米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げシナリオは2024年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で修正された。金融引き締め局面は続くものの、米経済のソフトランディングが確認され、株式市場にとってはゴルディロックスの状況となり、引き続きブル(強気)相場が継続するだろう。人口知能(AI)ブームを主軸とした株式投資熱は冷めやんでいない。2025年も軸となるプレーヤーは変わるもののAI投資ブームは今後も続くとみられる。
トランプ大統領の選挙公約がいかに実現されていくのかによって相場の上昇ペースは変わってくるだろう。減税が早期に実現するようであれば、財政悪化により米国債金利の上昇が予想される(株式にとってはネガティブ)。
FRBの利下げは緩やかなものと予想されることから、長期金利の動きを見ながら、政策金利を動かさず口先コメントで金利上昇を抑えることになるのではないか。これまではイエレン財務長官の意向もある程度、金融政策に影響を与えていたと考えており、ベッセント次期財務長官がどのような舵を取るのかは、市場にとっても大きな関心ごとである。ベッセント氏は「米国が世界をリードする経済大国、イノベーションと起業家精神の中心であり、投資の目的地としての地位を強化しながら、常に、そして疑う余地なく、ドルを世界の準備通貨として維持するという、新たな黄金時代の到来を支援する」と述べている。政策上の優先事項について、減税措置の恒久化、チップ、社会保障給付金、時間外手当に対する課税の撤廃など、トランプ氏の減税公約の実現を挙げているほか、新たな関税政策の導入と歳出削減にも重点的に取り組むとしている。
FOREX.comではUS SP 500・US Tech 100を含む主要株価指数をCFDやノックアウトオプションで投資いただけます。
トランプ大統領は米株式市場の動向を気にかけており、様々な景気刺激策を打ち出してくるとみられる。しかし、追加の景気刺激策には、追加の国債発行なども考えられることから、長期金利の動向には注意が必要である。また、トランプ氏の政策では、既存の医療政策やエネルギー政策が大きく転換し、セクター間では優劣が出てくることが予想される。エネルギーセクターや金融セクターは規制緩和で好感されるだろう。世界的な旅行ブームが続くと予想され、観光関連セクターも好感されよう。エネルギー価格の低下はエアラインには好環境となる。
AI投資は今後も大きなテーマであり、テック100(ナスダック100)は引き続き投資家の人気を集めると予想される。しかし、巨大なサーバーリソースを保有する企業であるハイパースケーラーでのクラウド契約の伸び率が低下してくれば、調整局面が来ると予想される。また、エヌビディアのブラックウェル・シリーズス(次世代AIチップ)の納入がひと段落すると予想され、夏場以降は、行き過ぎた相場の期待は調整される可能性がある。汎用版のAIチップ(ハイパースケーラーの自社設計チップ)を製造するブロードコムやマーベル・テクノロジーに取って代わって、エヌビディアの1社独占となり、注目を浴びるだろう。AIデータセンターへの投資は続いており、データセンター建設関連銘柄は好業績が予想される。AI投資は、これまでのインフラ整備から実務上での利用の仕方に課題が移り、有効なAI利用を手助けするソフトウェア企業は激しい競争となるであろうが、そうした群雄割拠のなかから、次世代のスーパースター銘柄が生まれようとしている。AIソフト企業は2025年の最も注目すべき銘柄である。
また、宇宙関連や新エネルギー(原子力関連)も引き続き市場をけん引すると予想される。情報テクノロジーは2025年に20.6%の成長が見込まれ、2024年の19.6%をわずかに上回る。年末に向けて、ジェネレーティブ(生成系)AIのテーマは2025年に頭打ちとなり、テクノロジーの収益は2026年に17%とより緩やかな成長率になると予想される。ヘルスケアセクターも20.3%の成長が見込まれており、2024年の4.9%の成長から急回復するが、2026年には成長率が10%に落ち込むと予想されている。
