1日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反落。終値は150.95円と前営業日NY終値(151.68円)と比べて73銭程度のドル安水準となった。10月ADP全米雇用報告や10月米ISM製造業景気指数が予想より弱い内容だったことが分かると、米長期金利が大幅に低下し円買い・ドル売りが先行。米財務省が発表した四半期定例入札の規模が予想を下回ったことも金利低下につながり、ドルの重しとなった。NY午後に入り、米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果やパウエルFRB議長の会見内容が伝わると、米長期金利がさらに低下したため全般ドル売りが活発化。4時30分過ぎに一時150.66円と日通し安値を更新した。
FOMCはこの日、市場予想通りFFレート誘導目標を5.25-5.50%に据え置くことを決めたと発表。声明では「委員会の目標の達成を妨げる可能性があるリスクが生じた場合、委員会は金融政策の姿勢を適切に調整する準備がある」との姿勢を維持した。パウエル議長は会見で「政策スタンスは制限的、引き締めの完全な影響はまだ感じられない」「これまでの進展を考慮し、FOMCは慎重に進んでいる」「FOMCは次回会合の行動についてまだ決定していない」「(利上げ)サイクルの終わりに近づいている」などと発言した。
市場では「想定ほどタカ派的な内容ではなかった」「2回連続で利上げを見送りは、12月も金利据え置きの可能性を示唆。そうなればFRBの利上げサイクルが終了したことを意味する」との声が聞かれた。FF金利先物市場ではFRBは利上げを終了し、来年6月までに利下げを開始するとの見方が強まった。
ユーロドルは小幅ながら続落。終値は1.0570ドルと前営業日NY終値(1.0575ドル)と比べて0.0005ドル程度のユーロ安水準だった。ユーロ豪ドルやユーロNZドルなど一部ユーロクロスの下落につれた売りが先行すると一時1.0517ドルと日通し安値を付けたものの、売り一巡後は買い戻しが優勢に。低調な米経済指標やFOMCの結果を受けて米長期金利の指標である米10年債利回りが一時4.7320%前後まで大幅に低下したことがドル売りを誘った。5時過ぎには1.0576ドル付近まで持ち直した。
ユーロ円は3営業日ぶりに反落。終値は159.58円と前営業日NY終値(160.41円)と比べて83銭程度のユーロ安水準。ドル円やユーロドルが下落した影響を受けて3時30分過ぎに一時159.07円と日通し安値を付けた。市場では「神田真人財務官が為替介入を含む準備状況について『スタンバイ』と述べたことを受けて、円買いが入りやすかった」との声も聞かれた。
ただ、引けにかけては下げ渋った。ユーロドルの持ち直しに伴う円売り・ユーロ買いが出て159.62円付近まで下値を切り上げた。
本日のドル円は、引き続き円買い介入の警戒高いなかで神経質な相場展開となりそうだ。
昨日に円売りの勢いが弱まったのは、米雇用指標の結果とパウエルFRB議長が「(利上げ)サイクルの終わりに近づいている」などと発言し、米金利が低下したことが主な背景。決して円安基調が変わったというわけではない。
むしろ、昨日の登庁時に神田財務官が「(為替介入)スタンバイです」と述べたことをで市場には介入期待が高まり、円買いポジションが拡大したのではないか。31日のドル高値(151.72円)や昨年10月に1990年以来に付けた高値(151.95円)を上抜けた場合には、円ロングのストップロスがトリガーされ、更にドル買いが進むリスクもある。
仮に1990年以来のドル高・円安水準までドル円が上昇した場合、本邦当局による介入の発射地点が高くなり、介入を実施しても押し下げ幅が限られる危険性もあるだろう。当局者の口先介入が持ち高を偏らせ、介入がない場合は更に円売りを加速させる悪循環になりつつある。
ただし、本日も引き続き介入警戒感が高いことは変わらない。為替介入の可能性が高い理由は複数ある。
1つ目は、明日3日は東京市場が文化の日で祝日休場ということ。過去に東京が祝日に介入を行ったことはあり、可能性がある水準では邦銀・外銀問わず休日出勤で介入を実行する体制を整えている。しかしながら間隔が空いたあとの介入は、市場へのメッセージを伝える側面もあるため、東京不在時の介入の可能性は若干低くなる。為替ディーラーは休日出勤をするものの、それ以外の部署にまたがって煩雑な事務作業等もあることで休日の大規模介入を行うのは難しいか。
また、明日は10月の米雇用統計の発表も控えており、仮に強い結果となった場合には米金利上昇・ドル買いの勢いが増し、上述の介入の発射地点が高くなり、介入の効果が限定されることにもなる。
