31日のニューヨーク外国為替市場でドル円は3営業日ぶりに大幅反発。終値は151.68円と前営業日NY終値(149.10円)と比べて2円58銭程度のドル高水準となった。日銀は今日まで開いた金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を再び柔軟化することを決めたものの、市場では「微修正にとどまった」と受け止めから、終日円安が進んだ。
欧州の取引時間帯である19時には財務省が9月28日-10月27日の為替介入額がゼロだったことを公表。市場で浮上していた10月初旬の政府・日銀による為替介入観測を打ち消す格好となり、円売りを後押しした。NY市場に入ると、7-9月期米雇用コスト指数や8月米ケース・シラー住宅価格指数、10月米消費者信頼感指数など、予想を上回る米経済指標が相次いだことでドル買いが活発化。節目の151.00円を上抜けて、取引終了間際に一時151.72円と昨年10月21日以来約1年ぶりの高値を更新した。
なお、同日の高値151.95円がレジスタンスとして意識されると151.07円付近まで押し戻される場面もあったが、下押しは限定的だった。
ユーロドルは反落。終値は1.0575ドルと前営業日NY終値(1.0615ドル)と比べて0.0040ドル程度のユーロ安水準だった。良好な米経済指標が相次いだことで全般ドル買いが優勢になると、1時30分過ぎに一時1.0558ドルと日通し安値を更新した。市場では「月末のロンドン16時(日本時間1時)のフィキシングに向けたドル買いのフローが観測された」との声も聞かれた。
主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時106.86まで上昇した。
ユーロ円は大幅に続伸。終値は160.41円と前営業日NY終値(158.25円)と比べて2円16銭程度のユーロ高水準。日銀が大規模金融緩和策の大枠維持を決めたことを背景に全般円売りが優勢となり、欧州時間に一時160.85円と2008年8月以来の高値を更新した影響が残った。
NY市場に限ればやや伸び悩む展開だった。この日発表の10月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値や7-9月期ユーロ圏域内総生産(GDP)速報値の下振れが相場の重しとなり、2時過ぎには159.80円付近まで下押しする場面があった。
本日は、NY時間には米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表があるものの無風予想となっていることで、ドル円は東京勢が参入している時間帯の為替介入が焦点になる。これまでの為替介入は、市場参加者が油断をしている時に実行されることが頻繁にあり、時間的な制約はないと思われる。ただ前回から間隔があいたときには通常、まずは東京市場参加者がいる時間帯に介入が行われることが通例だ。よって、日本時間の17時頃までは円買い介入への警戒感が続きそうだ。
特に本日は、複数の要因で円買い介入の可能性が高まっている。その1つは、ドル円は一昨日の安値148.81円から151.72円まで急騰し、介入実施目安とされているボリンジャー・バンドの+2σ上限(150.99円)を上回ってきたこと。ボラティリティー抑制としての円買い介入という大義名分も成り立つ。昨日の植田日銀総裁の会見では「(YCC柔軟化)為替も含めた将来の金融市場のボラティリティへの備え」と述べているが、YCCの柔軟化にもかかわらず円安が続いている。また、先月初めに鈴木財務相も「あくまで水準そのものは判断基準ではない、ボラティリティーが問題」とも発言している。
2つ目の要因としては、政治的なスケジュール。衆院議員の在職日数が平均約2年10カ月の中ですでに2年を経過した衆議院では、解散の噂が後を絶たない。明日2日には岸田政権が経済対策を閣議決定し、首相が記者会見を行う予定。岸田政権の支持率が低下傾向にあるにもかかわらず、これまで伝わってきているだけの経済対策だけではインパクトは小さい。円安による景気悪化も顕著であり、少しでも支持率回復を見込み、明日の会見を前に円安阻止に動く可能性もあるだろう。
ドル円以外ではオセアニア通貨の動きに要注目。昨日発表された10月中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は景況判断の境目50を下回った。本日発表の10月Caixin中国製造業PMIの予想は50.8となっているが、昨日同様に50を割り込んだ場合はリスク回避が進み、オセアニア通貨の重しになるだろう。なお、早朝に発表されたニュージーランドの7-9月期雇用統計は就業者数が前期比より減少し、民間賃金の伸びも予想を下回った。
