◆ドル円、25 日のジャクソンホール会合でのパウエル FRB 議長講演に注目
◆本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性には引き続き警戒
◆ユーロドル、8 月ユーロ圏製造業・サービス業 PMI 速報や独 Ifo 景況感指数に注意
ドル円 143.00-148.00 円
ユーロドル 1.0500-1.1000 ドル
ドル円は、引き続き本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入、ユーロ売り・円買い介入の可能性に警戒しながら、24-26 日にカンザスシティ連銀主催で開催される第 46 回ジャクソンホール会合でのパウエル FRB 議長の講演に注目。講演は日本時間 25 日 23 時 05 分に予定されている。
本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入に関しては、鈴木財務相は「ボラティリティーを抑制すること」を理由として挙げている。また、植田日銀総裁と内田日銀副総裁も、イールドカーブコントロール(YCC)の運用柔軟化の理由として、為替市場のボラティリティーの抑制に言及しており、ドル円の上昇スピードに拍車がかかった局面では警戒が必要となるだろう。さらには、ユーロ円が 2008 年秋以来となる 160 円台に迫っており、かつてユーロ危機時に日米欧の中銀によるユーロ買い介入で購入したユーロの売却、すなわち、ユーロ売り・円買い介入の可能性にも留意しておきたい。
また、パウエル FRB 議長の講演では、NY 連銀が上昇の可能性を示唆した自然利子率への言及や、年内の追加利上げ、ターミナルレート(利上げの最終到達点)への言及があるのかどうか。市場はどこまで高く金利を引き上げる必要があるかを見極めることになる。さらには、来年以降の利下げ開始時期に対しても、どの程度の期間にわたり金利を高水準に維持すべきかの言及があるのかを確認することになりそうだ。パウエル FRB 議長が NY 連銀の指摘している自然利子率の上振れを確認した場合は、利下げの緊急性が薄れることになり、ドル高要因となる。また、予定は確定していないが、植田日銀総裁がジャクソンホール会合に参席した場合は、YCC の撤廃時期や金融政策正常化への言及に注意しなければならないだろう。
ユーロドルは、ユーロ圏 8 月の製造業・サービス業 PMI 速報値やラガルド ECB 総裁のジャクソンホール会合での金融政策に関する発言に要注目。ラガルド ECB 総裁は、7 月の ECB 理事会の後に、「9 月理事会では、利上げの可能性も一時停止の可能性もある」と述べている。また、リセッション(景気後退)に陥っているドイツの 8 月 Ifo 景況感指数にも注意しておきたい。
ドル円は 144.66 円から 146.56 円までドル高が進んだ。NY 連銀のレポートが自然利子率の上昇の可能性を示唆し、7 月 25-26 日の FOMC 議事要旨が、「著しいインフレリスクによる追加利上げの必要性」に言及するタカ派的な内容だったことから米 10 年債利回りが上昇した影響を受けた。
ただ、中国当局による人民元買い介入強化への警戒感から伸び悩む展開となった。ユーロドルは、独 10 年債利回りの低下と米 10 年債利回りの上昇を受けて、1.0961 ドルから 1.0857 ドルまで下落した。ユーロ円は、ドル円の上昇に連れ高となり、158.19 円から 159.36 円まで上昇した。(了)
◆中国経済の停滞による株価下落で上値は限定的
◆豪ドル、利上げサイクル終了が近いことが重しに
◆ZAR、7 月のインフレ指標に注目
豪ドル円 90.00-96.00 円
南ア・ランド円 7.20-7.80 円
豪ドルは上値の重い展開となりそうだ。今週発表された 7 月の米小売売上高が市場予想を上回る伸び率を記録するなど、米国経済指標は依然として強い結果を示している。ただ、一方で中国の小売売上高や鉱工業生産は市場予想を下回るなど、中国経済の停滞長期化懸念が高まっており、リスク回避の動きに敏感な豪ドルの重しになりそうだ。7 月の人民元建ての新規融資増加額が2009 年以来の低水準を記録したこともあり、今週に入り中国人民銀行は 1 年物中期貸出制度(MLF)金利を 2.65%から 2.50%に引き下げたが、中国・香港株式市場の反応は限られるなど、中国経済の回復傾向が見えてこない。豪ドルは当面はこの影響を受けて、上値が重く推移することが予想される。
また、豪州国内でもインフレ傾向が抑制されていることや、雇用情勢が悪化していることも、豪ドルの上値を抑える要因になる。今週発表された 4-6 月期の賃金指数は予想を下回り、インフレ抑制の効果が出てきている。1 日に行われた豪準備銀行(RBA)理事会の議事要旨でも、利上げ予想に反して据え置きが決定された理由について、「これまでの大幅な引き締めが意図したとおりに機能している兆候がある」「インフレに関する最近の情報は心強い」などの見解が示された。RBAの利上げサイクルの終了が近いことを示唆しており、豪ドルの上値を圧迫しそうだ。なお、来週は豪州からは主だった経済指標は予定されていない。引き続き中国の景気動向を睨みながらの展開が予想される。
