24日のニューヨーク外国為替市場でドル円は3営業日ぶりに反発。終値は136.48円と前営業日NY終値(134.70円)と比べて1円78銭程度のドル高水準だった。日銀総裁候補の植田和男氏が衆院の所信聴取で「現在の金融政策は適切」との見解を示すと、金融緩和策の修正に対する警戒感が和らいだ。海外市場に入っても円売りが出やすい地合いとなった。
NY市場に入ると、米連邦準備理事会(FRB)が金融政策を判断するうえで重視している1月米個人消費支出(PCE)価格指数(デフレーター)で変動が激しい食品とエネルギーを除くコアデフレーターが前年比4.7%上昇と予想の4.3%を上回ったことが明らかに。FRBによる金融引き締めの長期化が意識されて、米金利上昇とドル買いが進んだ。4時前には一時136.52円と昨年12月20日以来約2カ月ぶりの高値を更新した。
ジェファーソンFRB理事が「インフレに迅速かつ強力に対処する」と述べたほか、コリンズ米ボストン連銀総裁が「米インフレはなお高すぎる、インフレ抑制に向け一段の利上げが必要」との考えを示したことも相場の支援材料。
ユーロドルは5日続落。終値は1.0548ドルと前営業日NY終値(1.0596ドル)と比べて0.0048ドル程度のユーロ安水準だった。欧州時間発表の10-12月期独国内総生産(GDP)改定値が予想を下回ったことでユーロ売りが先行。米インフレ指標の上振れで米利上げが長期化するとの観測が高まるとドル買いが活発化し、23時30分前に一時1.0536ドルと1月6日以来の安値を更新した。NY午後に入っても戻りは限定的となり、1.05ドル台半ばでの推移が続いた。
ユーロ円は3日ぶりに反発。終値は143.84円と前営業日NY終値(142.70円)と比べて1円14銭程度のユーロ高水準。植田氏の所信聴取を受けて、日銀による大規模な金融緩和が当面続くとの観測から円売り・ユーロ買いが優勢となった。2時30分過ぎに144.01円と本日高値を更新した。
日銀による大規模な金融緩和が当面続くとの観測を背景に、ユーロ円以外のクロス円も堅調だった。ポンド円は一時163.12円、NZドル円は84.20円、カナダドル円は100.33円、スイスフラン円は145.33円、南アフリカランド円は7.41円、メキシコペソ円は7.43円まで値を上げた。
本日の東京外国為替市場のドル円は、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めの長期化観測と日銀新体制による現状の緩和策維持の見通しから堅調推移が予想される。
本日13時10分からは参院議院運営委員会において、植田日銀総裁候補への所信聴取・質疑が予定されている。24日の衆議院での内容とほぼ同じだと思われるが、関連ヘッドラインには警戒しておきたい。
米国1月の消費者物価指数(CPI)や卸売物価指数(PPI)に続き先週は、FRBがインフレ指標と注視しているPCE価格指数でも、インフレ抑制傾向のペースが鈍化しつつある可能性が示された。先週末は米10年債利回りは3.97%台まで上昇し、ドルも全面高の展開となっている。
米国1月の総合PCE価格指数が前年比+5.4%、前月比+0.6%、コア指数も前年比+4.7%、前月比+0.6%とインフレ抑制のペース鈍化が示された。これを受けてFF金利先物市場では、6月までにFF金利が5.25-5.50%まで引き上げられ、より長い期間にわたり高金利水準が維持されるとの見方が強まっている。
一方で日銀新体制の金融政策は、植田次期日銀総裁候補が24日の所信聴取で、イールドカーブコントロール(YCC)の副作用や上場投資信託(ETF)の問題点に言及しながらも、現状の金融緩和政策の維持を表明した。これらにより、日米金融政策の乖離観測を受けたドル高・円安トレンドが再開しつつある。
ドル円の目先の上値の関門は、200日移動平均線の137.14円や昨年12月20日のYCC許容変動幅拡大ショック時の高値137.48円付近にある。
そして、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性にも警戒しておきたい。本邦通貨当局はドル高・円安の相場水準だけなく、ボラティリティーを抑えるという名目で円買い介入を断行しており、昨年9月と10月の介入は、ボリンジャー・バンドでの+2シグマ超えで断行されていた。米国財務省報道官は、当時「日銀は外為市場に介入した。このところ高まっている円のボラティリティーを下げることを目的とした行動だった理解している」と述べ、ボラティリティー抑制のための円買い介入を容認していた。
本邦通貨当局のドル売り・円買い介入の水準を検証すると、ボリンジャー・バンドのミッドバンドに一目・基準線(過去26日間の中心値)とほぼ同様の「26日」移動平均線を使用し、標準偏差「+2σ」に接近したボラティリティー上昇局面で円買い介入を断行していることが観察される。
昨年9月22日の第1弾の円買い介入(2兆8382億円)の時の一目均衡表・基準線は140.28円であり、高値との乖離率は3.8%だった。
10月21日の第2弾の円買い介入(5兆6202億円)の時の一目均衡表・基準線は146.16円であり、高値との乖離率は3.8%だった。
10月24日の第3弾の円買い介入(7296億円)の時の一目均衡表・基準線は146.16円であり、高値との乖離率は2.4%だった。
