◆ドル円、米 5 月 PCE 総合価格指数に注目
◆日銀金融政策決定会合の主な意見や円買い介入の可能性にも注目
◆ユーロドル、ユーロ圏 6 月 HICP 速報値に注意
ドル円 141.00-145.00 円
ユーロドル 1.0700-1.1100 ドル
ドル円は、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として注視している 5 月の PCE 総合価格指数を見極める展開となる。5 月の PCE 総合価格指数は、前年比 4.4%と予想されており、4 月の 4.4%とほぼ同じ伸び率と見込まれている。予想通りだった場合は、6 月米連邦公開市場委員会(FOMC)でのタカ派的スキップ(利上げ見送り)のあと、7 月 FOMC では FF 金利誘導目標の 0.25%の引き上げ確率が高まることになるだろう。予想を大幅に下回るネガティブサプライズだった場合は、7月もタカ派的スキップ(見送り)、あるいはポーズ(休止)観測が高まることになりそうだ。
パウエル FRB 議長は、議会証言で「FRB 当局者は、インフレ抑制のために金融引き締めを続ける必要があるとの見解で一致している。今年あと 2 回の利上げが適切となるだろう」とタカ派的な見解を示したものの、政策決定には「データ次第である」ことも強調した。6 月の消費者信頼感指数やシカゴ購買部協会景気指数などのデータにも注目が集まる。
また、日本サイドでは 6 月日銀金融政策決定会合での主な意見に注目している。植田日銀総裁が会合後の会見で「消費者物価の見通しが大きく変われば、政策変更につながる可能性がある」との見解を示していたこともあり、審議委員の見解を見極めたい。なお、円買い介入の可能性にも警戒しておきたい。昨年秋のドル売り・円買い介入は、ボラティリティーを抑制するために「ボリンジャーバンド+2σ付近」で断行されている。現在のドル円の水準が既にそのレベルに達していることから、介入の可能性が高まりつつあることも事実だ。
ユーロドルは、ユーロ圏のリセッション入りにも関わらず、7 月 27 日の欧州中央銀行(ECB)理事会での追加利上げが示唆されており、6 月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値に注意が必要だろう。4 月は前年比 7.0%、5 月は 6.1%と低下傾向にあるものの、ラガルド ECB 総裁は、インフレ抑制のために景気抑制的な水準までの追加利上げを示唆している。また、28 日には、欧州の銀行は、ECB に貸出条件付き流動性供給オペ(TLTRO3)を通じて▲1.0%程度で借り入れていた 5490 億ユーロを返済しなければならないため、ユーロ圏の信用逼迫がスタグフレーションへの警戒感を高めることにも注意が必要だ。
ドル円は、パウエル FRB 議長が議会証言で「インフレ抑制のために金融引き締めを続ける必要性」を改めて強調したことで、141.21 円から 143.23 円まで上昇した。米 10 年債利回りは 3.7%付近から 3.8%台まで上昇した。ユーロドルは、7 月の ECB 理事会での追加利上げ観測と 6 月 FOMCでのタカ派的スキップ(見送り)を受けて、1.0893 ドルから 1.1012 ドルまで上昇した。ユーロ円も日欧の金融政策の方向性の違いを背景に、154.05 円から 156.93 円まで上昇した。(了)
◆豪ドル、CPI 次第で 7 月再利上げの可能性も
◆豪ドル、米・中を含む株式市場の動きにも注目
◆ZAR、CPI 低下はポジティブも、制裁リスク残りもみ合い
豪ドル円 94.00-100.00 円
南ア・ランド円 7.50-7.90 円
豪ドルは、対円を中心に堅調地合いを維持できるかに注目。今週の豪ドルは対円で上値が抑えられたが、日豪の金融政策の方向性の違いが豪ドルの支えとなるかを見極めることになりそうだ。来週も円安地合いが続けば、豪ドル円は 2014 年以来となる 100 円を目指す展開も予想される。来週注目されるのが、28 日に発表予定の 5 月の豪消費者物価指数(CPI)。月次の数字は昨年 12月の+8.4%をピークに今年 3 月には+6.3%まで低下したが、4 月になると燃料価格の高騰と住宅価格の大幅上昇を受けて+6.8%まで再び上昇に転じた。
今月行われた豪準備銀行(RBA)理事会では、利上げと据え置きの主張が拮抗した。先週発表された 5 月の豪雇用統計は失業率が予想や前回の 3.7%から 3.6%まで低下し、新規雇用者数も大幅に増加。中でも常勤雇用者の増加が目立つなど、軒並み好結果だった。5 月のインフレ率も高止まりするようなことになれば、7 月 4 日に行われる RBA 理事会では、6 月に続き利上げを決定する可能性が高まる。
今週講演を行ったブロック RBA 副総裁は「雇用はインフレ目標との整合性を考慮した水準を超えている」「インフレが定着すれば、金利の上昇、深刻な景気後退や失業率の上昇を招くだろう」と発言。6 月の理事会よりもタカ派に傾いている可能性が高い。CPI が強い結果になれば豪ドルは支えられそうだ。なお、CPI 以外では 29 日に小売売上高が発表される。また、引き続き豪ドルはリスクに敏感な動きを繰り返しており、株式市場の値動きにも左右されることになりそうだ。豪州だけでなく米国や中国の株価動向にも注目している。
