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【FXの基礎知識】買いと売りを同時に保有?両建ての有効性と危険性

両建てとは同じ通貨ペアで買いと売りのポジションを同時に保有する行為を指します。両建てをした時点で損益がロックされるため相場が不安定なときなどのリスクヘッジのひとつとして利用されます。この記事では両建ての有効性と危険性について解説します。

著者 forex.com
2024年8月7日 午前11:38

目次

FXでの両建てとは「買いのポジションと売りのポジションを同時に保有する」手法のひとつです。買いか売りどちらか一方のポジションだけであれば為替レートが予想と逆の値動きをした場合、価格変動による損失が発生するリスクがあります。

 

しかしながら両建てをしていれば買いと売りの損益が相殺されるため損失リスクをカバーすることができます。

両建ては経済効果がない取引になるのでおすすめはできませんが、売り買い両ポジションともに決済取引を前提とした「一時的な両建て状態の取引手法」としては、異なる目的で一部投資家の間では認知されています。

両建てはどのような状態なのか

両建てを行っている状態では価格変動による損益がロックされます。例えば100.000円で買いポジションと売りポジションを同時に保有した場合、価格が上昇すれば買いポジションは含み益となり売りポジションは含み損となります。その結果買いの含み益と売りの含み損が相殺しあい、どちらかのポジションを決済するまで損失が動かなくなります。ただし、買いと売りの価格にはスプレッドが存在するため、同じ価格で同時にエントリーしてもスプレッド分の損失を抱えた状態になることは覚えておきましょう。

両建てに意味はあるのか

損失がロックされることで価格変動による利益も得られず、スプレッド分の損失も抱えてしまう両建てに意味があるか疑問に思う方もいるでしょう。しかし両建てには価格の乱高下や急変動が起こりやすい場面などで有効になる使い方があり、損失の拡大を防いだり利益を守ることができます。一方で損失が生じているポジションを延命するための両建て(損失を先延ばしにする目的)はご法度とされています。両建ては一時的に買いと売りのポジションを持つだけのものとし、すぐに解消することを前提に行わなければいけません。



ここでは両建てが有効に機能する場面とその使い方を解説していきます。経済指標時のリスクカバー、年度末の税金対策など両建てをすることで受けられる有効性を紹介していきます。

イベント時などの急変動をやり過ごす

経済指標などイベントの発表前にポジションを保有している場合、指標発表時の乱高下をやり過ごすために両建てをすることでリスクヘッジを行うことができます。例えば買いエントリーをして含み益を抱えた状態で指標発表時間が近づいていた場合、買いのポジションを保有したままで売りエントリーを行い、一時的な両建て状態にしておくことで、価格が大きく乱高下しても指標発表前の利益額は一時的に維持されますので、指標をやり過ごした後に両建てを解消すれば利益は維持される可能性があります。なお両建てをした時点で為替変動による損益は固定されるので、損益だけ見るとポジションを決済したときと同じ状態になることも覚えておきましょう。

また両建てをしておけば万が一当初の思惑とは反対側に価格が進んだとしても、初めから持っていたポジションを決済し、損失確定したうえで新しいポジションで利益を狙うチャンスがでてきます。経済指標発表前後は相場が乱高下し、相場の予想が難しくなり投機的な取引になってしまいます。基本的には経済指標発表前にはポジションを決済する、発表後に為替相場が落ち着いてからあらためて相場分析をしたうえで新規ポジションをとることをおすすめします。

なお、含み損の拡大を防ぐためだけを目的にした両建ては、その損失は消えることはありません。このような両建て取引は経済合理性がないものになり、なんらメリットはありません。

一時的に利益確定を遅らせる

FXでは利益額に応じて所得税や住民税が課税されますが、これは毎年11日から1231日までに「確定した利益」に対してのみ翌年の確定申告にて申告を行い決定されます。つまり含み益は確定した利益とはならず課税の対象外となります。そこで年度末付近で保有するポジションが含み益を抱えている場合に両建てをして利益を翌年に持ち越す方法もあります。


基本的には両建ては経済合理性を欠く取引でデメリットの方が大きいことを理解しておきましょう。ここでは両建ての危険性について解説していきます。

二重スプレッドで無駄なコストがかかる

両建てを行うと買い取引側と売り取引側の両方にスプレッドがかかります。例えば買い価格が100015円、売り価格が100.000円の状態でポジションを同時に持ち両建てを行った場合、買い取引側は1.5pipsの損失からスタートし、売り取引側も1.5pipsの損失からスタートすることになります。本来1.5pipsのコストで済んでいたところを合計3.0pipsの損失を抱えた状態から取引が始まるというわけです。そしてこの差は埋まることはありません。

通常、両建てをする際はどちらかのポジションを先に持っていることが多く二重スプレッドになっていることに気づきにくいですが、両建てをすること自体に無駄なコストがかかり不利な状況で取引を行っていることを理解しておきましょう。

証拠金が2倍かかるためロスカットの危険性が上がる

両建てをした場合のポジション保有にかかる維持証拠金にはFX会社の取引ルールにより①売り買いのポジション両方の維持証拠金がかかる場合、②売り買いのポジションの維持証拠金が大きいほうだけがかかる場合(MAX方式と呼ばれます)の2種類あることを覚えておきましょう。当社の場合は②のMAX方式を採用しています。

①の方式を採用しているFX会社では両建てを行った場合、ポジションを保有するための維持証拠金が買い側と売り側の両方に必要となり、維持証拠金が増えるため証拠金維持率が下がってしまいます。

もし他のポジションを持っている場合、証拠金維持率を圧迫しロスカットの危険性が上がります。また時間帯によって流通量が閑散とし、スプレッドが拡大すると双方のポジションにスプレッドの拡大による含み損が生じます。ギリギリの証拠金維持率で両建てをしていた場合、スプレッドの拡大でロスカットになってしまう危険性もありますので、十分な資金があるか確認してから行うよう注意しておきましょう。

マイナススワップで資金を削られる

ポジションを保有しているとロールオーバーのタイミングでスワップポイントが付与されます。同じ通貨の買いと売りのスワップポイント値は、通常マイナス側のスワップポイントの方が大きくなっています。両建てをした場合双方のスワップポイントが付与されますが、その合計が差し引きマイナスになってしまうと支払いが生じ、徐々に資金が減っていく可能性があります。

もし両建てをするのならば短期的または一時的にだけ行い、両建てとなっている時間を極力短くする必要があります。基本的には両建ては経済合理性を欠く取引であることを覚えておきましょう。
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