CFD取引を行い得られた利益は「雑所得」に分類され給与などとは別で計算され「申告分離課税」の対象として所得税と住民税がかかります。得られた利益をきちんと申告し納税をしなければ脱税とみなされ通常よりも多くの税金を収めることになりかねません。まずはCFDの税金について詳しくみていきましょう。
給料や報酬などにかかる所得税は所得額に応じて税率が変動して適用される超過累進課税制度が採用されています。税率の変動額は5~45%の間で設定されており、所得が多ければ多いほど税率が上がっていきます。
一方でCFDで得た利益は給料などとは別に計算される「申告分離課税」が適用されており、利益額にかかわらず「所得税15%・復興特別所得税0.315%」が一律で課税されます。
申告分離課税とは他の所得とは分離させて税額を計算し確定申告によって納税する方式のことで、給料などと「合算せずに単独で税金を計算」するためCFDの利益があることによって給与から引かれる所得税額が変動することはありません。
住民税は地方税の一種で各自治体がサービスを提供するための資金の一部として徴収されます。給与所得者の場合は給料から所得税と合わせて差し引かれており、自営業者などは確定申告後に各地方自治体から送付される住民税納付書に沿って納めます。
住民税の税率は通常「市区町村民税」が6%、「道府県民税・都民税」が4%の計10%が所得額に応じて課税されますが、CFDで得た利益は申告分離課税の対象なので、所得額に応じてではなく一律5%の課税となります。
所得税と合計して20.315%がCFDの利益に対する税金ですが、課税対象額は利益を出すために使用した経費を引いた所得額に対してですので、利益全額に税金がかかるわけではないことを覚えておきましょう。
CFDで利益がでた場合は確定申告をする必要があります。ただし必ず行わなければいけないわけではなく、得た利益額に応じて必要な場合と不要な場合、損失が出ても行った方がいい場合があります。詳しくみていきましょう。
CFDで確定申告が必要なケースは大きく分けて3つ。ご自身がどこに該当するのか確認していきましょう。
利益額に関わらず確定申告が必要なケースは以下の通りです。
・給与所得が年間2000万円を超えている
・公的年金収入が年間400万円を超えている
・給与を2か所以上から受け取っている(合算申告者は含まず)
・会社で年末調整を受けない
・個人事業主(フリーランス含む)
・ふるさと納税・医療費控除・繰越控除を利用する
・1年目の住宅ローン控除を利用する
上記のケースの共通点はご自身で確定申告を行わなければ行けない方が該当し、毎年行う確定申告にCFDの利益分も併せて申告する必要があります。
会社員の方でも会社で年末調整を受けない方や、2ヶ所以上でアルバイトをしている方で年末調整の合算申告をしていない方は20万円以下の利益特例が適用されず、確定申告が必要なことに注意しましょう。
CFDの利益が年間20万円を越えた場合だけ確定申告が必要なケースは以下の通りです。
・給与所得が年間2000万円以下
・公的年金収入が年間400万円以下の年金受給者(私的年金は含まず)
ここには多くの方が該当すると思いますのでご自身の年間利益額を把握しておくようにしましょう。
また最近流行りのふるさと納税のワンストップ制度を利用している場合はCFDの利益が20万円を超えると申告手続きが少し複雑になります。
利益額が20万円を超える見込みがある場合は、確定申告不要のワンストップ制度を利用せずにご自身で確定申告を行うように申込時に申告しておきましょう。
最後にCFDの利益額が48万円を超えた場合のみ確定申告が必要なケースは以下の通りです。
・専業主婦
・学生
・無職の方
・FX専業トレーダーでFX以外の収入がない
主婦や学生の方でアルバイト収入がある場合でも、アルバイトの年間収入が130万円以下であればCFDでの年間利益が48万円を超えなければ確定申告が不要となります。
CFDの利益が出た場合は利益額に応じて確定申告をしなければいけませんが、年間収支が損失で終わった場合は確定申告をしなくても構いません。しかし損失だからこそ確定申告をすることで翌年以降に得られるメリットもあります。
