8日のニューヨーク外国為替市場でドル円は3日続伸。終値は137.36円と前営業日NY終値(137.16円)と比べて20銭程度のドル高水準だった。アジア市場では一時137.91円と昨年12月15日以来の高値を付けたものの、欧米市場では利食い売りなどが優勢となった。米10年債利回りが3.89%台まで低下したことも相場の重し。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が米下院金融サービス委員会で「21-22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)前に重要なデータの発表がある」「FOMCについてまだ何も決定していない。データ次第」などと発言すると円買い・ドル売りで反応。24時30分前に136.48円まで値を下げた。
ただ、パウエルFRB議長が「金利の最終到達水準(ターミナルレート)は予想以上に高くなる可能性がある」との考えを改めて示すと買い戻しが優勢となり、137.44円付近まで持ち直した。米10年債入札が「低調」だったことを受けて、米10年債利回りが3.99%台まで上昇したことも相場を下支えした。
ユーロドルは小幅ながら続落。終値は1.0545ドルと前営業日NY終値(1.0549ドル)と比べて0.0004ドル程度のユーロ安水準だった。パウエルFRB議長が議会証言で「利上げのペースについて何も決定していない」と強調すると、全般ドル売りが先行し一時1.0574ドルと日通し高値を付けた。ただ、米金融引き締めが長期化するとの観測からユーロ売り・ドル買いが出やすく、上値は重かった。米長期金利が上昇に転じたことも相場の重し。
ユーロ円は小反発。終値は144.85円と前営業日NY終値(144.68円)と比べて17銭程度のユーロ高水準。ドル円の下落をきっかけに全般円買いが強まると一時144.24円と日通し安値を付けたものの、ドル円が持ち直すとユーロ円にも買い戻しが入り144.91円付近まで上げた。
カナダドルは全面安。対米ドルでは一時1.3815カナダドル、対ユーロでは1.4570カナダドル、対円では99.10円まで下落した。カナダ銀行(BOC)はこの日、市場予想通り政策金利を現行の4.50%で据え置くことを決めたと発表。主要中央銀行としては初めて利上げサイクルを停止した。
なお、声明では「これまでの累積的な金融引き締めが経済に与える影響を見極める」とした一方、「インフレ率を目標の2%に戻すために必要であれば、政策金利をさらに引き上げる用意がある」と記し、再利上げの余地も残した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、明日の日銀金融政策決定会合の結果や米国2月の雇用統計を控えて、攻防の分岐点である200日移動平均線(8日終値ベース137.44円)での推移が予想される。
昨日のドル円は、200日移動平均線137.44円や昨年12月20日の日銀金融政策決定会合でのYCC許容変動幅拡大の日の高値137.48円を上抜けて137.91円まで上昇した。しかし、パウエルFRB議長が「FOMCでの利上げのペースは何も決定していない。データ次第」と述べたことで、明日発表される米国2月の雇用統計を見極めることになる。
本日から明日にかけて黒田第31代日銀総裁にとっての最後の日銀金融政策決定会合が開催される。白川第30代日銀総裁は、「日銀 宴の終焉」と題した東洋経済1月21日号で「政府・日銀『共同声明』10年後の総括」を寄稿し、アベノミクスと異次元緩和への厳しい批判を展開した。さらに、国際通貨基金(IMF)の季刊誌に金融政策の新たな方向性に関する論文『変化の時(Time for Change)』を寄稿し、アベノミクスと異次元緩和を「壮大な金融実験」だったとして批判している。
8時50分には、「壮大な金融実験」の失敗の証拠でもある2月マネーストックM2が発表される。2月マネーストックM2は前年比+2.7%と予想されており、1月の前年比+2.7%と増加幅が同じと見込まれている。
黒田日銀総裁が2013年4月に打ち出した異次元の量的・質的金融緩和政策は、マネタリーベースを2年間で2倍にして、インフレ目標2%を達成する、というものだった。
2023年2月末のマネタリーベースは651兆8371億円で、2013年3月の134.72兆円から4.8倍となっている。しかし、インフレ目標2%に到達したのは、9年目の2022年4月だった。
マネタリーベースを増加させると、マネーストックが増え、物価上昇、失業率低下、投資増加などの効果を発揮することになっている。しかし、マネーストックM2は、2013年3月の834.1兆円から2023年1月の1213.5兆円まで1.45倍しか増えなかった。黒田日銀総裁は、企業や家計に根付いた「適応的期待形成」が背景にあると総括している。
