週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
◆ドル円、引き続き日米金融政策スタンスの違いから底堅さを維持
◆雇用統計をはじめ、米指標結果を受けた米金利動向に注意
◆ユーロドル、一段と下値を探る展開
ドル円 147.00-152.00 円
ユーロドル 1.0200-1.0700 ドル
ドル円は、政府・日銀による介入を意識しながらも、日米金融スタンスの方向性の違いに着目した押し目買い意欲は根強く、底堅い展開が想定される。足元で続くドル高をけん引しているのは、米長期金利の急上昇だが、その背景には19-20 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後にパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が記者会見で、金利水準が「より高く、より長く」の金融スタンスを強調したことが挙げられる。米国債券相場では、長期国債の利回りが短期国債利回りを下回る「逆イールドカーブ」が続いていたが、ここにきて急速な調整の動きが見られている。米10年債利回りはすでに2007 年10 月以来の高水準にあるものの、さらなる上昇余地がありそうだ。日銀による政策修正への思惑がいったん落ち着くなかで、日米金融政策の方向性の違いを意識した円売り・ドル買いが依然として基本トレンドとなるだろう。
政府・日銀による円買い介入の可能性については、ドル円の水準が上がるにつれて高まることは確かだが、現在の緩やかな円安ペースの中で、はたして介入が実施されるかどうかは疑問だ。昨年9 月から10 月に行った介入の前後には、ドル円が1 日で1 円以上の上昇が連日で見られるなど、ボラティリティが非常に高まっていたが、ここ最近の動きは非常に鈍い。イエレン米財務長官が先日、日本の介入について「為替レートの水準に影響を及ぼすことでなく、ボラティリティを滑らかにするスムージングが目的であれば理解できる」と述べているなかで、現在の値動きを鑑みれば政府・日銀にとっては難しい判断となるだろう。
なお、来週は週末の9 月雇用統計はもちろんのこと、10 月2 日に9 月サプライマネジメント協会(ISM)製造業景気指数、10 月3 日に8 月雇用動態調査(JOLTS)求人件数、10 月4 日に9 月ADP 全米雇用報告や9 月ISM 非製造業指数が予定されているなど、米重要指標が目白押しとなっており、結果次第で米長期金利の動向にドルが大きく左右されそうだ。
ユーロドルは、欧州景気減速懸念や米金利高止まりへの思惑から引き続き下値を探る展開が想定される。チャートを見ても年初来安値を窺う動きを見せており、下値リスクが高まっている。欧州中央銀行(ECB)の追加利上げ観測が後退するなか、ユーロの先安観は根強い。
ドル円は、日米金融政策の方向性の違いを意識した買いが週明けから強まった。政府・日銀の介入警戒感がある中でも、米長期金利の上昇につれる形で緩やかに下値を切り上げ、27 日には一時149.71 円と昨年10 月24 日以来の高値を付けた。ユーロドルは米長期金利の上昇を受けてドルが全面高となった流れに沿った。目立った戻りも見られないまま、一時1.0488 ドルと1 月6 日以来の安値を付けた。(了)__
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
◆豪ドル、ブロックRBA 新総裁の初会合で政策の変化に注目
◆RBA、インフレリスクが過小評価されているとの声も
◆ZAR、中期予算までZAR 買いは進めづらい
豪ドル円 92.00-97.00 円
南ア・ランド円 7.50-8.00 円
豪ドルは神経質な展開となりそうだ。来週最大の注目材料は10 月3 日に開催される豪準備銀行(RBA)理事会。RBA では今月からブロック新総裁が就任しており、今回はブロック体制下で初の理事会となる。ブロック総裁はロウ前総裁のもとで副総裁を務めていたこともあって政策方針の大きな変更はないと思われる。市場予想も4.10%での金利据え置きとなっている。政策金利についての波乱はなさそうだ。
注意するべきは声明文の内容だろう。ブロック新総裁が自身の色をどの程度出してくるか確認する必要があるほか、足もとで再加速の兆しが見えるインフレ動向に対する見方も注目される。今週発表された8 月消費者物価指数(CPI)は前年比5.2%の上昇となり、前月の4.9%上昇から伸びが加速した。原油価格の上昇などもあってインフレリスクが高まっており、一部市場では「RBAはインフレリスクを過小評価している」との指摘も聞かれている。声明文でインフレ警戒姿勢が強まることになれば豪金利先高観が再び高まり、豪ドル相場の下支え要因となる可能性もありそうだ。なお、来週は10 月3 日に8 月住宅建設許可件数、10 月5 日に8 月貿易収支の公表が予定されている。
