◆ドル円、米インフレ鈍化と日銀の緩和修正観測から上値は重い
◆ドル円、急速な下落に対する反動には警戒
◆ユーロドル、根強い ECB の利上げ期待から底堅い動き続く
ドル円 135.00-142.00 円
ユーロドル 1.1000-1.1500 ドル
ドル円は、米インフレ鈍化と日銀の金融緩和修正への根強い思惑から上値の重さが引き続き意識されるものの、急ピッチで進んだ下落に対する反動に警戒する神経質な展開が想定される。
今週発表された 6 月米消費者物価指数(CPI)は前年比で+3.0%と 2021 年 3 月以来の水準まで低下する結果となり、これを受けて今月 25-26 日に行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げするとの見方は変わっていないものの、今年中の追加利上げ観測は急速に後退している。また、FOMC メンバーの中でタカ派を先導していたブラード・セントルイス連銀総裁が 13 日に突然、辞任を発表したことも利上げ観測を後退させる要因となっている。
また、日銀の金融緩和修正観測が一段と高まっていることも引き続きドル円の重しとなりそうだ。きっかけとしては、内田日銀副総裁が 7 日に日本経済新聞とのインタビューで、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正について「金融仲介や市場機能に配慮しつつ、いかにうまく金融緩和を継続するかという観点からバランスをとって判断していきたい」と述べたこと。日銀金融政策決定会合を月末に控えるなかでの発言だったこともあり、海外勢を中心に「長期金利のレンジをこれまでの±0.5%から±0.75%もしくは±1.00%に拡大するのでは」との観測が広がっている。米インフレ鈍化と日銀の YCC 修正観測が重なったことで、先週末 7 日には144 円を挟んだ水準だったドル円がわずか 1 週間あまりで 137 円台まで急落する大相場となったわけだが、これについては「行き過ぎ」との見方もある。どこかのタイミングで急速に進んだ下落に対する反動が出ることも想定しておく必要はあるだろう。
なお、来週は 17 日に 7 月米 NY 連銀製造業景気指数、18 日に 6 月米小売売上高、20 日に 7 月米フィリー指数や 6 月米中古住宅販売件数などが予定されている。ユーロドルは、米国のインフレが順調に鈍化しているほか、欧州中央銀行(ECB)による利上げ期待が依然として残っていることから底堅い動きが続きそうだ。6 月 14-15 日開催の ECB 議事要旨では「0.50%の大幅利上げが検討されていた」ことが明らかになったほか、「7 月以降も利上げを継続する可能性」についても示唆されている。
ドル円は、週明けの東京市場こそゴトー日に伴う本邦実需勢の買いが観測されたことで 143.01円まで上昇したものの、その後は米長期金利の低下とともに売られる展開に。6 月米 CPI や 6 月米 PPI が低調な内容だったことで売りが加速し、一時 137.82 円まで売り込まれている。
また、ユーロドルは弱い米インフレ指標を受けてドル安が加速したため上値を試す動きとなった。一時 1.1230 ドルと昨年 3 月以来 1 年 4 カ月ぶりの高値を更新した。(了)
◆豪ドル、米 CPI 後のドル売りの流れが相場を下支え
◆RBNZ、当面は金利を据え置く姿勢を改めて表明
◆ZAR、利上げも売りで反応する可能性に注意
豪ドル円 93.00-97.00 円
南ア・ランド円 7.40-7.80 円
豪ドルは対ドルを中心に底堅く推移しそうだ。今週は豪州からの材料が乏しく、日米金融政策絡みなど外部情勢に振らされる展開となった。来週も米国からは多くの経済指標が発表されるが、インフレ関連指標の発表は予定されていないため、今週の 6 月米消費者物価指数(CPI)を受けたドル売りの流れが大きく変化する可能性は低いと見込む。足もとで急速に豪ドル買い・ドル売りが進んだ分の調整には注意が必要となるが、基本的には下値の堅い動きとなりそうだ。
一方、日銀絡みでは市場でイールドカーブ・コントロール(YCC)の修正思惑が根強く、円相場の下支えとなっている。市場の YCC 修正観測は行き過ぎとの見方もあるが、27-28 日の日銀政策決定会合まで、修正観測による円買いが豪ドルに対しても一定の重しになるだろう。
なお、豪州では 18 日に豪準備銀行(RBA)の政策決定会合議事要旨、20 日に 6 月雇用統計が公表予定。いずれも相場が反応する可能性は高く、来週は豪ドル主導の動きも期待できそうだ。今月金利据え置きを決めた RBA の次の動きを議事要旨などから探っておきたい。隣国 NZ では来週 19 日に 4-6 月期 CPI が発表予定。今週の NZ 準備銀行(RBNZ)金融政策は市場予想通りの金利据え置きとなり、声明文では「国内のインフレ率はピークから低下し続けると予想」「政策金利は当面制限的な水準を維持する必要がある」などの見解が示された。RBNZ の見通し通りにインフレが推移していくのかを、CPI で確認することになる。