2つ目の要因は政治的なもの。本日閣議決定する経済対策は、現時点で報道されている限り全く評価されておらず、岸田政権に対する支持率の更なる低下が予想されている。経済番組だけではなく、一般のニュース報道ですら円安による景気悪化が昨日も取り上げられていた。経済対策では補えない支持率の凋落をカバーする意味で、円安阻止という手も加えてくる可能性もあるか。
本日は他のアジア・オセアニア諸国からも9月の豪貿易収支以外は注目すべき経済指標等の発表もないことで、東京時間の市場動向は円の動きが左右することになるだろう。
※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◇ 10月マネタリーベース
○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)
<海外>
○09:30 ◇ 9月豪貿易収支(予想:94.00億豪ドルの黒字)
○16:30 ◎ 10月スイス消費者物価指数(CPI、予想:前月比0.1%)
○17:00 ◇ 10月スイスSECO消費者信頼感指数(予想:▲25.0)
○17:50 ◎ 10月仏製造業PMI改定値(予想:42.6)
○17:55 ◎ 10月独雇用統計(予想:失業率5.8%/失業者数変化1.50万人)
○17:55 ◎ 10月独製造業PMI改定値(予想:40.7)
○18:00 ◎ 10月ユーロ圏製造業PMI改定値(予想:43.0)
○18:00 ◎ ノルウェー中銀、政策金利発表(予想:4.25%で据え置き)
○20:00 ◎ レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演
○20:30 ◇ 10月米企業の人員削減数(チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社調べ)
○21:00 ☆ 英中銀(BOE)、政策金利発表(予想:5.25%で据え置き)
○21:00 ☆ 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
○21:30 ◎ ベイリーBOE総裁、記者会見
○21:30 ◇ 7-9月期米非農業部門労働生産性・速報値(予想:前期比4.1%)
○21:30 ◇ 7-9月期米単位労働コスト・速報値(予想:前期比0.7%)
○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:21.0万件/180.0万人)
○23:00 ◎ 9月米製造業新規受注(予想:前月比2.4%)
○3日04:00 ◎ オアNZ準備銀行(RBNZ)総裁、講演
○ブラジル(万聖節)、メキシコ(死者の日)、休場
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
1日08:01 鈴木財務相
「円安について、昨日の日銀会合と結び付けて何か申し上げることはない」
「(為替)動向は色々な面がある」
1日08:05 神田財務官
「一方的で急激な動きに懸念」
「過度な変動にあらゆる手段で対応」
「足もとの動きで一番大きいのは投機」
「ファンダメンタルズと合っていない動きが見られる」
「(為替介入)スタンバイです」
1日11:58
「金利自体が投機の対象、為替の一要素に過ぎない」
「金融政策の具体的なやり方は決定会合が決める、決定を尊重」
「為替、一方的で急激な動きは国民経済に与える悪影響から憂慮」
1日11:10 松野官房長官
「為替相場は安定的に推移することが重要」
「(為替)あらゆる手段を排除せず適切な対応をとる」
「相場水準や介入について具体的見解のコメントを控える」
2日03:00 米連邦公開市場委員会(FOMC)声明
「最近の指標は、経済活動が第3四半期に堅調なペースで拡大したことを示している」
「雇用の増加は年初から鈍化したが依然として堅調で、失業率も低いままだ」
「インフレ率は引き続き高止まりしている」
「米国の金融システムは健全で強固だ」
「家計や企業の金融・信用状況の引き締まりが経済活動、雇用、インフレの重しになる可能性がある」
「これらの影響の程度は引き続き不透明だ。委員会は引き続き、インフレのリスクに大いに注視している」
「委員会は雇用最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す」
「委員会は追加情報と金融政策への影響を引き続き評価する」
「徐々にインフレ率を2%に戻すために適切とみられる追加的な金融政策の引き締めの程度を決めるに当たり、委員会は金融政策の度重なる引き締め、金融政策が経済活動とインフレ率に及ぼす影響の遅れ、および経済と金融の動向を考慮する」
「委員会は、インフレ率を2%の目標に戻すことに強く取り組む」
