週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
◆ドル円、政府・日銀の介入警戒感が高まるものの上値期待も根強い
◆CPI をはじめ、米重要指標が目白押し
◆ユーロドル、方向感が定まりづらい
ドル円 148.00-153.00 円
ユーロドル 1.0450-1.0800 ドル
ドル円は、政府・日銀による介入警戒感が高まるものの、円に対する根強い先安観から底堅い展開が続きそうだ。
今週は、下値を切り上げる展開となった。10 月31-1 日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)やパウエル米連邦準備理事会(FRB)の定例記者会見でハト派的な見解が示されたほか、3 日の10 月米雇用統計が低調な内容だったことでドル売りを仕掛けた向きが反対売買を余儀なくされることに。海外短期筋のショートカバーのみならず、市場では「需給関係から本邦実需勢の執拗なフローが出ていたようだ」との声も聞かれており、改めて下サイドでは買い意欲が旺盛であることが確認できた。
来週の注目イベントとしては、14 日の10 月米消費者物価指数(CPI)をはじめ、米重要指標が目白押しとなっている。ただ、次回12 月のFOMC では金利据え置きがほぼ織り込み済みとなっており、予想と余程の乖離がない限りは金利見通しに変化は見られないだろう。とはいえ、結果次第では足元で乱高下が続く米長期金利が動意づく可能性は高く、ドルは荒い値動きとなるだろう。また、ドル円は再び151 円台と政府・日銀による介入警戒感がかなり意識される水準に戻ってきているため、来週以降の政府要人からの発言には注意が必要だろう。神田財務官が1 日に介入を含めた準備状況を問われた際に「スタンバイだ」と述べている通り、ドル円が上値を試した局面では、いつ介入が実施されてもおかしくはない。とはいえ、押し目買い意欲が全く衰えない中でたとえ介入で急落したとしても、すぐに買い戻しが入ることも想定しておくべきだろう。
ユーロドルは、米長期金利次第も方向感を見出しづらい展開となりそうだ。米利上げ観測の後退で下値は堅いものの、対円主導でドル高が根強いことが上値を抑えている面はある。一方で、ユーロ円が15 年ぶりの高値を更新し続けていることも支えとなっているため、来週は上下に振れながらも一方的な展開にはなりづらいかもしれない。
ドル円は、週明けから堅調に推移した。米長期金利が上昇したことが支えとなったほか、先週のFOMC や米雇用統計後に売っていた向きの反対売買も目立ち、週末まで緩やかながらも強い地合いを継続。植田日銀総裁が金融緩和方針を継続する姿勢を示したことも買いにつながり、一時151.38 円まで上値を伸ばしている。
ユーロドルは上値が重い展開となった。週明けこそ一時1.0756 ドルと9 月13 日以来の高値を付けたが、その後は全般ドルの買い戻しが強まった流れに沿って1.0659 ドルまで下押しした。
(了)
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
◆豪ドル、RBA は5 会合ぶりに利上げもタカ派姿勢は弱まったとの見方
◆豪ドル、今回が最後の利上げとの思惑浮上
◆ZAR、国営企業の問題が経済成長を大きく圧迫
豪ドル円 94.00-97.50 円
南ア・ランド円 7.80-8.20 円
豪ドルは弱含む展開が予想される。豪準備銀行(RBA)は今週に開催された金融政策決定理事会で政策金利を現行の4.10%から4.35%へと引き上げることを決定。5 会合ぶりに追加利上げに踏み切った。足もとでインフレ統計が予想を上回っていたことに対処した格好となったが、声明文では今後の金融政策について「金融政策をさらに引き締める必要があるかどうかは、データとリスク評価次第」と言及。前回(10 月)の声明文では「金融政策のさらなる引き締めが必要になる可能性がある」としていたため、市場では「中銀のタカ派姿勢は弱まった」として今回が最後の利上げになるとの思惑も浮上した。
豪3 年債利回りはRBA の金融政策公表後に低下基調を辿っており、短期金融市場でも先行きの利上げ織り込み度は低下。豪州の金利先高観が後退するなか、豪ドル相場の重しとして意識されるだろう。
なお、来週は豪州から14 日に11 月ウエストパック消費者信頼感指数や10 月NAB 企業景況感指数、15 日に7-9 月期賃金指数、16 日に10 月雇用統計などの発表が予定されている。特に賃金インフレの圧力については確認しておく必要があり、豪ドル相場に影響を及ぼす可能性が高いだろう。
隣国のニュージーランドでは17 日に7-9 月期卸売物価指数(PPI)が発表される。29 日にはNZ準備銀行(RBNZ)による年内最後の金融政策決定会合が控えているが、その前の物価統計とあって注目を集めることになりそうだ。なお、先月公表された同四半期の消費者物価(CPI)は市場予想を下回る結果となっている。
