◆ドル円、パウエル FRB 議長の議会証言に注目
◆日本の 5 月 CPI や円買い介入の可能性にも注意
◆ユーロドル、ユーロ圏 6 月の製造業・サービス業 PMI 速報値に警戒
ドル円 138.50-143.00 円
ユーロドル 1.0700-1.1100 ドル
ドル円は、21 日に米下院、22 日に米上院で予定されているパウエル FRB 議長の議会証言で、年内残り 4 回の米連邦公開市場委員会(FOMC)の内、0.50%の追加利上げを予想していることに対する見解を見極める展開となる。今週の FOMC では、FF 金利の誘導目標を 5.00-25%に据え置いたものの、ドットプロット(金利予測分布図)では 2023 年末の予想中央値が 5.60%(※FF 金利5.50-75%)に上方修正。年内 4 回の会合で 0.50%の利上げが示唆された。パウエル FRB 議長は、会合後の記者会見で「7 月 FOMC での利上げはまだ決まっていない」と言及しているが、5 月の平均時給が前年比+4.3%、CPI が前年比+4.0%まで伸び率が鈍化している状況や、商業用不動産市場の悪化による金融システムへの悪影響が払拭できない中で、議会証言では、追加利上げとの整合性が問われることになりそうだ。
また、FRB は量的金融引締政策により流動性を減らしているが、米財務省が 6 月末までに約 3500億ドルの米国財務省短期証券(T-Bill)を発行する予定。既発債の流動性の減少が金融システムの不安定化要因となる可能性にも注意しておきたい。
日本の 5 月コア CPI は、4 月の前年比+3.4%から低下予想だ。ただし日銀が注目しているコアコア CPI の 4 月分は前年比 4.1%と 41 年 9 カ月ぶりの上昇幅を記録しており、5 月も上昇基調にあるのかに注目。なお昨年の秋、神田財務官はボラティリティーを抑制するためにドル売り・円買い介入を断行したが、介入水準は「ボリンジャーバンド+2σ付近だった」ことが一部では意識されている。現在のドル円の水準が既にそのレベルに達しており、介入警戒感も台頭している。
ユーロドルは、ユーロ圏のリセッション入りを受けて、6 月のユーロ圏製造業・サービス業 PMIの速報値に注意が必要だろう。ユーロ圏 6 月製造業 PMI が 5 月の 44.8 に続いて 50 を下回っていた場合は、3 四半期連続のマイナス成長への警戒感が高まることになる。欧州中央銀行(ECB)は、リセッション入りにも関わらず、政策金利を引き上げてインフレ抑制のために景気抑制的な水準までの追加利上げを示唆した。スタグフレーションへの警戒感が高まりつつある。
ドル円は、FOMC で FF 金利誘導目標が据え置かれたものの、2023 年末の予想中央値が 5.60%へ引き上げられたことなどを受け、139.01 円から 141.50 円まで上昇。ただ市場は追加利上げに懐疑的であり、米金利低下から 140 円付近まで戻り売りに押された。ユーロドルは、ECB 理事会で政策金利が 4.00%へ引き上げられ、ラガルド ECB総裁が 7月追加利上げを示唆したことなどから、1.0733 ドルから 1.0953 ドルまで上昇した。ユーロ円も 149.67 円から 153.69 円まで上昇した。(了)
◆豪ドル、雇用統計改善で堅調推移
◆豪ドル、米中関係改善すればさらに強含む可能性も
◆ZAR、制裁リスクには引き続き警戒
豪ドル円 94.00-99.00 円
南ア・ランド円 7.30-7.90 円
豪ドルは堅調地合いを維持できるかに注目。今週発表された 5 月豪雇用統計は、失業率が予想や前回の 3.7%から 3.6%まで低下し、新規雇用者数も大幅に増加。中でも常勤雇用者の増加が目立つなど、軒並み好結果となった。チャーマーズ豪財務相はこの結果を「驚くべき成果」としたものの、依然として今後の失業率の悪化を予想している。しかし、市場では予想外の 6 月の豪準備銀行(RBA)理事会での利上げに続き、インフレ抑制のために、「更なる利上げを 7 月に行う可能性がある」との声が多くなりつつある。再利上げに踏み切れば、今週政策金利を据え置いた米連邦準備理事会(FRB)や、利上げにはある程度の時間を要すると思われる日本銀行との金融政策スタンスの方向性の違いが鮮明となる。豪ドルは対ドル、対円ともに堅調な動きをみせそうだ。
また、豪ドルを支える別要因としては、ブリンケン米国務長官が訪中するなど、西側諸国と中国との関係が改善する可能性がある。中国との経済関係の結びつきが強い豪州にとっては好要因になり、更に豪ドルが強含む可能性もあるだろう。来週のイベントでは、20 日に RBA 理事会の議事要旨(6 日分)が公表される。また、同日にはケント RBA 総裁補佐、ブロック RBA 副総裁が相次いで講演やパネルディスカッションに登壇する。豪雇用統計後に RBA の要人が発言するのは初めて。これまでの見解に変化があるかに注目したい。経済指標では、21 日に 5 月のウェストパック景気先行指数が発表される。なお、隣国のニュージーランドからは、22 日に 5 月貿易収支が発表予定。
