出所:FOREX.com/US SP 500/週足//11月20日取得
上図は過去20年のS&P500の週足チャートです。①の赤丸で囲った位置はサブプライム問題によりアメリカで大量の住宅ローンが不良債権化した期間です。それが原因で②の青丸の位置でリーマンブラザーズの破綻によるリーマンショックに波及しています。③の緑丸の位置では中国人民銀行が突然人民元を切り下げた人民元ショックと、それに端を発する原油安による中国ショック、④の黄色丸の位置では記憶に新しいコロナショックが発生しています。
金融ショック直後はS&P500も一時的に大きく下落していますが、その後の価格は金融ショック前を上回る高値を必ずつけています。これには次に続く理由が関係しています。
S&P500はアメリカ企業の上位500社の株価を元に計算されていますが、その採用条件は厳しく「時価総額が145億ドル以上あること」「直近4半期で黒字利益を維持していること」など5項目以上の厳しい審査がされています。この条件を満たせない場合、年4回行われる採用銘柄のリバランスで除外されます。つまりS&P500に採用されている銘柄は現在最も利益を上げられる企業500社と言えるでしょう。そのため時代や環境が変化してもその時に勢いのある企業が採用されているので、成長し続けられる株価指数なのです。
日本の高度経済成長期はただ単に景気が良かったわけではなくて、日本の人口が増加し続けていたことにも要因があります。人口増加はその国の経済成長に大きく繋がりますが、アメリカは今後の人口増加が長期的に続くと予想されておりまだまだアメリカ経済は成長していく可能性が高いのです。アメリカを代表する株価指数であるS&P500も人口増加に伴って更なる価格上昇が見込まれています。
S&P500は成長し続ける前提とするならば、ダウ理論を使って上昇トレンドとなったタイミングでトレンドに乗っていけば大きな値幅を狙える可能性が高いと言えます。ここではS&P500に絞ったトレードアイデアを解説していきます。
ダウ理論とは相場のトレンド発生を6つの性質を使って判断する分析方法のひとつです。その6つ性質の中に「トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する」がありますが、これを応用してトレードを行なっていきます。ダウ理論における上昇トレンドの定義は「高値を更新し安値も切り上がっている」ことが条件となっていますので、どちらかが満たされていない場合はトレンドが継続しているとは言えない状況となります。これを踏まえてS&P500のチャートを確認してみましょう。
出所:FOREX.com/US SP 500/4時間足//11月20日取得
上図はS&P500の4時間足チャートでトレンドが発生した場面を切り取りました。チャート左側から右へ向かって確認していきます。
①の赤丸はチャート上で確認できる最安値ですので、ここからトレンドの発生を追いかけていきます。
②の緑丸で高値をつけた後、③の赤丸の安値をつけましたがまだこの時点では安値の切り上げとはなりません。②の高値(緑線)を超えて「高値の更新」がなされれば③赤丸が新しい安値となり切り上げが確定となります。つまり④の位置で初めてトレンドの発生となります。
⑤の緑丸で新たな高値が発生し⑥の安値をつけましたが、安値の切り上げは⑦の位置で高値が更新されたらとなりますので間違えないようにしましょう。続いて⑧で高値⑨で安値をつけて⑩の位置で高値が更新、トレンドの継続となり安値の切り上げが確定します。
最後に⑪の位置でつけた高値を更新できずに⑫の位置で⑨の安値を割ってしまったので「高値が更新し安値が切り上がる」定義が崩れ、ここでトレンドが終了となります。
出所:FOREX.com/US SP 500/日足//11月20日取得
S&P500の特徴としてトレンドが発生すると一方的に上昇を続けやすいことが挙げられます。上図チャートは下落トレンドから上昇トレンドに転換した場面ですが、画面左側で大きな下落があります。そこから大きく上昇を始めていますが、この位置はまだ下降トレンド中ですので今回のトレードアイデアではトレードするべきところではありません。
その後①の最安値を作った波の起点(最後の戻り高値)を②の位置で価格が上抜けることで下降トレンドが終わりを告げました。ここでの注意点はまだ下降トレンドが終わっただけで上昇トレンドに転換したわけではないということです。この③のゾーンを「トレンドレス=レンジ」と呼び、価格は上にも下にも行きやすい状態です。値動きを見ても価格は上下に行ったり来たりと方向感がありません。ここでもまだトレードするべき場面ではないですが、上昇トレンドが発生する下準備は整ったのでエントリーの準備はしておきます。
その後下降トレンドを終わらせた④の高値を⑤の位置で価格が抜くことで「高値の更新と安値の切り上げ」が行われトレンド発生となり、買いでエントリーを行う位置です。トレンド発生後の価格推移にはトレンドレス状態時のような一定幅で価格が上下に触れる動きは見られません。
S&P500の過去チャートではこのようなトレンド発生後に大きな下落が見られない箇所が多数存在します。これを踏まえてトレードするべき場所を見ていきましょう。
出所:FOREX.com/US SP 500/日足//11月20日取得
上図は2023年11月20日現在のS&P500の日足チャートです。黒矢印で示した最安値を作った波の起点である①の高値が下降トレンドを支える最後の高値です。これを②の位置で価格が上抜けているので現在はトレンドレス状態となり、価格が上下に振られやすいゾーンとなっています。
今後点線のような動きを見せ③の位置で赤点線の高値を上抜けていけば上昇トレンド発生となり、ここでエントリーできればこれまでの傾向から大きく伸びるタイミングであると推測できます。
上昇することが前提とされる株価指数に加えて、トレンド発生後には大きく下落することがあまりないS&P500の特徴が合わさり、負けにくいトレードを行うことができる位置とタイミングであると言えるでしょう。
チャートを眺めているとトレンドが発生する前でも上昇しそうな雰囲気を醸し出してくる場面がたくさんあります。しかしトレンドが発生する前はどちらの方向に進むかに優位性はありません。むしろこれまでのトレンド方向の方が有利な場面の方が多いかもしれません。
価格推移の方向を予測をすることはトレードシナリオを立てる上で欠かせないことですが、予測の段階ではトレンドが発生する根拠はなく希望でしかないことを理解しておきましょう。今回ご紹介したトレードをうまく行うヒントは、必ずダウ理論におけるトレンドの定義を満たしてからエントリーすることです。なるべく底の方から値幅を取りたい気持ちはわからないでもないですが、小さな値幅を追いかけたせいで余計な負けを増やさないように自制してトレードに臨みましょう。
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