2025年には循環セクターで大きな回復が見込まれ、2024年のマイナス成長から一転して、インダストリアル(工業製品・資本財)、マテリアル(素材)、エネルギーのすべてで堅調なプラス成長が予想されている。インダストリアルは17%の成長が見込まれている。したがって、ウォール街のアナリストは2025年の経済成長が加速すると予想している。
しかし早期に輸入関税が打ち出されることになれば、米国株式市場はインフレを懸念して調整局面が訪れる可能性がある。輸入インフレは、FRBの金融政策に大きな影響を及ぼすと予想され、利下げのペースは緩やかなものとなるだろう。一方、株価を上げたいトランプ政権は、FRBに利下げを迫ることになろう。
S&P500のバリュエーションは、2024年の収益予想に基づく株価収益率(PER)が25倍、2025年の収益予想に基づく予想PERが22.3倍で取引されている。 長期平均のPERは16倍程度であるため、S&P500は35%程度割高であり、バブル的な水準で取引されている可能性がある。テクノロジーセクターは最も過大評価されており、株価収益率は35倍である。次いで、一般消費財セクターが33倍となっている。 エネルギーセクターを除くすべてのセクターで、株価収益率が16倍を超えている。 したがって、従来の基準では、市場全体が非常に割高である。
S&P 500は、情報技術がインデックスのほぼ34%を占めており、テクノロジー関連の比重が高い消費循環(一般消費財)セクターを加えると、その割合は45%を超える。さらに、時価総額が大きい上位3銘柄がインデックスの20%を占めている。アップル(AAPL)、エヌビディア(NVDA)、マイクロソフト(MSFT)である。したがって、S&P500、テック100全体のパフォーマンスは、これら3銘柄に大きく影響されることになる。
当サイトの経済指標カレンダーからは、毎週相場展開に影響のあるイベント内容をピックアップし解説中!
出所:FRB St.Louis FREDデータより
イールドカーブがちょうど逆転から脱しつつあり、通常、これは景気後退に先行する。景気後退は、トランプ大統領の移民政策(大量の国外追放)と政府効率化省(DOGE)の緊縮財政によって引き起こされる可能性が高い。さらに、追加関税の可能性を考慮すると、インフレも上昇する可能性がある。本質的には、これは1970年代と同様のスタグフレーション環境である。トランプ氏の経済政策次第では、年央以降大きな調整局面も想定される。
米国内の要因ではないが、日本銀行の利上げは、世界の流動性供給において大きな影響を与える可能性(広義の円キャリートレードの巻き戻し)があり、FRBだけでなく日銀の金融政策には注目する必要がある。
合わせて読みたいトピック
→→→日経平均株価指数予想と今後の見通しはこちら→→→
→→→世界為替(ドル/円、ユーロ/ドル)見通しと予想はこちら→→→
テック100を中心に、テクノロジー優良銘柄は引き続き市場のけん引役となるだろう。トランプ政権の政策如何では大きな経済ショックを引き起こす可能性も考慮したい。テック100(ナスダック100)を主戦場として、トレーディングするうえでの好環境は続く。しかし、米国株は買われ過ぎていると考えている投資家も多く、調整が始まれば大きな流れとなる可能性もある。2025年は、カバードコール戦略を検討したい。相場の転換時には、ノックアウトオプションは、相場の転換時に有効な投資戦略となるだろう。
出所:US SP 500、stonextrading
出所:US Tech100、stonextrading
アメリカ株価指数を含むCFDポジション比率はリアルタイムで当サイトよりご確認いただけます。常時ポジションの分布状況をチェックしながら、相場状況の把握にお役立てください。
S&P500の目標株価 |
年末:7,000~7,500 |
リスクシナリオ:4,100(SP500のPER:18倍)までの急落も想定したい |
テック100(ナスダック100)の目標株価 |
年末:26,000~27,500 |
リスクシナリオ:14,500(2020年からの上昇相場の1/2戻し:14,400)までの急落も想定したい |
※当記事は、特定銘柄の見通しを紹介しているものであり、取引の推奨をしているものではありません。
FOREX.comではUS SP 500・US Tech 100を含む主要株価指数をCFDやノックアウトオプションで投資いただけます。
前の記事:
次の記事:
これが最後の文章です