「金融政策の適切な姿勢を評価するに当たり、委員会は今後もたらされる経済見通しに関する情報の意味を引き続き監視する」
「もしも委員会の目標の達成を妨げる可能性があるリスクが生じた場合、委員会は金融政策の姿勢を適切に調整する準備がある」
「委員会の評価は、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ期待、金融と世界の動向を含む幅広い情報を考慮する」
「今回の金融政策決定は全会一致」
2日03:36 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
「経済活動は急速に拡大」
「政策スタンスは制限的、引き締めの完全な影響はまだ感じられない」
「FRBはインフレ率を2%の目標に引き下げることに強くコミット」
「これまでの進展を考慮し、FOMCは慎重に進んでいる」
「物価の安定がなければ経済は機能しない」
「労働需要は依然として供給を上回っている」
「2%の目標への道のりは長い」
「十分に制限的なスタンスを達成することに尽力」
「金融状況は著しく逼迫している」
「インフレ率2%のスタンスに達したことに自信がない」
「より厳しい条件を継続する必要がある」
「政策が十分に制限的であるとは確信せず」
「名目賃金の伸びは若干の緩和の兆しを示唆」
「FOMCは次回会合の行動についてまだ決定していない」
「我々は長期金利の上昇に注意を払っている」
「利上げ停止後の利上げ再開は困難という考え方を否定」
「現時点では利下げについては全く考えていない」
「委員会は利下げについて検討、協議していない」
「FOMCが問うのは追加利上げの是非」
「世界で地政学的緊張は確実に高まった」
「政府機関の閉鎖は潜在的なリスク」
「物価の安定を回復するには、依然として成長の鈍化と労働市場の軟化が必要になる可能性が高い」
「バランスシートのランオフペース変更を検討せず」
「サイクルの終わりに近づいている」
※時間は日本時間
<ドル円=10/31の61.8%押しは達成、調整終了かを見定め>
陰線引け。151円台で頭を抑えられ、150.70円割れまで下押しした。結果的に昨年10月につけた高値151.95円が抵抗水準として働いたことになる。
下押ししたレベルは大幅上昇した10月31日の上値から61.8%押しを僅かに下回った水準。調整は一旦終了という見方もできるが、更に売り戻されるとすれば、まずは150円前半の日足一目・転換線辺りまでか。
レジスタンス1 152.55(ピボット・ターニングポイント)
レジスタンス1 151.95(2022/10/21高値)
前日終値 150.95
サポート1 150.27(日足一目均衡表・転換線)
サポート2 149.58(日足一目均衡表・基準線)
<ユーロドル=上ヒゲの後の下ヒゲで方向感を探る展開に>
下影小陰線引け。1.0510ドル台まで売りが進むも、10月16日安値1.0507ドルの手前から切り返した。2手連続の陰線引けではあるものの、1.0571ドルで横ばいの一目・基準線付近まで持ち直して終えた。
本日も基準線を睨みながらの取引。先月末の上ヒゲ、昨日の下ヒゲで相場は方向性を探る展開か。1.06ドル前半の転換線を超えると上げ足を速めるかもしれないが、1.0660ドル台の一目・雲の下限辺りでは売り圧力が高まるだろう。
レジスタンス1 1.0665(日足一目均衡表・雲の下限)
前日終値 1.0570
サポート1 1.0496(10/13安値)
<ポンド円=182円台には複数の主要線が控える>
陰線引け。184円台で前日高値の手前から失速し、一時183円割れまで上値を切り下げた。日足一目・雲の上限に支えられて引けにかけて戻すも、3手ぶりの陰線引けとなった。
182円台後半から半ばにかけて複数の主要線が控えており、それら水準が意識された値動きとなりそうだ。182.80円近辺には雲の上限と90日移動平均線、182.57円が転換線、182.40台にも21日移動平均線が位置している。
レジスタンス1 184.37(10/31高値)
前日終値 183.44
サポート1 182.45(21日移動平均線)
<NZドル円=雲の上限、明日には88.40円台まで上昇>
小陰線引け。下影陰線引け。87円半ばまで下落するも、87.60円台の一目・転換線や90日移動平均線を割り込んだところから切り返した。88円前半まで持ち直して終えている。
一目・雲の上限は87.80円台まで上昇し、明日以降は88.40円台まで水準を上げてくる。88.50円で横ばいの基準線とともに注視すべきレベルとなりそうだ。
レジスタンス1 88.92(10/13高値)
前日終値 88.26
サポート1 87.56(11/1安値)
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