米ドルは先月、今年の最安値を付けた後で急速な反転を見せて以降、強さを保ち続けている。
今回のWebセミナーの冒頭で述べたように、今週は先週の価格変動要因が市場でどのように咀嚼されるかを見極めるタイミングになる。米ドルの7月中旬のブレイクダウンやユーロ/米ドルのブレイクアウトと同様、大きな問題は、強気筋が安値の上昇をサポートしに入り、値上がりが続くかどうかだ。これまでのところユーロ/米ドルでは値下がりの反応が見られ、価格が短期的な下降圧力を示し続けている。
ここからより大規模な反転が進行しているのではないかという疑問が生まれる。先週の価格要因を簡潔にまとめると、欧州中央銀行(ECB)がハト派的な姿勢を強め、米国の耐久財やGDPが予想を上回ったことを受けてFOMCがデータ重視の姿勢を示した。特に木曜日は、この一連の要因が重なり、多くの市場が強い動きを見せた。先週木曜日の記事では、これらの要因の具体的なタイミングと関連する市場への影響について述べた。
現段階では、FRBによる今年の追加利上げへの期待は低く、Webセミナーの時点では28.5%となっていた(下のスクリーンショット)。今週の後半にはサービス業PMIと非農業部門雇用者数が発表され、この問題を検討する上でより多くの材料が加わると思われる。
2023年12月にかけての米国FOMC利上げ予想 (CME Fedwatchによる)
知チャート作成:James Stanley; CME Fedwatchのデータによる
FRBの年内再利上げの可能性は28.5%程度と見込まれているに過ぎないが、木曜朝の発表以来、長期金利は上昇を続けている。GDPと耐久財が予想を上回ったことで、10年物国債の利回りが再度4%を上回った。
米国10年物国債日足チャート(参考用)
チャート作成:James Stanley、Tradingviewのデータによる
先週見たように、7月中旬の消費者物価指数(CPI)発表後に発表された米ドルのブレイクダウンはその後回復している。先週火曜日のWebセミナーで見た時点では、米ドル相場は重要なポイントを維持しており、弱気戦略の可能性は残されていた。
先週の水曜日、FRBの金利政策が発表された後、このシナリオが実現するかと思われたが、木曜日の朝にはDXYの日足チャートに強気のローソクが形成された後、すぐに相殺された。翌朝には値上がりが続き102まで押し上げられた。この水準は6月のサポートであった重要な点であり、フィボナッチ水準の合流点でもある。
過去のサポートラインだったレジスタンスラインを試すプルバックが起きたことから、今週の始めにかけて弱気筋には希望が残されていた。しかし今のところはまだ強気筋が押しており、ここから今週後半に発表されるサービス業PMIとNFPに注目が集まっている。米国で強い経済データが続いていることから、特に欧州ではECBの利上げに対する欧州のデータの反応の速さについて懸念が示されている中、この強気のトレンドは今後も続く可能性がある。
短期的には、強気筋が101.80~102のレジスタンスゾーンのサポートを維持しているため、短期的なトレンドの可能性は残っている。その下の101.50レベルは引き続き注目すべき水準であり、ここでのサポートが維持されれば、値上がりシナリオの可能性は引き続き残されるかもしれない。
米ドル指数 – 米ドル日足チャート(参考用、FOREX.comプラットフォームでは利用できません)。
チャート作成:James Stanley、Tradingview のデータによる
ユーロ/米ドルの7月のローソクが付き、現時点では以下とおり、ブレイクアウトは失敗したかのように見える。
ユーロ/米ドル月足チャート
チャート作成:James Stanley、 Tradingview のユーロ/米ドル
短期的には、過去のレジスタンスの周囲でより高めの安値を保持していることから、強気筋にはまだ息がある。これは、2週間前に61.8%のマーカーが高値を捉えたのと同じフィボナッチリトレースメントからの50%の地点だ。日足チャートの次のサポートは1.0845ドル付近で、強気筋がここを守れなければ、長期的な弱気相場への反転の見通しが強まり始めるだろう。
その下の大きなサポートは同じフィボナッチリトレースメントの38.2%のマーカー付近で、これは2020年3月のスイングローである1.0636と合流する地点だ。
ユーロ/米ドル週足チャート
チャート作成: James Stanley、Tradingviewのユーロ/米ドル
先週は日銀の金利決定もあり、その前後で米ドル/円はかなりの乱高下を見せた。まず、政策決定前に日銀がイールドカーブコントロール政策の微調整を考えているというリークがあった。ここからより大きな政策転換につながるとトレーダーが期待していたため、円高に拍車がかかった。
しかしそうはならず、植田和男日銀総裁はその夜の利上げ決定で、必要であれば日銀はさらなる景気刺激策を講じる可能性があると発言した。これを受けて円相場は急回復し、米ドル/円は3日連続で大幅な高値を付けている。
ここでの苦境は、米ドル/円が145円台を再テストし始めた6月下旬に見られたものと同じになる可能性がある。当時はここで政府の介入の懸念が再び高まり、7月の米消費者物価指数(CPI)発表まで強い反転が続き、最終的に137.68付近の重要なサポートレベルで安値をつけた。Webセミナーでは、フィボナッチリトレースメントから見た短期的なサポートの可能性について、いくつかの背景を共有した。
米ドル/円日足チャート
チャート作成:James Stanley、 Tradingviewの米ドル/円
今週木曜日にはイングランド銀行の政策金利決定が行われる。
ポンド/米ドルは、過去には強い主要通貨の一つであり、6月のBOEの利上げはサプライズだった。25bpの利上げが目されていた中で、50bpの利上げに踏み切ったのだ。英国のインフレは依然活発で、直近のCPIではコアインフレが6.9%、ヘッドラインは7.9%だった。しかし、これは予想をやや下回り、ポンド/米ドル安につながった。
現時点では、ポンド/米ドルは長期トレンドラインの下を試しており、少し下には1.2667ドル付近のサポートがある。この1.2667ドルは、約1年ごとに2回の価格変曲が起きた地点だ。そして特筆すべきことに、この水準より下にはそれほどサポートがあったことはない。木曜日に行われる金利決定が興味深い舞台となりそうだが、このところの米ドル高からのフェードアウトを狙っている向きには、現在のマクロ状況を考慮すると、ポンド/米ドルが選択肢となりそうだ。
ポンド/米ドル日足チャート
チャート作成:James Stanley、 Tradingviewのポンド/米ドル
米ドル/カナダドルは、先週の花火のような状況でも落ち着いた動きを見せており、興味深い。このペアについて最近議論しているように、私はこれを長期レンジの中の短期レンジとして追跡している。
この短期レンジは6月にブレイクし始めたが、売り手はそれほど遠くには進まなかった。下の週足チャートからは、1.3150ドルを下回ろうとするテストが何度も行われたが、いずれも続かなかった。このため下降ウェッジが形成され、買い手は最近、この形成の上方へのブレイクアウトを試み始めている。次のレジスタンスは1.3338ドル付近のフィボナッチレベルで、その後は1.3403ドル周辺が視野に入ってくる。
米ドル/カナダドル週足チャート
チャート作成: James Stanley、 Tradingviewの米ドル/カナダドル
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