10時30分には、2月中国の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)が発表されるが、伸び率の鈍化が予想されている。予想通りに鈍化していた場合、中国の景況感の改善にも関わらず物価が伸び悩んでいることになり、リスク回避要因となる。
13時には、衆院本会議で日銀の正副総裁人事案の採決が行われる。2008年3月には、武藤日銀副総裁の総裁昇格案は民主党の反対で否決されたこともある。もっとも今年は自民党が多数派であり、野党も賛意を表明していることで、植田第32代日銀総裁が誕生することが見込まれている。
※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ☆ 10-12月期実質国内総生産(GDP)改定値(予想:前期比0.2%/前期比年率0.8%)
○08:50 ◇ 2月マネーストックM2
○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)
○13:00 ◎ 衆院本会議で次期日銀正副総裁候補の同意人事案採決
○日銀金融政策決定会合(1日目)
<海外>
○09:01 ◇ 2月英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格(予想:▲49)
○10:30 ◎ 2月中国消費者物価指数(CPI、予想:前年比1.9%)
○10:30 ◎ 2月中国生産者物価指数(PPI、予想:前年比▲1.3%)
○18:00 ◎ 10-12月期南アフリカ経常収支(予想:1800億ランドの赤字)
○21:00 ◎ 2月メキシコ消費者物価指数(CPI、予想:前年比7.68%)
○21:30 ◇ 2月米企業の人員削減数(チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社調べ)
○22:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:19.5万件/165.9万人)
○24:00 ◎ バー米連邦準備理事会(FRB)副議長(金融監督担当)、講演
○10日02:30 ◎ ブイチッチ・クロアチア中銀総裁、講演
○10日03:00 ◎ 米財務省、30年債入札
○バイデン米政権、2024会計年度の予算教書公表
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
8日06:59 ロウ豪準備銀行(RBA)総裁
「RBAは利上げ停止に適したポイントに近づいた」
「インフレ率は低下傾向にあるようだ」
「利上げの一時停止はデータ、経済見通しによって決定される」
「さらなる利上げの可能性もある」
「経済のシナリオ、双方向の不確実性がある」
9日00:05 カナダ銀行(BOC、カナダ中央銀行)声明
「世界経済の成長は鈍化し続けており、インフレは依然として高すぎるものの、主にエネルギー価格の下落により低下している」
「欧米では、成長とインフレの短期的な見通しはいずれも1月時点の予想をやや上回っている」
「特に、労働市場は引き続き逼迫しており、コアインフレ率の上昇が続いている」
「中国の成長は第1四半期に回復」
「コモディティ価格は予想にほぼ沿って推移しているが、中国の力強い回復とウクライナでのロシア戦争の影響は依然として上振れリスクの主な要因」
「1月以降、金融環境は引き締まり、ドル高となった」
「カナダでは2022年第4四半期の経済成長率は横ばいで、予測を下回った」
「制限的な金融政策が家計を圧迫し続けており、企業の投資は国内外の需要の減速とともに弱まった」
「労働市場は依然として非常に逼迫している」
「雇用の伸びは驚くほど力強く、失業率は歴史的な低水準に近く、求人数は増加」
「1月のインフレ率は5.9%に低下」
「今後数四半期の経済成長の鈍化により、労働市場への圧力は緩和すると予想」
「これにより、賃金の伸びが緩和され、競争圧力が高まり、企業が消費者に高いコストを転嫁することがより困難になる」
「全体として、最新のデータはCPIインフレ率が今年半ばに約3%に低下するという予想と一致」
「コアインフレ率は前年比で約5%まで低下する見通し」
「インフレ率を2%の目標に戻すには、短期的なインフレ期待と同様に、両方ともさらに低下させる必要がある」
「量的引き締めは、この制限的なスタンスを補完」
「理事会は経済発展と過去の利上げの影響を引き続き評価し、インフレ率を2%の目標に戻すために必要なら、政策金利をさらに引き上げる用意がある」
「物価安定を回復するという確固たる決意を維持している」
9日00:25 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
「利上げのペースについて決定していないと強調」