※時刻表示は日本時間
<国内>
特になし
<海外>
○06:45 ◎ 7-9月期ニュージーランド(NZ)失業率(予想:3.9%)
◎ 就業者数増減(予想:前期比0.4%/前年比3.2%)
○09:30 ◎ 9月豪住宅建設許可件数(予想:前月比1.3%)
○10:45 ◎ 10月Caixin中国製造業購買担当者景気指数(PMI、予想:50.8)
○16:00 ◇ 10月英ネーションワイド住宅価格指数(予想:前月比▲0.4%)
○16:00 ◇ 10月トルコ製造業PMI
○17:30 ◇ 10月スイス製造業PMI(予想:45.0)
○18:30 ◎ 10月英製造業PMI改定値(予想:45.2)
○20:00 ◇ MBA住宅ローン申請指数
○21:15 ☆ 10月ADP全米雇用報告(予想:15.0万人)
○22:45 ◎ 10月米製造業PMI改定値(予想:50.0)
○23:00 ☆ 10月米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景気指数(予想:49.0)
○23:00 ◇ 9月米建設支出(予想:前月比0.4%)
○23:00 ◎ 9月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数(予想:925.0万件)
○23:30 ◇ EIA週間在庫統計
○24:00 ◇ 10月メキシコ製造業PMI
○2日01:00 ◎ 9月ロシア失業率(予想:3.0%)
○2日03:00 ◎ 10月ブラジル貿易収支(予想:90.00億ドルの黒字)
○2日03:00 ☆ 米連邦公開市場委員会(FOMC)、終了後政策金利発表(予想:5.25-5.50%で据え置き)
○2日03:30 ☆ パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見
○2日05:15 ◎ マックレム・カナダ銀行(中央銀行、BOC)総裁、講演
○2日06:30 ☆ ブラジル中銀、政策金利発表(予想:12.25%に引き下げ)
○ポーランド(万霊節)、休場
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
31日08:46 鈴木財務相
「日銀の政策修正報道について、政府として申し上げることを控えたい」
「適切な金融政策の運営を期待する」
31日19:06
「今回の決定は市場で円滑な長期金利を形成するためのもの」
「引き続き政府と連携して適切な金融政策期待したい」
「為替はいろいろなことで決まる」
「今回の措置が反映されていると一概に言えない」
「為替は、金利だけで評価すべきことではない」
31日12:29 日本銀行声明
「必要なら躊躇なく追加緩和」
「長期金利の上限は1%を目処」
「長短金利操作の運用をさらに柔軟化」
31日15:37 植田和男日銀総裁
「粘り強く金融緩和を続ける方針」
「長短金利の運用さらなる柔軟化を決定した」
「我が国経済は緩やかな回復を続けるとみる」
「潜在成長を上回る成長が続くとみる」
「物価見通し上振れの主因は価格転嫁の影響長期化や原油価格上昇」
「物価目標達成の十分な確度持って見通せる状況になお至ってない」
「長期金利が1%を大幅に上回るとはみておらず」
「4月に比べて物価見通し上振れてきた」
「消費者物価、安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続する」
「粘り強い金融緩和により賃金上昇ともなう2%物価安定実現へ」
「長期金利の水準・変化のスピードに応じて機動的にオペ対応していく」
「(オペ)今後の買入増額や臨時買い入れ、1%下回る水準で行うことも」
「(為替)変動大きいと経済への影響大きい、政府と連携して注視」
「(YCC柔軟化)為替も含めた将来の金融市場のボラティリティへの備え」
「根拠の薄い投機的な動きには機動的なオペで対応」
「YCCやめる条件、0%金利やめる条件、順番なども含めてその時の状況次第」
「(円安の影響)第1の力ともいえるが、輸出数量など第2の力の部分も、輸入物価上昇によるインフレ期待が第2の力になる部分も」
「(円安)教科書的だが金利差の影響あり、ここまでは外国の金利上昇の影響が大きいと考える」
31日16:11 松野官房長官