南アフリカ・ランド(ZAR)の上値は限定的となりそうだ。ZAR は 6 月に入り底堅さを見せているが、米国による制裁が現現実味を帯びていることから、下サイドのリスクが高まっている。米国では、アフリカ成長機会法(AGOA)の適応を除外する書簡が正式に提出された。これらの扱いいついては、これまで米政府は長期にわたり様子見姿勢をとっているが、超党派の議員がロシアと親交を深めている南アに対して厳しい行動を求めている。南アは AGOA により、数千の商品に対して米国市場への免税アクセスが提供されていが、適用除外となった時の経済的な損失は甚大だ。南アの輸出は欧州連合(EU)と米国に依存しており、全輸出の約 30.4%を占めている。南アに制裁措置が下った場合の ZAR に対する影響は大きくなりそうだ。なお、経済指標では、21 日に発表の 5 月消費者物価指数(CPI)に注目が集まる。
豪ドルは堅調な動きとなった。米金利の上昇や堅調な株価が支えとなりドル円が強含んだこと
もあり、対円では 96 円後半まで連れ高となり、昨年 9 月以来の水準まで上昇した。対ドルでも今
年 2 月以来となる 0.68 ドル後半まで上伸した。ZAR は 6 月 1 日に対ドルで過去最安値を更新した
以降は調整の買い戻しが優勢となったが、この傾向は今週も続いた。対円では一時 7.73 円、対ド
ルでは 18 ランド前半までランド買いが進んだ。(了)
◆金融政策の格差を意識した円安の流れが続く
◆ポンド、5 月 CPI と MPC に注目
◆加ドル、BOC の引き締めが支えもドルや円、原油相場に左右
ポンド円 175.00-181.00 円
加ドル円 104.00-108.00 円
今月に入り、豪準備銀行(RBA)やカナダ中銀(BOC)が予想外に利上げを再開。欧州中央銀行(ECB)も予想通りに利上げを継続した。米連邦準備理事会(FRB)は利上げをいったん停止も今年中にあと 2 回の利上げ可能性を示唆するなど、主要中銀がインフレ高への懸念を強め、引き締め姿勢が長引く可能性が高まった。日銀との金融政策の格差が改めて意識されている。株も好調を維持しており、本邦の円安けん制を除けば円買い材料に乏しく、全般円安の流れは続きそうだ。
来週、英国では 21 日に 5 月の消費者物価指数(CPI)、22 日にイングランド銀行(英中銀、BOE)の政策金利と英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨の公表が予定されている。市場では 0.25%の利上げを完全に織り込み、年末にかけて利上げを継続するとの見方が強まっており、5 月 CPIの結果や MPC 議事要旨の内容に注目が集まる。
今週発表の 2-4 月失業率は 3.8%に低下。ボーナスを除く平均賃金の伸びは 7.2%まで加速した。4 月 GDP は前月比+0.2%と 3 月の-0.3%から持ち直し、コロナ禍前の 2020 年 2 月比では+0.3%となった。ハント英財務相は「高成長には低インフレが必要で、家計を守るためにはインフレ率を今年半減させる計画を維持しなければならない」と訴えた。BOE が政策金利をより高く、より長く維持する可能性が強まり、英景気後退は避けられない状況。景気減速への懸念が強まりそうだ。
加ドルは、来週、4 月小売売上高の発表程度で大きな動意につながりそうな手がかりは乏しい。今週の金融政策イベントを通過したドルや円の動きに左右される相場展開が見込まれる。ただ、BOC が今月の会合で予想外に利上げを実施し、インフレ高への警戒感を強めたことは引き続き加ドルの下支えとなるだろう。ポール・ビュードライ BOC 副総裁は「政策金利が将来的にパンデミック前の水準を上回り続ける可能性が高い」と警告。更には「これまで金利を低く抑えてきた経済の構造的要因が変化しつつある」とし、「構造的に金利が上昇する新時代に突入した場合に備えて十分準備しておく必要がある」との見解を示している。
また、産油国通貨である加ドルの大きな変動要因の一つである原油相場の動きにも注意しなければいけない。石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPEC プラス」の協調減産姿勢が原油相場の支えとなっているが、エネルギー消費大国である中国などの景気鈍化懸念などで上値も重くなっている。加えて、国際エネルギー機関(IEA)は電気自動車(EV)の普及などで世界の石油需要の伸びが 2028 年までに劇的に鈍化するとの見通しを示している。
ポンドはしっかり。英雇用・賃金データの強い結果を受けて、ポンドドルは 1.27 ドル後半まで昨年 4 月以来の高値を更新した。今月に BOC が予想外の利上げに踏み切ったことを支えにドル/加ドルは 1.32 加ドル前半まで加ドル高となった。また、日銀と主要国の金融政策格差を背景に、ポンド円は 2015 年 12 月以来の 179 円台まで上昇。加ドル円は 106 円前半まで強含んだ。(了)
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