株価指数は対象となる株式市場全体の値動きを表したもので、選定基準により選ばれた複数の銘柄を計算して総合的に数値化し視覚的にわかりやすくしたものです。その中でも米国株価指数は世界経済の中心であるアメリカ株式市場の値動きを知るために重要な指標となり、世界の景気の行く末を知るために多くの投資家が注目する指数です。
日頃ニュースなどでよく耳にする名称もありますので覚えておきましょう。
米国株価指数には代表的な指数が3つあります。
● NYダウ
● S&P500
● NASDAQ100
各指数を形成する構成銘柄数や計算式には違いがあり、それぞれが特徴を持っています。
まずは簡単にその違いを確認してみましょう。
出所:FOREX.com/Wall Street/日足//9月30日取得
NYダウはダウ・ジョーンズ工業株価平均を略したものです。ニューヨーク証券取引所やナスダックに上場しているアメリカを代表する企業30銘柄で構成されており、自動車や航空会社など歴史の長い企業が多く選出されています。ダウ平均株価と呼ばれることもあります。
FOREX.comのCFDチャートでは「Wall Street CFD」と表示されます。
出所:FOREX.com/US SP 500/日足//9月30日取得
S&P500はスタンダード&プアーズ社(Standard and Poors)が算出している株価指数です。ニューヨーク証券取引所など米国3大証券取引所に上場している銘柄の中から時価総額の大きい米国企業500銘柄を選出しているため、アメリカ全体を写す鏡として米国経済だけでなく世界経済の指標として注目されています。
FOREX.comのCFDチャートでは「US SP 500 CFD」と表示されます。
出所:FOREX.com/US Tech 100/日足//9月30日取得
NASDAQ100は新興企業(ベンチャー企業)を中心としたNASDAQ株式市場に上場する銘柄から時価総額の大きい企業上位100社が選出され、他の2つの指数と違い米国企業以外も選ばれるのが特徴です。IT企業が多くを占める一方、金融業の銘柄を除外して選出しています。
FOREX.comのCFDチャートでは「US Tech 100 CFD」と表示されます。
1896年5月26日から算出が始まったNYダウは最も歴史の古い株価指数です。アメリカを代表する銘柄30社で構成されますが、株式指数の50%を上位10社で占めているため上位銘柄の影響を受けやすい指数とも言えます。
NYダウの構成銘柄の内、ウェイトの高い上位5銘柄は次の通りです。
1. ユナイテッド・ヘルス
2. マイクロソフト
3. ユナイテッド・デポ
4. ゴールドマン・サックス・グループ
5. マクドナルド
※2023年8月25日のBloombergを参照し作成(参照元➝INDU Members – NYダウ 工業株30種 – Bloomberg Markets)
NYダウの特徴として、指数の算出に構成される全銘柄の平均株価を採用しているため構成銘柄の値動きに影響を受けやすいことが挙げられます。構成銘柄数が少ないため大きく上昇した銘柄が複数あると平均値も必然的に上がりますしその逆もあることに注意をしましょう。構成銘柄には歴史の古いアメリカを象徴するような企業が名を連ねる一方、輸送業や公共事業が選定されないことも特徴です。
NYダウ指数の算出方法は以下の通りです。
構成銘柄の株価合計額 ÷ 構成銘柄数 ÷ 除数※
※除数とは銘柄入れ替えや株式分割、新株発行などがあった際に指数の連続性を保つために修正を行う値です。
NYダウはアメリカの経済金融情報誌「ウォールストリートジャーナル」を発行するダウジョーンズ社が選定を行っており、選定基準は以下のようなものがあります。
● ニューヨーク証券取引所、またはNASDAQ株式市場に上場していること
● 米国で設立され米国内に本社がある企業であること
● 売上高の大半を米国内で生み出す企業であること
● 成長性や知名度が高い企業であること
● 輸送事業、公共事業でないこと
構成される30銘柄は委員会により不定期に入れ替えが行われており、最新の米国株式市場の流れを把握する指数として活用されます。
1957年3月4日より算出が始まったS&P500は、米国の主要業種の主要企業をカバーすることを目的とした、米国株式全体と米国全体の景気を把握するための指標となる指数です。ほぼすべての業種を網羅するため世界経済の指針としても注目され様々なETFの参照元にもなっています。
S&P500の構成銘柄の内、時価総額の高い上位5銘柄は次の通りです。
1. アップル
2. マイクロソフト
3. アマゾン・ドットコム
4. エヌビディア・コーポレーション
5. アルファベット