隣国NZ でも10 月4 日にNZ 準備銀行(RBNZ)の金融政策公表が控えており、注目を集めることになりそうだ。政策金利は5.50%での据え置きが予想されており、こちらもRBA 同様に波乱はないだろう。ただ、前回の会合(8 月16 日)では「政策金利を想定よりも長く制約的な水準で維持する必要がある」との認識を示したほか、利下げ開始の予想時期を2025 年に先延ばししている。今回の会合でもさらに利下げ開始時期の調整が入るか確認しておきたい。
南アフリカ・ランド(ZAR)は伸び悩む展開となりそうだ。来週は南アフリカから特段の経済指標・イベントなどが予定されておらず、今週と同じく外部要因に振らされる動きとなるだろう。為替市場全般で米長期金利の上昇を手掛かりにしたドル買い相場が続いており、相場の方向性に大きな変化が見られなければZAR も対ドルを中心に伸び悩む可能性が高い。また、市場では「南ア財政の健全性に対する懸念などを考慮すると、11 月1 日に予定されている中期予算までZAR の上値余地は限られるだろう」との見方も広がっている。
豪ドルは週明けから米金利の上昇を背景にしたドル買いが目立つなか、対ドルを中心に売りが先行。対円でもつれ安となった。もっとも、28 日にはさえない米経済指標の発表が相次いだことで米金利の上昇とドル買いが一服。株価も反発したため豪ドル円でも買い戻しが進んだ。
ZAR も対ドル中心に売り先行の展開となり、ZAR 円も上値の重さが目立った。前週末には南アフリカ準備銀行(SARB)のタカ派的な金融政策公表後にZAR 買いが進む場面もあったが、今週に入るとZAR 買いの勢いも後退している。(了)__
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
◆ポンド、英中銀の利上げ停止観測が重し
◆ポンド、対ドルの軟調さが対円での伸び悩みに繋がる
◆加ドル、原油高が支援材料
ポンド円 179.50-184.50 円
加ドル円 109.00-113.00 円
ポンドは上値が限定されそうだ。イングランド銀行(英中銀、BOE)の利上げ停止観測の広がりが重し。8 月消費者物価指数(CPI)が予想外に減速したことが決め手となり、9 月の英中銀金融政策委員会(MPC)は利上げを見送った。中銀は「短期的にインフレ率がより低下する」との見通しも示してもおり、欧州中央銀行(ECB)やスイス国立銀行(スイス中銀、SNB)と同じように、市場は一連の引き締めサイクルの終了を見込み始めた。もっとも、英インフレ率はユーロ圏や米国と比べてまだ高い水準にあり、目標の2%達成には遠い道のりと利下げを語るには時期尚早だ。
一方、日銀は大規模な緩和継続を表明しており、日英の金利差は拡大したままとなるだろう。金利差からはポンド円の買い材料となり得るが、それを難しくしているのが米金利先高観の強
まりと本邦当局による円買い介入の可能性。タカ派的な据え置きを決めた米連邦公開市場委員会(FOMC)を経て、米長期金利は約16 年ぶりに高い水準まで上げ幅を拡大。ドルが全般堅調となるも、対円での上昇スピードは比較的穏やかとなっている。本邦通貨当局による円安抑制の施策が警戒されたからだろう。ポンドドルとドル円ではドル高が進むスピードが違うため、ポンド円は伸び悩むことになるのではないか。
週明けには日銀短観の発表があり、結果次第で円安加速もあり得る。当局がボラティリティが高まったと判断すれば、円買いドル売り介入が実施され、その場合には一時的にポンド円も大きく水準を下げる場面も想定しておきたい。
加ドルは、米長期金利を材料とした為替相場の値動きに沿いながらも、原油相場の動向次第では他通貨とは違った動きもありそうだ。石油需給のひっ迫感が高まるなか、原油先物は上昇力を強めている。米金利高を受け対ドルで弱含む通貨が多い中、産油国通貨の加ドルにとって原油高は支援材料。対円では2008 年1 月以来の高値を更新し、更なる上値余地を試す段階にある。もちろん、原油相場の失速には注意が必要。他にも、米国の金利高が世界経済全体の成長の足かせになるという警戒感が強まるようだと、リスクセンチメント悪化から資源国通貨売り・円買いに波及する可能性もある。なお、10 月6 日には米国とカナダの9 月雇用統計が発表される。
ポンドは売りが先行。対ドルでは1.22 ドル半ばから3 月半ば以来の安値となる1.2100 ドル手前まで下落した。ポンド円は182 円付近から181 円割れまで下押しした。米金利高によるドル買いが対ポンドで強まるなか英中銀利上げの停止観測も重しとなった。もっとも、その後は月末・期末にかけてのポンド買いで反発し、対円では182 円台を回復した。
加ドルはドル高の流れにつれて1.35 加ドル半ばまで加ドル安に振れるも、原油高を支えに1.34加ドル後半まで買い戻された。加ドル円は110 円割れから110 円後半まで上昇し、2008 年以来の加ドル高円安を記録した。(了)
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