本日の一目均衡表・基準線は132.31円、3.8%の乖離は137.30円台となる。
※時刻表示は日本時間
<国内>
○13:10 ◎ 参院議院運営委員会による植田日銀総裁候補への所信聴取・質疑
○14:00 ◇ 12月景気動向指数改定値
<海外>
○16:00 ◇ 1月トルコ貿易収支(予想:144.0億ドルの赤字)
○18:00 ◎ ブロードベント英中銀(BOE)副総裁、講演
○19:00 ◎ 2月ユーロ圏経済信頼感指数(予想:101.0)
○19:00 ◎ 2月ユーロ圏消費者信頼感指数(確定値、予想:▲19.0)
○21:00 ◇ 1月メキシコ貿易収支
○22:30 ◇ 10-12月期カナダ経常収支(予想:110.0億カナダドルの赤字)
○22:30 ◎ 1月米耐久財受注額(予想:前月比▲3.9%/輸送用機器を除く前月比0.1%)
○24:00 ◎ 1月米住宅販売保留指数(仮契約住宅販売指数、予想:前月比1.0%/前年比なし)
○28日00:30 ◎ ジェファーソン米連邦準備理事会(FRB)理事、討議に参加
○28日00:45 ◎ デコス・スペイン中銀総裁、講演
○28日02:00 ◎ レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
24日09:35 植田日銀総裁候補
「消費者物価上昇は需要の強さによるものではない」
「内外経済の不確実性は大きい」
「消費者物価は来年度半ばにかけて2%を下回る」
「景気と物価の現状と見通しに基づき政策を運営する」
「現在の金融政策は適切」
「金融緩和を継続し経済支え、賃上げできる環境を整える必要」
「目標の2%の持続・安定的な達成にはなお時間」
「総裁就任なら発言や言動のインパクトを認識し職責を果たす」
「政府と中銀が十分な意思疎通を図ることが重要」
「まだまだ物価上昇続くが、インフレ率は1月がピーク」
「2月のデータからインフレ率は大幅に下がる」
「基調的な物価2%が見通せれば、政策正常化に踏み出すことが出来る」
「毎回の決定会合で様々な検証を行っている」
「追加的な特別な検証、ほかの委員と相談し必要に応じて検討」
「基調的な物価の動き、好ましいものが出始めている段階」
「共同声明の2%早期達成、表現を当面変える必要はない」
「YCCの将来、様々な可能性が考えられる」
「YCCの修正、具体的な選択肢を言及することは不測の影響を及ぼすリスク」
「基調的な物価見通しが一段と改善する姿なら正常化方向での見直しを考えざるを得ない」
「出口戦略は時期尚早」
「国債購入、物価安定目標の観点から継続性を検討」
「長期国債の大量購入による量的緩和、ある程度の効果もつ」
「マイナス金利が経済支え、企業収益や借入にプラス」
「政策運営、時と場合によってはサプライズ的になることも避けられない」
「金融引き締めを急に行うと健全な企業に負荷をかける」
24日13:07 内田日銀副総裁候補
「金融緩和を継続し、日本経済をしっかり支える必要」
「この先も金融緩和が必要」
「副作用があるから緩和を見直すのではなく、工夫凝らして継続」
「出口については当然ながら当初から考えている、適切に対応することが出来る」
「予想物価上昇率は上昇しているが、2%には距離」
24日14:13 氷見野日銀副総裁候補
「日銀は金融緩和通じて経済支えることが一番重要」
「海外経済の不確実性は大きい、金融緩和を続けていくのが適切」
24日16:35 イエレン米財務長官
「インフレ率は低下しており、今後さらに低下すると予想」
「米労働市場は力強い」
24日17:16 ナーゲル独連銀総裁
「基調的なインフレ圧力は依然として非常に高い」
「3月以降に追加的な大幅利上げが必要とされる可能性がある」
24日18:45 岸田首相
「植田日銀総裁候補の発言は政府として違和感のある内容ではなかった」
「正式に決定したらできるだけ早く日銀総裁と会い、政府と日銀の連携を確認したい」
24日22:19 メスター米クリーブランド連銀総裁
「次の会合での利上げ幅について予断を持たず」
「金利は5%を幾分超えた水準に達するべき」
「インフレリスクは依然として上向きに傾いている」
「労働市場が堅調なため、政策のアンダーシュートや時期尚早の緩和コストはオーバーシュートのコストを依然として上回っている」
25日00:43 ジェファーソンFRB理事
「賃金の伸びは依然として高すぎる。持続可能な2%のインフレ率への復帰と一致しない」
「労働力の需要と供給の不均衡が続いていることは、高インフレが緩やかにしか低下しない可能性を示唆」
「政策立案者はリアルタイムのデータを注意深く精査し、経済モデルからの調査結果を補完する必要がある」
25日00:48 テンレイロ英中銀金融政策委員会委員
「金融状況は引き締まっている」
「英国のインフレは低下すると予想」
「行き過ぎた金融引き締めのリスクを認識」
25日01:46 ブラード米セントルイス連銀総裁
「米国では軟着陸が可能」
「現在は信頼できるディスインフレに該当する可能性がある」
「インフレ期待は現在、2021年のインフレ上昇前の水準に近い」
25日03:42 コリンズ米ボストン連銀総裁
「高過ぎるインフレに対処するため、更なる利上げが必要」
「金利を引き上げ、水準を長期間維持する可能性もある」