資料や計算書の作成など面倒臭いことが多い確定申告ですが、少しでも有利に利益を得るためにも税金の制度をうまく利用してするのもひとつの方法です。
損益通算とはCFDで出してしまった損失分を他の利益と相殺できる制度です。相殺できる利益には制限があり「先物取引に係る雑所得」に分類される金融商品の利益とのみ行えます。他の取引なども行っており利益がでている場合は課税対象額を減らすこともできますので是非活用しましょう。
先物取引に係る雑所得に分類されるのは「先物・オプション取引」や「FX取引」などで、これ以外の不動産所得や株式投資の利益など「先物取引に係る雑所得」に分類されない金融商品とは損益通算できません。
損失の繰越控除とはCFDで被った損失を翌年以降3年間繰越して次年度以降の利益と相殺できる制度です。損益通算ができる利益がない場合でも確定申告を行い繰越控除をしておけば、翌年以降の利益に対する課税対象額を減らすことができます。
例えば前年度の損失が50万円あり確定申告で損失の繰越控除をしていれば、本年度の利益が80万円だった場合でも前年度の損失分を通算し課税対象額を30万円にすることができます。しかし前年度に損失だからと確定申告をせずに損失の繰越控除をしていなければ80万円の利益に対して20.315%の税金が課税されます。
CFDの課税額は20%超と大きなウエイトを占めますので、年間収支が損失で終わったとしても確定申告はしておいた方がいいでしょう。
CFD取引を行い利益を得るために使用したものは経費として認められます。CFDで経費として認められる可能性があるものは以下の通りです。
・通信費 / CFD取引をするために使用したインターネット通信料など
・手数料 / CFD取引時に発生する取引手数料や、証拠金入金時にかかる振込手数料など
・新聞図書費 / CFDに関する知識や情報を仕入れるために購入した新聞や書籍など
・セミナー受講費 / CFDに関するセミナーやコンサルティングの受講費用
・交通費 / セミナーやコンサルティングを受けるためにかかった交通費
・消耗品費 / CFD取引をするために使用した筆記用具やプリンターのインク代など
・家賃 / 自宅をCFD取引をするために使用している場合、専有面積により按分
・光熱費 / 自宅でCFD取引をするために使用している電気代などを按分
ただし個人利用と併用しているものなどはCFD取引で使用した量や割合の証明が必要なものが多いので、稼働日数やどれくらいの割合で使用しているのかなどが明確に分かる資料や明細を用意しておくといいでしょう。
CFD取引では利益がでても損失で終わっても基本的に確定申告をしておくことをお勧めします。これからCFDの利益を増やしていきご自身の所得を大きくしていくことを前提とされていると思いますので、今後のことも含めて確定申告に慣れておくことが必要です。
会社員の方は会社が年末調整を行うため確定申告になじみがありません。CFDの年間利益が20万円を超えているにもかかわらず「忘れていた」という方が毎年いらっしゃいます。また「越えていないと思っていた」という方も一定数いらっしゃいますが、税金は1円でも超えていれば「申告の義務」が発生します。余計な追徴課税を取られないためにも、年間の取引が終わったタイミングで証券会社の取引履歴でご自身の年間収支を必ず確認しておきましょう。
また経費に関しても確定申告をしなければ認められませんので申告をせずに「経費を引いたら20万円に達していない」ということはありませんので注意してください。
CFD取引は不動産所得や配当所得、譲渡所得など「先物取引に係る雑所得」に分類されない金融商品とは損益通算ができません。また同じように見える海外FX会社を利用した取引や仮想通貨の取引も損益通算できない他、アフィリエイト収入なども損益通算できませんので注意しておきましょう。
損失の繰越控除は翌年以降にCFD取引で生じた損失を3年間繰り越すことができるありがたい制度ですが、申請した翌年以降は取引の有無にかかわらず必ず確定申告をする必要があります。翌年に取引がなかったからと確定申告を行わなかった場合、その時点で繰越控除の権利が消失し翌年以降の利益と相殺することはできません。
繰越控除の申告をした場合は取引の有無にかかわらず3年間は必ず確定申告をして損失の繰越控除を行わなければいけません。