経験豊富なトレーダーには周知の事実ですが、米雇用統計発表直後のトレードは、非常に難しいことで有名です。主要項目であるNFP(非農業部門雇用者数)は、事前予測値に対して想定外の誤差が発生するほど予測が困難だというのがその理由の1つですが、これに加えて、意外なことに、強い結果となった場合でも米ドル(USD)が下落する可能性があるためです。それは、米国雇用の大幅な改善は世界経済の成長を示すため、トレーダーは米ドルのような安全資産を手放し、利回りの高い他の通貨を買う、という展開をもたらすためです。
NFPの結果とマーケットの反応の両方を予測するのではなく、発表直後、ボラティリティが落ち着くまでは様子見とし、V字回復の出現を狙ってエントリーします。そうすることで、有利なリスクリワードレシオでトレードすることが可能となります。
V字回復が必ず起きるというわけではありませんが、リスクリワードレシオが有利な状況を利用し、回復時の3分の1でもフェイバーなポジションが持てれば、相応の利益を掴むことができます。また、5分足か15分足を利用することで、V字回復の出現が確認しやすくなります。
わかりやすい例をご紹介します。まずは、下図のチャートを見てください。NFPが14.6万人と発表され、事前予想の8.9万人を大幅に上回った際の値動きです。EUR/USDは、発表後の10分で約35pip下落していますが、その後5分足において、強気を示す下ヒゲの長いローソク足(ハンマー)が出現し、売りから買いにマーケットが転じる可能性が示されました。
まさに、このローソク足のパターンこそ、エントリーのシグナルです。ローソク足の終値水準(1.2890付近)でエントリーし、スパイクの底値のすぐ下(1.2875付近)にストップロスを設定することで、リスクを15pipに限定したポジションを持つことができます。このケースでは、結果的に1.2950まで回復していますので、エントリーのシグナルから60pip以上の上昇となっています。
NFPの発表で、毎回このようなV字回復が出現するとは限りません。また、上述のような潜在的利益をしっかり掴めるというものでもありません。しかし、このようなトレードスタイルであれば、NFPの結果予測や結果に対するマーケットの反応を気にすることなく、有利なリスクリワードレシオでトレードすることが可能となります。