「最近の米経済指標は追加利上げの根拠となる」
「FRBがインフレを低下させ、ソフトランディングを達成できると楽観的」
「経済への悪影響を含め、多くのリスクがあることを認識している」
※時間は日本時間
<ドル円=雲の上限を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の中で引けているものの、買いシグナルが優勢な展開となっている。本日27日の雲の上限は24日の136.91円から134.86円まで低下しているため、三役好転の強い買いシグナルが点灯する。抱き線で切り返して転換線を上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。
本日は、低下した雲の上限を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス2 137.48(2022/12/20高値)
レジスタンス1 137.14(200日移動平均線)
前日終値 136.48
サポート1 134.86(日足一目均衡表・雲の上限)
サポート2 134.54(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロドル=低下中の転換線を抵抗に戻り売りスタンス>
陰線引け。雲の中で引けているものの、転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、売りシグナルが優勢な展開となっている。5手連続陰線で転換線を下回って引けており続落の可能性が示唆されている。
本日は、低下中の転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 1.0641(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.0548
サポート1 1.0484(1/6安値)
<ユーロ円=上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けているため、三役好転の強い買いシグナルが点灯中。2手連続陰線の後、抱き線で切り返して転換線を上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。
本日は上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 144.62(2022/12/16安値)
前日終値 143.84
サポート1 143.16(日足一目均衡表・転換線)
<豪ドル円=2/21高値を抵抗に戻り売りスタンス>
小陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けているため、三役好転の強い買いシグナルが点灯している。しかし、孕み線で反発したものの転換線を下回って引けており反落の可能性が示唆されている。
本日は21日の高値を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同水準を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 93.01(2/21高値)
前日終値 91.80
サポート1 90.84(日足一目均衡表・雲の上限)
情報提供元:DZHフィナンシャルリサーチ社
フォレックス・ドットコムでは、ノックアウトオプション、FX、株価指数CFDを取引いただけます。
口座開設は以下のステップで行えます。
本レポートに記載されている情報や見解は、一般的な情報としての使用のみを目的としたものであり、FX、CFD、その他あらゆる金融商品の購入や売却に関する勧誘や依頼の意図は全くありません。本文書に記載されている見解や情報は、予告や通知なく変更されることがあります。本文書は、特定の投資目的や背景、特定の受領者の意思などに沿って書かれ配布されたものではありません。本文書内で引用・言及されている過去の価格データは、当社独自の調査や分析に基づいており、当社はそのデータの提供元やそのデータそのものの信頼性につき、いかなる保証もせず、また筆者や訳者、各国の支社・ 支店も、本文書の内容の正確性や完全性についても一切保証しません。本文書の内容に基づく直接または間接の損失、そして本文書を信頼したことにより生じた損失についても、当社は一切その責を負いません。
本レポートに記載されている情報や見解は、一般的な情報としての使用のみを目的としたものであり、FX、CFD、その他あらゆる金融商品の購入や売却に関する勧誘や依頼の意図は全くありません。本文書に記載されている見解や情報は、予告や通知なく変更されることがあります。本文書は、特定の投資目的や背景、特定の受領者の意思などに沿って書かれ配布されたものではありません。本文書内で引用・言及されている過去の価格データは、当社独自の調査や分析に基づいており、当社はそのデータの提供元やそのデータそのものの信頼性につき、いかなる保証もせず、また筆者や訳者、各国の支社・ 支店も、本文書の内容の正確性や完全性についても一切保証しません。本文書の内容に基づく直接または間接の損失、そして本文書を信頼したことにより生じた損失についても、当社は一切その責を負いません。