「日銀決定、柔軟性を高めるものと受け止めている」
「日銀に適切な金融政策運営を行うことを期待」
31日16:24 岸田首相
「日銀、安定的な物価維持のため、金融政策を進める立場にある」
「(為替)ファンダメンタルズを反映した安定的推移が重要」
31日20:12 ビスコ・イタリア中銀総裁
「ECBはこれまで急激な利上げを行っており、今後数カ月は慎重な対応が必要」
「十分に長い期間、現在の金利水準を維持するというECBの方向性は賢明な判断」
「金融引き締めにより今後数カ月で需要がさらに縮小する可能性がある」
31日21:50 ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁
「ターミナルレート(利上げの最終到達点)に到達したと思われる」
31日22:13 カザークス・ラトビア中銀総裁
「必要なら利上げに対しての扉は常に開かれるべき」
「依然として高インフレが続くリスクはある」
「今すぐ利下げについて議論する必要はない」
「利下げには経済の劇的な転換が必要となる」
1日01:06 ナーゲル独連銀総裁
「金利は長期間、高水準に維持される必要」
「インフレには上振れリスクがある」
「早すぎる金利引き下げはできない」
「金利がピークにあるかどうかは分からない」
1日01:46 デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁
「基調インフレの減速は重要な要素」
「今日発表されたインフレ率は『良いニュース』」
※時間は日本時間
<ドル円=昨年10月高値151.95円を睨んだ値動きに>
大陽線引け。日足一目・転換線を超えると上げ足を強め、10月26日高値150.78円も上回り、昨年10月以来の高値となる151.70円台まで大幅に上げ幅を広げた。
2022年10月21日に記録した151.95円は1990年7月以来の高値であり、同水準を睨んだ値動きが注目される。大幅高な後なだけにある程度の調整はあってもおかしくはないが、それでも先月26日高値の150円後半までか。
レジスタンス1 153.50(ピボット・レジスタンス2)
レジスタンス1 152.59(ピボット・レジスタンス1)
前日終値 151.68
サポート1 150.78(10/26高値)
サポート2 150.27(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロドル=1.0570ドル台で横ばいの基準線を念頭に取引>
陰線引け。1.06ドル台で上値を試すも1.07ドル手前の10月24日高値には届かず失速。日足一目・転換線や基準線も割り込み、1.0558ドルまで下値を広げた。
本日は1.0571ドルで横ばいの基準線を念頭に置いた取引に。反発した場面でも1.06ドル前半の転換線や1.0660ドル台まで下りてきた一目・雲の下限辺りでは売り圧力が高まりそうだ。下値は1.0520ドル台の10月26日が意識される。
レジスタンス1 1.0665(日足一目均衡表・雲の下限)
前日終値 1.0575
サポート1 1.0524(10/26安値)
<ユーロ円=2008年8月以来の高値更新後の調整幅に注目>
大陽線引け。心理的節目160円を超えると上げ足を速め、160.85円まで上昇幅を拡大。2008年8月以来の高値を記録した。終値も160円台を維持している。
買いの勢いは強いものの、大幅高の後なだけに下向き調整もあるか。その場合は10月24日高値159.92円付近の攻防に注目したい。そこを割り込むと159円前半まで水準を上げてきた転換線が意識される。
レジスタンス1 161.47(ピボット・レジスタンス1)
前日終値 160.41
サポート1 159.28(日足一目均衡表・転換線)
<豪ドル円=10/2以来の96円台乗せ、三役好転も点灯>
大陽線引け。95円前半の一目・転換線を超えて上昇力を強め、10月2日以来の96円台乗せに成功した。
転換線が基準線を上回り、雲の上で引け、遅行スパンも実線を上回ったことで三役好転の強い買いシグナルが点灯。ただし、ここからは96.40円台の10月2日高値や9月29日高値96.92円をこなせるかがポイントとなってくる。下押しした場合は10月30日高値95円半ば辺りまでは見ておきたい。
レジスタンス1 96.42(10/2高値)
前日終値 96.13
サポート1 95.53(10/30高値)
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