フィボナッチ数列は数列が進むにつれて0.618%に収束する特徴があり、黄金比や黄金分割とも呼ばれる人が心理的に美しく感じる形を形成します。
その中でもフィボナッチ・リトレースメントはFX相場での押し目や戻り目の到達予測点やトレンドの行き着く先などを見極めることに役立つテクニカル指標です。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/9月27日取得
相場はトレンドが出ていても上下に波を描きながら動いていきます。例えば上昇トレンドの中で一時的な調整の波が出た際に「どこまで調整するのか」は誰にもわかりません。そこでフィボナッチ・リトレースメントを使用することで押しや戻しの候補地点をいくつかに絞り込み、取引を有利に進めることができるようになります。
フィボナッチ・リトレースメントに使用する数値は、フィボナッチ数列のなかでも黄金比と呼ばれる数値を主に利用します。黄金比は0.618(61.8%)ですが、1から0.618を引いた0.382(38.2%)、これにFX相場でよく見られる半値戻し(50.0%)を加えた、61.8%、50.0%、38.2%の3つを使って相場を予測していきます。
フィボナッチ・リトレースメントをチャート上でどのように確認すればいいのかを解説していきます。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/9月27日取得
上図チャートは上昇トレンドの波に対してどこまで調整の押しが入るのかを予測したものです。候補3つのうち1番深い61.8%のラインにヒゲ先でタッチした後に上昇が始まっています。もしフィボナッチ・リトレースメントの目安がなければ買うのが少し怖い場面ではありますが、到達点を予測できていることで次の上昇タイミングに根拠を持って狙うことも可能になります。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/9月27日取得
フィボナッチ・リトレースメントの利点はトレンドが転換した後の第3波と呼ばれる値幅を取りやすい波を根本から狙えることです。上昇トレンドの場合は下降トレンドが崩される高値を超えた波に対してフィボナッチ・リトレースメントを引きます。上図チャートでは画面左側の1波と示した動きのことで、次の調整の波がどこまで押してくるかを予測できます。チャートでは61.8%で反応していることがわかります。
フィボナッチ・リトレースメントを見るポイントとして、3つの数値付近に目立つ高値や安値がないかを合わせて確認することです。今回の61.8%の位置には赤丸の最安値をつける前の小さな高値が確認できます。このように2つが重なることで強い反発ゾーンとなるのです。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/9月27日取得
下落トレンドの場合も上昇トレンドを崩した波に対してフィボナッチ・リトレースメントを引きます。上図チャートでは画面真ん中あたりの1波と示した動きのことを指し、次の調整波がどこまで戻ってくるのかを予測できます。チャートでは50.0%の位置で反応しているのがわかります。
そして今回の50.0%の位置には下降トレンドが確定した際の安値がありました。直前の下落でも少し意識されていることもわかります。常に何かと重なることを意識するのが上手く使うコツです。
フィボナッチ・リトレースメントは他のテクニカル指標と違い、起点と終点を自分で決めなければいけません。そのため、トレーダーによってラインを引く位置が違ってしまいうまく機能しないこともあります。
ここでは正しいフィボナッチ・リトレースメントの引き方を覚えましょう。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/9月27日取得
上昇トレンドの場合はまず高値が更新されたのかを確認します。高値が更新されていればその高値を更新した「波の根本」を安値として、直近の高値に向かってフィボナッチ・リトレースメントを引きます。自分の都合に合わせて途中から引いたりしないようにしましょう。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/9月27日取得
下降トレンドの場合は安値を更新しているのかを確認します。安値が更新されていればその安値を更新した「波の根本」を高値として直近の安値に向かってフィボナッチ・リトレースメントを引きます。
稀に逆から引いている方を見かけますが逆引きは「フィボナッチ・エクステンション」と呼び波の到達点を予測する際に利用するもので用途が違いますので注意しましょう。
出所:FOREX.com/USDJPY/日足/9月27日取得
上図は2023年4月から9月にかけたUSDJPY日足チャートで、エリオット波動の第3波から第5波にかけての買いエントリーです。第3波と思われる波が終わり調整下落をしている場面で第3波に対してフィボナッチ・リトレースメントを引いています。価格が反転して第5波が発生する到達点を他の根拠と重ねて探していきます。
1つ目の候補の38.2%の位置は特に重複する根拠もないので38.2%付近での値動きに注目する程度です。2つ目の候補である50.0%は1波の終点位置と重複しています。エリオット波動では第4波は第1波の終点を割り込まないルールがあるので、反転する可能性が高いと想定できます。3つ目の候補は第1波の終点を割り込みエリオット波動が破綻するので候補から除外します。その後の動きを見てみると1つ目の候補である38.2%は抵抗なく抜けてしまっているのでここで候補から外れます。残るは50.0%の位置だけですが価格は50.0%にタッチ後ヒゲで大きく戻しそのまま反転して上昇。第5波の発生となりました。
今回の場合38.2%を抜けてしまうと残るは根拠が重複する50.0%の位置だけなのでタッチ後に抜けきれないことが確定したらエントリーをして構わない場面です。エリオット波動を根拠にしているため、第5波の発生の最終候補は抜けない前提で売買判断を行っています。
出所:FOREX.com/Japan 225/日足/9月27日取得
上図は2023年6月の日経225の1時間足チャートで、少し大きめのレンジを抜け上昇トレンドが発生した場面です。第1波に対する調整がどこまで押してくるのかを予測するためにフィボナッチ・リトレースメントを起点から終点まで引いています。価格が予測地点到達後に反転する根拠を増やすために水平線との重複するところを探していきます。
1つ目の候補である38.2%は重複する水平線がないので除外します。2つ目の候補である50.0%はひとつ前の波の高値との重複がありました。3つ目の候補である61.8%の位置には2回ほど押さえられた高値との重複がありました。その後の動きを見てみると2つ目の候補である50.0%の位置は全く抵抗されること無く勢いよく抜けてしまったのでこの位置は意識されていないことが確認できました。その後最後の候補である61.8%にヒゲ先でタッチをした後に価格は反転し上昇しています。50.0%を抜けた場合候補は残りひとつになるので、61.8%のタッチでエントリーしたいところですが、反転の確認は必ずしておきたいので実際のエントリー位置は小さな高値を越えたチェックマークの位置になります。
フィボナッチ・リトレースメントをもっと有効に使うためのコツを解説します。
フィボナッチ・リトレースメントを使うにあたって1番大事なのは「どこから引くか」です。任意の場所から引いてもよいとされていますので、どこを波の起点や終点と捉えるかはトレーダーの自由ですが、それではあまり機能しないことも事実です。
ポイントは「誰が見ても波の起点、終点である」ことです。それは表示している時間軸でも変わりますし見ている波の大きさでも変わりますが、同じチャート画面を複数人で見ている時に全員がココだねと言える場所をチョイスすることが、フィボナッチ・リトレースメントを効果的に使う考え方であることは覚えておきましょう。
フィボナッチ・リトレースメントはトレンドに対しての押しや戻りを予測するテクニカル指標です。レンジ相場での値動きは基本的にレンジ内の上限下限に到達することが多くなります。フィボナッチ・リトレースメントの黄金比は役に立ちませんのでレンジだと判断できた際は使用しないようにしましょう。
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