※2023年7月31日時点のS&PGlobalを参照し作成(参照元➝S&P 500 | S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス (spglobal.com))
S&P500の構成銘柄による米国株式市場に対しての時価総額比率は全体の約80%を占めており、米国市場そのものを反映している指数と言えます。またNYダウが株価の平均を算出しているのに対しS&P500は時価総額加重平均型により指数を算出していることも挙げられます。時価総額加重平均型とは基準点と比較して時価総額がどのように増減しているのかを確認する指数で、過去と比較しやすく一目でわかることが特徴です。
他にもS&P500には厳しい採用条件が設けられ、さらに年4回の銘柄入れ替えが検討されています。つまり米国を代表する500社に選ばれるにはそれなりの条件が揃っていなければならず、それを継続的に維持しなければいけないのです。
ただし時価総額が大きい企業の動きに影響を受けやすいことも覚えておきましょう。
S&P500指数の算出方法は以下の通りです。
構成銘柄の時価総額合計 ÷ 基準点の時価総額合計 ÷ 除数※
※除数とは銘柄入れ替えや株式分割、新株発行などがあった際に指数の連続性を保つために修正を行う値です。
S&P500はスタンダード&プアーズ社が選定を行っており時価総額で選定を行うので、NYダウよりも明確でわかりやすい基準となっています。
● 米国企業であること
● 時価総額が145億ドル以上の企業であること
● 直近の四半期連続で黒字を継続している企業であること
● 株式に流動性があり浮動株が50%以上であること
● 上場から12か月以上経過している企業であること
世界一厳しい米国の上場条件を満たしている企業の中で、さらに上記条件をクリアした優良企業上位500社が組み込まれていることになります。
NASDAQの正式名称は「National Association of Securities Deals Automated Quotations」で全米証券協会の電子取引を意味しています。そのNASDAQ市場に上場している3000社以上の中から時価総額上位100社で構成されているのがNASDAQ100指数です。
NASDAQの算出開始日は1971年からですが、NASDAQ100は1985年2月1日から算出が始まっています。新興企業が多くITやハイテク事業関連が中心となっているため近年のパフォーマンスでは他の2つの指数を上回ることもあります。
NASDAQ100の構成銘柄の内、時価総額の高い上位5銘柄は次の通りです。
1. アップル
2. マイクロソフト
3. アマゾン・ドットコム
4. エヌビディア・コーポレーション
5. メタ・プラットフォームズ
※2023年8月25日時点のスリックチャートを参照し作成(参照元➝ナスダック100社(重量比) (slickcharts.com))
NASDAQに上場する企業の内、NASDAQ100に採用されている銘柄だけで市場全体の70%の時価総額を占めます。また上場する企業の50%以上がテクノロジーセクターに分類され近年の大きな伸びの要因ともなっており、米国以外の企業も採用されることから米国の景気動向だけでなく世界の景気動向を知る指数として大きな注目を集めています。
NASDAQ100指数の算出はS&P500と同じく時価総額加重平均型により行われます。構成銘柄の入れ替えは毎年12月に行われますが、前年に時価総額100位以内であれば125位までなら残留させたり、積極的な投資を行ったことによる一時的な赤字でも採用するなどほかの2つには見られない選定基準も特徴です。
NASDAQ100指数の算出方法は以下の通りです。
構成銘柄の時価総額合計 ÷ 基準点の時価総額合計 ÷ 除数※
※除数とは銘柄入れ替えや株式分割、新株発行などがあった際に指数の連続性を保つために修正を行う値です。
NASDAQ市場に上場している銘柄から選定されるNASDAQ100は条件が厳しくなく、新興企業にありがちな積極投資による赤字となっていても選出されることもあります。
● NASDAQ上場企業の中で時価総額が125位以内であること(前年100位以内)
● 1日当たりの出来高が平均して20万株以上あること
● 上場して2年が経過している企業であること
● 金融会社ではないこと
● 米国企業以外でも対象となる
時価総額で選定するため時価総額の大きい特定銘柄の影響を受けづらいように、定期的に構成銘柄の比率を調整するなどの対策を行っています。
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