南アフリカ・ランド(ZAR)は上値の重い展開となりそうだ。来週は 19 日に 6 月 CPI が発表されるほか、20 日には南アフリカ準備銀行(SARB)が金融政策を公表する。市場予想では現行の8.25%から 8.50%への利上げが見込まれているが、景気減速懸念の強いなかでは利上げが必ずしもプラス材料ではなく、ZAR 売りを促す可能性がある点には注意が必要だ。
前回の会合(5 月 25 日)時も声明文で「通貨安が一段と進む可能性がある」などと言及されたこともあり、50bp の利上げ決定後に ZAR は下落した。クガニャゴ SARB 総裁は今週の国際通貨基金(IMF)で講演した際、国内の経済情勢に強い懸念を示していたが、金融政策決定会合の声明文でも厳しい判断が示される可能性が高い。
豪ドルは対ドルで堅調に推移。12 日に公表された 6 月米 CPI が予想以上に鈍化し、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが長期化するとの観測が後退するとドルが全面安。豪ドルも対ドルで大きく上昇した。
一方、対円ではドル円の下落や日銀の YCC 修正思惑などから一時売りが強まる場面も見られたが、週末にかけては値を戻している。ZAR も対ドルを中心に買いが強まった。米 CPI の公表後にドル売り・ZAR 買いが加速し、対ドルでは 4 月以来の ZAR 高水準まで反発。対円ではドル円の下落によって相殺された面もあったが、前週に下落した分をやや取り戻した格好となった。(了)
◆ポンド、6 月英インフレ指標を見極め
◆英中銀、英経済指標がさえず難しい政策運営
◆加ドル、6 月 CPI 下振れの可能性に注意
ポンド円 179.00-184.00 円
加ドル円 104.00-107.50 円
ポンドは 19 日発表の 6 月英消費者物価指数(CPI)に注目している。結果次第では、2022 年 4月以来の高値を更新した対ドルで更に上値余地を探りに行くことになりそうだ。そうなると、日銀が超金融緩和政策の修正に動き始めるとの思惑はあるものの、ポンド円も下がりづらくなるだろう。11 日に公表された英雇用データでは、3-5 月の「ボーナスを除く平均賃金の上昇率」が7.3%と過去最高に並んだ。また、前回値も 7.3%まで上方修正された。イングランド銀行(英中銀、BOE)が注視している賃金の伸びが衰える兆しを全く見せておらず、インフレ抑制のために金融引き締めが長期化するとの見通しが強まった。ただし、失業率が予想外に悪化しており、労働市場は縮小の気配も出てきている。5 月鉱工業生産もさえない数値となったことからスタグフレーション懸念が再燃しており、英中銀にとって難しい政策運営が続きそうだ。
6 月英 CPI の前年比予想は 4・5 月の 8.7%からは減速する見込みだが、8%台という高い水準は維持というのが大方の予想。また、前月・前々月とも予想比で上振れていることも念頭に置いておきたい。くわえて、エネルギー・食品やアルコール・たばこを除くコア CPI も重要。前回は前年比で 1992 年以来となる 7.1%まで伸び率が加速した。
加ドルは、週前半に発表の 6 月 CPI が材料視される。5 月は前年比 3.4%と約 2 年ぶりの水準まで鈍化が確認され、金融当局が注視する CPI トリムも 4%割れまで減速。しかしながらカナダ中銀(BOC)はインフレへの警戒感を緩めず、12 日の会合で政策金利を 4.75%から 5.00%に引き上げることを決定した。利上げは 2 会合連続であり、金利水準は 22 年ぶりの高水準となる。BOC は声明文で「政策金利は十分に制約的ではない」」との文言を削除したが、インフレ目標 2%の達成時期見通しを 6 カ月後ろにずらして 2025 年半ばとした。マックレム BOC 総裁も記者会見で「必要に応じて、再度利上げする準備ができている」と表明している。
ただ、短期金融市場はここから先の金利上昇には懐疑的であり、一先ずは利上げ休止との見方が現状では優勢だ。カナダ経済と結びつきが強い米国のインフレ減速が顕著となるなか、6 月 CPIが早期の 3%割れを期待させるような結果もあり得る。そうなると、カナダ金利上昇を見込んだ加ドル買い持ちポジションの巻き戻しで加ドルの上値は重くなる可能性がある。
ポンドは対ドルでは 1.27 ドル台から昨年 4 月以来の 1.31 ドル台まで上昇。英賃金データの伸び率加速によるポンド買い、米インフレ指標の下振れによるドル売りで押し上げられた。対円では 183 円台を頭に一時 179 円半ばまで下落。日銀の緩和修正に対する期待感が円買いに繋がった。
加ドルも対ドルでは強含み、1.33 加ドル付近から 1.31 加ドル手前まで加ドル高が進行した。BOC 利上げと追加利上げ示唆で加ドル買い、米インフレ鈍化を受けたドル売り。一方、対円では今月下旬の日銀会合に対する思惑がより影響し、107 円半ばから 104 円後半まで下押しした。(了)
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