クニカル
MACDはMoving Average Convergence Divergenceの頭文字を取ったもので「マックディー」と読みます。日本語では移動平均収束拡散と訳され、移動平均線が近づいたり(収縮)、広がったり(拡散)する動きを計算してサブチャートに表示します。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/期間12.26.9/9月15日取得
MACDに表示されるMACD線とシグナル線の2本の交差によりトレンドの転換点を値動きで判断するよりも早く察知できる特徴があります。またヒストグラムや0ラインによりトレンドの方向性も同時に把握できるため、トレンド中の売買タイミングをピンポイントで判断することができます。
ここではMACDで使われる用語の解説を簡単な計算式と一緒に解説します。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/期間12.26.9/9月15日取得
MACD線は短期の移動平均線と長期の移動平均線の差がどれくらいあるのかを線で表示したもので、計算にはEMA(指数平滑移動平均線)を用います。EMAを使ってMACD線を算出することでトレンドの転換シグナルがより早く出現しやすく、直近のトレンドに追従しやすくなっています。
EMAの期間設定は短期12、長期26が主に使用され、計算式は「短期EMA – 長期EMA」で算出されます。単純にMACDと表示されることもあります。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/期間12.26.9/9月15日取得
シグナル線はMACD線を単純平均化したもので、期間は主に9が使用されます。単純平均化とは、例えば期間9の場合、期間内のMACD線の値を全て足して9で割った数字がシグナル線の値となりそれを繋げたものがシグナル線となります。単純移動平均線の対象を終値ではなくMACD線に変えたものと理解して構いません。
MACD線よりも緩やかな動きになるため、長期的な値動きの目安として使います。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/期間12.26.9/9月15日取得
ヒストグラムはMACD線とシグナル線の間隔を棒グラフで表示したものです。ヒストグラムがプラス方向にあるときは買い方向、マイナス側にあるときは売り方向への圧力が強いことを表します。ヒストグラムは2本の線の間隔を表示しているため、プラスからマイナスに転じたとき、マイナスからプラスに転じたときはそれぞれMACD線とシグナル線が交差したことを表します。2本の線の交差は売買シグナルとなるのでヒストグラムの転換でも察知することができます。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/期間12.26.9/9月15日取得
0ラインはヒストグラムのプラス圏とマイナス圏の境目にあるラインですが、現在のトレンドを分ける境界線としての機能もあります。MACD線やシグナル線が0ラインよりも上にあれば上昇トレンド、0ラインよりも下にあれば下降トレンドと判断する目安として利用できます。
ここではMACDをどう見ればいいのか、それぞれが出すサインに分けて解説していきます。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/期間12.26.9/9月15日取得
MACDを使って売買をする際にまず確認したいのは、ヒストグラムやMACD線、シグナル線が0ラインのどちら側にあるかです。例えばMACD線とシグナル線が0ラインよりも下側にある状態でヒストグラムが0ラインよりも上側にある場合、上昇トレンドが発生または継続の可能性があり売買チャンスが近いことがわかります。無駄な取引を減らすためにも各サインが出る前の各指標と0ラインとの位置関係をまずは確認しましょう。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/期間12.26.9/9月15日取得
MACD線とシグナル線の交差はトレンドの転換を示唆します。特に0ラインから離れたところで2本の線の交差が起きた場合、それまで続いていたトレンドが転換した可能性があり信頼度が高いとされます。逆に0ライン付近での2本の線の交差はほとんど機能しないので見送る必要があります。
MACD線がシグナル線を下から上抜けた場合をゴールデンクロス、MACD線がシグナル線を上から下抜けた場合をデッドクロスと呼びます。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/期間12.26.9/9月15日取得
MACD線とシグナル線が交差しただけではトレンド転換に失敗し、サインがダマシとなることも多く見られます。そこで2本の線の交差に加えてMACD線・シグナル線が0ラインと交差するまで待つ方法があります。MACD線やシグナル線が抜けた方向にトレンドが発生する傾向があり、売買サインの信頼度が高まります。ただし短期的なトレンドだった場合、エントリーが遅れることですでに売買タイミングとしては遅いこともあります。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/期間12.26.9/9月15日取得
ダイバージェンスとは価格とテクニカル指標が逆行している動きのことを指します。例えば価格が高値を更新しているのに対して、MACD線とシグナル線が高値を更新できず切り下げている場合です。大きなトレンドの転換を示唆するサインですので、売買サインの発生でエントリーしたりポジション保有時は利益確定をするなどの目安に利用します。
単体でも十分な取引サインを持つMACDですが、他のテクニカル指標と組み合わせることでさらに確度の高いサインとして利用することができます。ここでは実際のチャートを使ってMACDと他のテクニカル指標を組み合わせた取引例を解説します。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/期間12.26.9/9月15日取得
上図チャートは2020年から2021年にかけてのUSDJPY日足です。長い下落トレンドが形成されていましたが、①の位置でMACDとシグナル線のゴールデンクロスが発生しヒストグラムが0ラインを越えました。しかしボリンジャーバンドは下向き、MACD線とシグナル線も0ラインの下側なので見送りです。その後②の位置でMACD線とシグナル線が0ラインを越え、直後に③の位置でボリンジャーバンドが上向きになり価格がミドルラインを上回ったことを確認、次の足で買いのエントリーです。決済はその後ダイバージェンスが発生した位置で行っています。
結果①の位置から買ったとしても勝ちにはなった場面ですが、リアルタイムで値動きを見ていた場合①ではまだまだ下落しそうな雰囲気がある場所です。②のMACDのサインに加えて③のボリンジャーバンドの転換の示唆を重ねることで確度の高いサインでのエントリーをおこなうことができました。
出所:FOREX.com/Japan 225/日足/期間12.26.9/9月15日取得
上図チャートは2022年から2023年にかけての日経225の日足です。価格は長期間にわたって横ばいで推移しておりレンジ内の逆張りが有効な場面です。レンジ内と言ってもMACDのサインだけでは信頼度に欠けますので、RSIの買われ過ぎ売られ過ぎの判断を加えて売買サインの確度を高めています。
①の場面ではレンジ上限付近でRSIが70に到達、直後にMACD線とシグナル線のデッドクロスが発生したので売りエントリー。決済はRSIの30ライン到達で行っています。②の場面では①のエントリー決済後すぐにMACD線とシグナル線のゴールデンクロスが発生したのでドテンで買いエントリー。決済はMACD線とシグナル線の交差で行っています。③の場面ではRSIが30に到達してからしばらく下落が続いていましたが、その後MACD線とシグナル線のゴールデンクロスが発生したところで買いエントリー。MACD線とシグナル線の交差で決済をしています。
どのエントリーも2つの転換根拠が同時に起こっていること、どちらかの根拠が崩れたら決済していることが共通しています。また赤丸のような位置は転換根拠が片方だけなので見送りとしています。結果勝ちになったであろう場面もありますが、結果論ですのでリアルタイムでは確度の高い場面を選択するように気を付けておきましょう。
前の記事:
次の記事: