日本の株式市場全体の動向を大まかに確認できるのが日本株価指数です。選定された銘柄の株価平均や時価総額などを計算することで、株式市場全体が上がり調子なのか下がり調子なのかを視覚的に知ることができる目安として活用します。
個別銘柄を取引する際にも市場全体の動向を把握する必要があり、インデックス投資家だけでなくすべての株式投資家が確認する重要な指標です。
経済ニュースでドル円のレートと合わせて発表される重要な2つの指数について覚えていきます。
日本の株価指数はいくつもありますが、まずは基本の2つの指数の違いについて触れていきます。
出所:FOREX.com/Japan 225/日足//9月30日取得
株取引を行わない方でも言葉だけは聞いたことがあるであろう、日本を代表する株価指数です。東京取引証券所プライム市場に上場する約2000社の中から売買の活発さや安定度合いなど市場での流動性が高い225銘柄によって構成されています。名前の通り株価の平均値を表しています。誰もが知る企業が名を連ね、株式銘柄の日本代表225社と言い換えてもいいでしょう。
FOREX.comのCFDチャートでは「Japan 225 CFD」と表示されます。
出所:Trading view/TOPIX/日足/8月29日取得
TOPIXは「Tokyo Stock Price Index」の頭文字を取ったもので、東京証券取引所プライム市場に上場する全銘柄を対象とした指数です。日経225との違いは対象が上場している全銘柄であることや、指数の計算が株価ではなく時価総額で行われることなどです。日本の経済全体を把握する指標として投資判断のベンチマークとして使われます。
FOREX.comでのCFD取扱はありません。
東京証券取引所はこれまであった「東証1部、東証2部、マザーズ、JASDAQ(スタンダード、グロース)の4市場を再編し、2022年4月より「プライム市場、スタンダード市場、グロース市場」の3区分としました。各市場への上場基準が厳しくなりコンセプトがより明確になったため、上場の際に得られる信用度がさらに増したとも言えます。特に旧東証1部に相当するプライム市場への上場は企業の社会的信用度に大きな向上が期待できます。
日経平均株価はプライム市場に上場する企業の中から225銘柄を選定し算出している株価指数で1950年9月7日から始まっています。算出開始から70年以上経ち、戦後日本経済の軌跡そのものとも言えます。日本を代表する上位企業が採用されていることから株価の高い銘柄が激しく変動すると日経平均も大きく変動する特徴があります。
日経225の構成銘柄の内、ウェイトの高い上位5銘柄は次の通りです。
1. ファーストリテイリング
2. 東京エレクトロン
3. ソフトバンクグループ
4. アドバンテスト
5. ダイキン工業
※2023年7月31日時点の月次ファクトシートを参照し作成(参照元➝FactSheet – 日経平均株価 (nikkei.co.jp))
日経225に採用されている企業の中には、海外で製品を販売する輸出企業が多く含まれているため円高円安の影響が大きく関係します。円安になると輸出する商品の価格が現地で下がりよく売れるようになり企業の株価も上昇し日経平均株価もつられて上昇します。
一方で日本全体の景気がよく、ほとんどの企業の株価が上昇していても円高により輸出を行う大企業の株価が下落していると日経平均株価は下がってしまうという現象も起こります。これは「値がさ株」と呼ばれる株価の高い銘柄のことで、株価が高い分平均を求める中でのウェイトが大きく平均株価に影響を与えてしまうこともあります。
日経225に採用されている計算式は株価平均型で、その算出方法は以下の通りです。
①各構成銘柄の株価 × 株価換算係数※ = 採用株価
②構成銘柄の採用株価合計額 ÷ 構成銘柄数※
※換算係数とは株価水準の高低による影響をなくすため各採用銘柄の株価に乗ずる数のこと。
※構成銘柄数は公式では除数と表記されます。
日経225の採用銘柄はプライム市場に上場している企業の中から日本経済新聞社が選定を行っており、選定基準は以下のようなものがあります。
● プライム市場に上場している企業であること
● 過去5年間の売買代金による市場流動性が高い企業であること
● 技術、金融、消費、素材、資本財・その他、運輸・公共 の6つのセクターからバランスよく選定する
● 日本国内の企業であること
などの基準により学識経験者や専門家の意見を取り入れた上で決定し、構成銘柄の見直しは毎年4月と10月の第1営業日に行われます。
TOPIXは東京証券取引所プライム市場に上場する約1800銘柄に加えて、市場再編前にTOPIXに使用されていた銘柄を足した約2100銘柄で構成されています。1968年1月4日の時価総額を100として1969年7月1日より算出を開始。その後の時価総額を指数化して比較します。流動性の高い企業だけではなく上場企業全体で計算をするため日経225よりも株式市場の動向を把握しやすいことが特徴です。
TOPIXを構成する銘柄の内、時価総額の高い上位5銘柄は次の通りです。
1. トヨタ
2. ソニーグループ
3. NTT
4. キーエンス
5. 三菱UFJ
※2023年8月28日時点の日本経済新聞を参考に作成(参照元➝日本株 日本企業時価総額上位ランキング – 日本経済新聞 (nikkei.com))
TOPIXの計算には「浮動株時価総額加重型」が採用されています。浮動株というのは実際に株式市場で売買される可能性が高い株式のことで、大株主などが保有する流通の可能性が低い株式を除いて計算されます。これにより採用されている構成銘柄の流動性に応じて構成割合が決定され、市場全体の値動きをより具体的に表すことができています。
また時価総額により計算されるため時価総額の大きい企業に影響を受けやすい特徴がありますが、ひとつの企業に左右され過ぎないため個別銘柄の構成割合の上限は10%までと定められています。
TOPIXの計算式は以下の通りです。
算出日の指数用時価総額 ÷ 基準日の時価総額 × 100
※指数用時価総額とは実際に売買される可能性が高い浮動株数に基づいた時価総額を指します。
TOPIXの選定基準は今後対象銘柄の見直しが行われる予定で段階的に対象銘柄を減らしていく予定ですが、現段階では次のようになっています。
● プライム市場上場企業全銘柄
● 旧東証1部上場企業
今後は以下のように段階的に見直しを行っていく予定です。
● 流通株式(浮動株)の時価総額が100億円以上
● 年間売買代金回転率※が0.2回転以上
※一定期間の売買代金を同期間の時価総額で割って算出した市場の活況度合いを表す指標のこと。
上記2点を2023年10月の最終判定時までにクリアできなかった銘柄は2025年1月末をもってTOPIXから除外されることになります。この変更により過去東証1部に上場していればTOPIXに組み入れられていたものが、プライム市場に上場していてもTOPIXから除外されるということも起こります。流動性のない個別銘柄を除外することで、まさに市場区分と株価指数を分離する新陳代謝を起こしている最中ということです。