184.50-190.50 円
加ドル円 107.00-111.00 円
ポンドは、英金利先安観を維持する短期金融市場と低下期待へのけん制を強める英金融当局との狭間で右往左往させられる展開となりそうだ。市場は、来夏の英中銀金融政策委員会(MPC)による利下げを完全に織り込み済み。インフレ率が想定以上に鈍化したことを受け、来春から緩和開始との見方が広まったユーロ圏ほどではないが、市場ではいずれ英金利は下げざるを得ないという思惑に傾いている。
一方で、先週末から今週にかけても英MPC メンバーから利下げを否定する発言が相次いだ。一時は緩和観測を受け入れたかに見えた英中銀チーフエコノミストでもあるピル委員は「緩和する余地はない」と発言。ハスケル委員も「多数が予想するよりも長期に、金利は高く維持される必要がある」とタカ派色を濃くした。そして、自身を現実主義者と述べたベイリー中銀総裁もまた、「利下げを議論する段階ではない」という従来の考えを繰り返した。来週は相場を動意付けるような英経済指標も予定されておらず、今年最後の英MPC を翌週に控えて思惑が交錯する週となりそうだ。
加ドルは、1 日に発表される11 月雇用統計の結果を受けた動きが来週の週初まで持ち越されることになりそうだ。今週発表された7-9 月期国内総生産(GDP)が前期比年率で-1.1%と小幅プラスの市場予想から下振れており、雇用統計も弱い結果に対してより敏感に反応しそうだ。
加ドルの来週のメインイベントは、カナダ中銀(BOC)が6 日に開く金融政策決定会合。政策金利については5.00%で据え置きが大方の見通しとなっている。予想通りであれば3 会合連続の据え置きとなる。市場の関心は、足もとでインフレ鈍化が確認された後の声明内容だろう。前回会合で示された「物価安定に向けた進展が遅れており、インフレリスクの高まりへの懸念」や、今後の政策金利について「必要に応じてさらに引き上げる用意がある」との意向に変化があるか注目したい。なお、マックレムBOC 総裁は先週の講演で、「インフレはまだ高過ぎる」としながらも「金利はピークに達した可能性がある」との見解を表明。また、「今後数四半期の経済は弱い」との見通しも示しており、BOC がハト派寄りに傾く可能性には注意しておきたい。
ポンドは対円では弱含み、188 円半ばから186 円前半まで下落した。売り先行のドル円に追随し、弱いユーロ圏インフレ指標を受けて下値を広げたユーロ円につれた面もあった。ポンドドルはドル安の流れに沿って買いが先行。英当局者のタカ派発言も支えに1.27 ドル前半まで上げ幅を拡大した。ただ、週後半にはユーロドルに引きずられて1.26 ドル付近まで上値を切り下げた。
加ドルも対円では売りが先行し、109 円後半から108 円手前まで下落。しかし週後半に109 円半ばまで切り返す展開。カナダGDP は低調だったが、すでに売られ過ぎていたため買い戻し優勢となった。対ドルでは1.35 加ドル半ばまで加ドル高が進行した。(了)
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