南アフリカ・ランド(ZAR)はもみ合いとなりそうだ。今週発表された 5 月の CPI は、市場予想や前月よりも大幅に低下し、前年比で 6.3%の上昇に抑えられた。また、食料インフレも依然として高水準ながらも 1 年超ぶりの上げ幅まで抑えられた。インフレ抑制は南アにとっては久々の経済的なポジティブニュース。ただ、依然として米国を始め西側諸国からの制裁リスクも残っている。一方的な ZAR 買いにはなりにくく、来週は今週のレンジ内でもみ合いとなる可能性が高い。
なお、経済指標では、29 日に 4-6 月期 BER 消費者信頼感と 5 月卸売物価指数(PPI)、30 日に 5月貿易収支などが発表される。
豪ドルは上値が抑えられた。20 日に発表された RBA 議事要旨で、「利上げ決定は微妙なバランスであった」ことが明らかになり、豪ドル売りを誘ったほか、軟調な株式市場の動きが重しになった。豪ドル円は 97 円半ばから 95 円後半までじり安となったものの、その後は下値を切り上げている。豪ドル/ドルは 0.68 ドル後半から 0.67 ドル半ばまで弱含んだ。ZAR は、週初は調整の買いが優勢となり、対円では 1 月中旬以来となる 7.82 円まで強含んだ。ただ、弱い株式市場の動きや、これまでの調整買いの勢いが急速だったこともあり、週後半は徐々に上げ幅を縮めた。(了)
◆ポンド、予想を上回る 0.50%の利上げ
◆ポンド、英中銀の引き締め加速が支えとなるも景気懸念で伸び悩む可能性
◆加ドル、CPI の結果が利上げ見通しに影響
ポンド円 178.50-184.50 円
加ドル円 106.50-110.50 円
イングランド銀行(英中銀、BOE)は今週、市場予想の 0.25%を上回る 0.50%の利上げに踏み切った。BOE は「最近のデータがインフレ高の長期化懸念を高めている」とし、大幅の利上げを実施。「今後さらなる利上げが必要になる可能性」を指摘した。もっとも、会合前の 21 日に発表された 5 月英消費者物価指数(CPI)では、前年比+8.7%と 4 月と同水準で予想に反して鈍化せず、BOE が政策判断で重要視する同コアも+7.1%と加速。1992 年以来の高水準となったことから、市場の一部では 0.50%の利上げを織り込む動きも見られていた。
英国は主要 7 カ国(G7)で最悪のインフレ問題を抱えており、ベイリーBOE 総裁はインフレ対策として「今金利を引き上げて対処しないと後でもっと悪くなる可能性がある」と指摘した。コアインフレ率の急上昇と賃金伸び率の再加速はインフレ圧力がなお強まっていることを裏付けており、BOE はインフレ阻止に強い決意を示したが、景気悪化懸念を強める大幅利上げは苦しい判断であることは間違いない。
0.50%の利上げに反対したテンレイロ、ディングラ両委員は 0.25%の利上げではなく据え置きを主張した。最近の英経済データは景気鈍化への過度な警戒感を緩める結果となっているが、過去の引き締めの影響がこれからデータで現れる可能性がある。市場では BOE が年末までに政策金利を 6.00%まで引き上げる見方が強まっており、引き締め継続への思惑がポンドの下支えとなるも、今後の英経済への懸念の高まりがポンドの上値を圧迫しそうだ。
カナダ中銀(BOC)が 6 月会合で予想外の利上げに踏み切った一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げをいったん停止した。金利差からみた米国優位性が幾分後退し、ドル高・加ドル安圧力は緩んだものの、FRB は今後利上げを再開し年末まで 2 回の追加利上げの可能性を示唆している。一方、BOC は金融政策がインフレを持続的に 2%目標に回帰させるために十分に制約的ではないと利上げを再開させたが、金利上昇による国内景気に対する強い下押し圧力や家計の債務返済負担増に対しての警戒感も強めており、一段の利上げにはかなり慎重になっている。
市場は 9 月会合まで BOC が 1 回の追加利上げ実施を織り込み済み。27 日発表予定の 5 月 CPI の結果が金利見通しに影響を与える可能性が高く、強い結果となれば 7・9 月会合での連続利上げの思惑も高まるだろう。ただ FRB も 7 月会合で利上げ再開との見方が強く、加ドルの対ドルでの上昇余地は限定的か。一方、対円では金融政策の格差拡大を手がかりに堅調地合いを維持しそうだ。
予想比上振れの英 5 月 CPI や BOE の予想以上の利上げを背景としたポンド買いは一時的にとどまった。利上げの経済への懸念がポンドの上値を圧迫し、ポンドドルは 1.28 ドル前半で伸び悩み、ポンド円は 182 円半ばで上昇が一服した。ドル/加ドルは 1.31 加ドル台を中心に小幅の上下にとどまった一方、円安の流れが続くなか加ドル円は昨年 11 月以来の 108 円台復帰を果たした。(了)
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