南アフリカ・ランド(ZAR)はレンジ取引になりそうだが、上値は限定的と予想している。豪ドル同様に中国の景気減速が ZAR の重し。この数週間の ZAR 安も、南ア国内情勢よりもリスク回避の動きによる南アからの資金流出が主要因。来週も株式市場が弱含むと ZAR への売り圧力は避けられないだろう。来週は、南アからは 23 日に 7 月の消費者物価指数(CPI)が発表される。6 月は前年比で 5.4%となり、2021 年 10 月以来の水準まで低下。また、コア指数も今年 2 月以来となる 5.0%まで低下している。インフレ抑制は南ア経済にとっては好要因だが、市場は南アと米国の金利差拡大を嫌気し、インフレが低下した場合は ZAR 売りに反応する可能性が高そうだ。
豪ドルは対ドル・対円ともに弱含んだ。中国株の軟調地合いが続いていることが、リスク回避の動きに敏感な豪ドル売りにつながった。また、7 月の豪雇用統計が失業率、新規雇用者数ともに予想を下回ったことも重しになった。対ドルでは 0.63 ドル半ばまで下がり、昨年 11 月以来の水準まで弱含んだ。もっとも、中国の介入期待で下値も支えられた。ZAR は対円では横ばい、対ドルでは軟調推移となった。豪ドル同様にリスク回避の動きが進んだことで、ZAR は上値が重くなった。対ドルでは 6 月以来となる 19.29ZAR 台まで ZAR 安が進んだ。なお、南ア失業率は小幅に改善したが、依然として高い失業率となっていることで、市場の反応は限られた。(了)
◆日銀との政策見通しの格差を意識、対円では堅調維持
◆ポンド、英中銀の引き締め継続観測や英経済への懸念後退が支え
◆加ドル、9 月会合での利上げ継続の思惑が台頭
ポンド円 184.00-189.50 円
加ドル円 106.00-110.00 円
今週発表された英・加の経済データはイングランド銀行(BOE、英中銀)とカナダ中銀(BOC)が引き締めを続ける可能性を示唆し、日銀との金融政策見通しの格差が意識されている。日本政府・日銀の円買い介入を警戒しつつも、ポンド・加ドルは対円で堅調地合いを維持しそうだ。
今週発表の英賃金・インフレデータは BOE の引き締めペースを再加速させる思惑を強める結果となった。4-6 月の賃金(除ボーナス)は前年比 7.8%と、2001 年に統計を開始して以来最高の伸び率を記録し、インフレの長期化懸念を強める結果となった。また、7 月の消費者物価指数(CPI)は予想通り前年比 6.8%と前月の 7.9%から減速したが、BOE が注視するコアインフレやサービス価格は引き続き上昇圧力が掛かっていることが示された。BOE の次回会合は 9 月 21 日に予定されている。9 月 12 日と 20 日に発表予定の賃金・インフレデータを見極める必要はあるが、市場では既に 0.25%利上げと来年 3 月までの 0.50%の追加利上げを完全に織り込んでいる。一部では 9月会合での 0.50%利上げ思惑もくすぶっている状況だ。BOE の引き締め継続観測や、英 6 月 GDPが予想以上に好調で英経済への過度な懸念が緩んだことが、ポンドの支えとなりそうだ。来週は8 月の製造業・サービス部門 PMI 速報値の発表が予定されている。
加ドルは、カナダ中銀(BOC)が 9 月会合で追加利上げに踏み切るとの見方が強まっており、底堅い動きが見込まれる。BOC は 6、7 月に利上げを実施したが、7 月会合後に発表された 5 月小売売上高と 6 月の雇用データが予想を下回る結果となり、9 月は政策金利を据え置くとの見方が強まった。ただ、今週発表の 7 月 CPI が予想を上回る前年比+3.3%と、2 年 3 月ぶりの低水準だった 6 月の 2.8%から伸びが加速。BOC が重視するコア指数も高止まりが示されたことから、一転して追加利上げに踏み切る可能性が高まっている。9 月 6 日の次回会合までは、来週 23 日に発表予定の 6 月小売売上高や 9 月 1 日の 4-6 月 GDP に注目。金融政策を巡り、経済データの結果をしっかりと確認することになりそうだ。
また、資源国通貨の加ドルにとって上値圧迫要因となるのは中国リスク。中国の景気鈍化が鮮明になるなか、不動産危機が再燃し金融市場への波及も懸念されている。懸念が加速するようであれば、原油相場の下落に伴い、加ドルは売りに押される可能性があるだろう。
米長期金利の上昇に伴いドルの堅調地合いが続くなか、対ドルでは上値の重い動きとなった。ポンドドルは強い英国の賃金・インフレデータの結果が支えとなるも、1.27 ドル台を中心に伸び悩んだ。加ドルは中国景気減速を背景とした原油相場の重い動きも嫌気され、ドル/加ドルは 1.35加ドル台半ばまで加ドル安が進んだ。対円では、日銀と主要国との金融政策見通しの格差を意識した円安の流れが続くなか、ポンド円は 2015 年 12 月以来の高値水準となる 186 円台まで上昇。加ドル円は 108 円を挟んだもみ合いの動きとなっている。(了)
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