南アフリカ・ランド(ZAR)は上値の重い動きとなりそうだ。南ア政府が1 日に発表した中期予算案は海外投資家などから一定の評価を受けたものの、国内問題は依然として山積み。国営電力会社エスコムは今後5 年間の見通しに関するレポートの中で、電力負荷制限がさらに増加し大幅な発電不足が発生する可能性が高いと述べた。また、国営輸送会社トランスネットは今週に返済期限を迎えた44 億ランドの債務を繰り越すことで合意したが、来年3 月に再び返済期限を控えて政府に支援を要請している。経済成長を大きく圧迫している国営企業の問題は、中長期的なZAR売り材料として意識されるだろう。来週は14 日に7-9 月期失業率、15 日に9 月小売売上高の発表が予定されており、こちらにも注目しておきたい。
豪ドルは弱含み。RBA は7 日に5 会合ぶりの利上げを決めたが、市場はタカ派姿勢が後退したと受け止め、その後は豪金利の低下とともに対ドル・対円で豪ドル売りが進んだ。ZAR もさえない動き。ZAR 円は週初に年初来高値を更新する場面があったものの、その後は全般にドル高が進んだことに伴い、対ドル主導で戻り売りに押された。(了)
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
◆ポンド、英賃金データや10 月CPI に注目、当局者はインフレの急低下を示唆
◆ポンド、利下げ思惑が重しに
◆加ドル、労働市場の縮小で金利低下への思惑も
ポンド円 182.00-188.00 円
加ドル円 107.50-111.50 円
来週のポンドは、英国の賃金データや消費者物価指数(CPI)が注目となる。特に、CPI は次回の英中銀会合(12 月4 日に結果公表)前では最後の主要インフレ指標であり、金融政策委員会(MPC)の決定に大きな影響を与えそうだ。
14 日発表の雇用関連指標では、7-9 月期の「ボーナスを除く平均賃金」が材料視される。前回は前年比7.8%上昇と、5-7 月期(統計開始以来で最も高い水準を記録)からは僅かに鈍化した。もっとも、「賃金の伸びはまだ大き過ぎる」とベイリー英中銀(BOE)総裁は述べており、先行きも楽観視していない。一方、15 日の10 月CPI は大幅な低下が見込まれている。英中銀チーフエコノミストであるピルMPC 委員は先日、「前回9 月分の前年比6.7%上昇から5%割れまで急低下する」との見通しを示した。エネルギー料金の下落がインフレ減速に寄与するもようだ。ベイリーBOE 総裁も言い続けてきた「顕著なインフレ低下」が現実味を帯びてきたなかで、短期金融市場は来年の英利下げを着実に織り込んできている。政策金利を5.25%で据え置きながらも、MPC 委員の三分の一が利上げを主張した2 日会合後とは市場の雰囲気は変わってきた。ベイリー総裁は時期尚早としているが、政策の緩和転換への思惑がどこまで高まるのか注視したい。
加ドルも、来年以降のカナダ中銀(BOC)金融政策に対する織り込み度を睨みながら上下する展開となりそうだ。BOC は、先月の会合で2 会合連続となる政策金利5.0%での据え置きを全会一致で決定したが、先日公表された議事要旨では、「追加利上げが必要となる可能性」も一部で指摘されていたことが明らかになった。ただ、一方で市場では加金利が先行き低下するとの見方を強めている。米国の金利低下が1 つの要因となっているほか、米国同様にカナダも10 月雇用統計が低調だったことも影響している。失業率は5.7%と昨年1 月以来の水準を記録した。新規雇用者数も前回からの下振れ予想値にも届かなかない悪い数字だった。
来週は、複数の経済指標が発表されるものの強い動意に繋がりそうな指標はない。そのため米金利や大きく売られた原油相場の動向を見極めながらの取引となりそうだ。特に、産油国の減産が続くなか北半球が冬を迎え、「石油需給の逼迫が進む」と言われながらも急落した原油先物には要警戒。原油価格の戻りが鈍いようなら、加ドルは買いづらくなりだろう。
ポンドは対ドルでは1.24 ドル前半、対円でも186 円手前まで買いが先行。前週末の低調な米雇用統計を受けた米長期金利の低下によるドル売り、金利低下を好感した株高が円売りに繋がった。もっとも、一巡後は強まる英金利先安観を受けて1.22 ドル前半まで反落し、対円でも伸び悩んだ。加ドルも週明けは対ドルで1.36 加ドル前半、対円では109 円後半まで加ドル高が進んだ。一巡後は加金利先安観と原油安を背景に、1.38 加ドル前半まで加ドル安に振れた。対円でも上昇が一服し、109 円台で上下する展開が続いている。(了)
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