「FRBは求人件数とCPI、PPI、雇用統計に注目している」
「ターミナルレートは予想以上に高くなる可能性」
「インフレ率は低下しているが、非常に高い水準」
「米ドルは世界の基軸通貨として唯一無二」
9日04:00 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
「2023年初頭の全体的な経済活動はわずかに拡大した」
「6地区は前回の報告以降、経済活動にほとんど変化がないと報告した一方、他の6地区は経済活動が緩やかなペースで拡大したと報告」
「全体として、サプライチェーンの混乱は引き続き緩和」
「いくつかの地区は、高インフレと高金利が引き続き消費者の可処分所得と購買力を低下させていると指摘」
「製造活動は縮小期を経て安定した」
「労働市場の状況は引き続き堅調」
「雇用は一部企業による雇用凍結や解雇の散発的な報告にもかかわらず、ほとんどの地区で緩やかから適度なペースで増加し続けた」
「賃金は全般的に緩やかなペースで上昇したが、一部の地区は賃金圧力が幾分緩和したと指摘。来年は賃金上昇がさらに鈍化すると予想される」
「多くの地区で物価上昇が抑えられたものの、インフレ圧力は依然として広範囲に及んだ」
「一部の地区は、企業がコスト増を消費者に転嫁することがより困難になっていると指摘」
「販売価格はほとんどの地区で緩やかに上昇し、いくつかの地区では減速が見られた」
「今後、価格上昇が年間を通じて緩やかに続くと予想」
※時間は日本時間
<ドル円=136円半ばまで上昇した転換線が支持に>
下影陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けているため、三役好転の強い買いシグナルが点灯している。2手連続陽線で転換線を上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。
本日は136円半ばまで上昇してきた転換線を支持に押し目買いで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス2 138.17(2022/12/15高値)
レジスタンス1 137.91(3/8高値)
前日終値 137.36
サポート1 136.59(日足一目均衡表・転換線)
サポート2 135.26(3/1安値)
<ユーロドル=転換線を抵抗に戻り売りスタンスは変わらず>
小陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、雲の下で引けたことで、三役逆転の強い売りシグナルが点灯中。反発した場面でも1.05ドル後半の90日移動平均線が重しとなった。2手連続陰線で転換線を下回って引けており続落の可能性が示唆されている。
本日も1.06ドル前半に位置する転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 1.0610(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.0545
サポート1 1.0484(1/6安値)
<ユーロ円=3/8安値を支持に押し目買い、転換線が上昇>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシグナルが点灯している。145円台では伸び悩んだが、孕み線で切り返して転換線を上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。その転換線は144円半ばまで上昇してきた。
本日は8日の安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 145.57(3/2高値)
前日終値 144.85
サポート1 144.24(3/8安値)
<豪ドル円=転換線を抵抗に戻り売り、雲のねじれに要警戒>
陽線引け。雲の中で引けているものの、転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回っており売りシグナルが優勢な展開。孕み線で反発したものの転換線を下回って引けており反落の可能性が示唆されている。本日は、転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。
もっとも本日は雲がねじれて反発する「変化日」となる可能性があるため、警戒しておきたい。
レジスタンス1 91.23(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 90.51
サポート1 89.53(1/19高値)
情報提供元:DZHフィナンシャルリサーチ社
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